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アジアインフラ大競争
http://www.asyura2.com/15/kokusai11/msg/356.html
投稿者 あっしら 日時 2015 年 8 月 31 日 01:17:53: Mo7ApAlflbQ6s
 

アジアインフラ大競争

(上)解き放て潜在成長力 「8兆ドル需要」課題は質

 インド洋に臨むスリランカ南西部の町ゴール。17世紀のオランダ統治時代に建設され、世界遺産にも登録された城塞都市が今、時ならぬ活況に沸く。高級百貨店が進出し、英大手銀行のHSBCが支店を設けた。

 寂れた港町を変えたのは4年前に開通した同国初の高速道路だ。100キロメートル離れた最大都市コロンボからの道のりが4時間から1時間へ縮まり、観光客が訪れるようになった。ゴールをけん引役に、昨年同国を訪れた外国人観光客は150万人と4年間で8割増加。味をしめた政府は中部の仏教遺跡群につなぐ高速道路の計画を進める。

 減速するアジア景気だが、世界経済の「成長エンジン」の地位は揺るがない。持続的成長に不可欠なのが交通や電力などの社会インフラの整備。経済発展の土台づくりはそれ自体が巨大なビジネスチャンスともなる。


「カネはあるが」

 日米が最大出資者のアジア開発銀行(ADB)は2010〜20年のアジアのインフラ需要が8兆ドル(約1千兆円)と試算する。ところが「世界の開発銀行はその5%も手当てできない」(インドゥ・ブーシャン戦略・政策局長)。中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)が設立前から脚光を浴びるのは、資金不足を埋める存在と期待されるからだ。

 ビジネスの最前線で見える情景はやや異なる。

 4月上旬、東南アジアのインフラ整備をテーマに金融関係者がシンガポールに集まった。参加者から上がったのは「カネはある。足りないのは投融資できる案件の方だ」という声だった。

 日米欧などの年金基金残高は36兆ドルを超す。世界の金融緩和を背景に少しでも有利な投資先を探すが、アジアのインフラにはうまく流れ込まない。国際協力銀行(JBIC)の町田史隆シンガポール首席駐在員は「新興国の政府が現場の実態を把握しておらず、受け入れ体制も欠くからだ」と指摘する。

 マレーシア北部のペナン州。ペナン島とマレー半島部を隔てる海峡に、全長24キロと東南アジアで最も長い橋がかかる。片側2車線だが、行き交う車の姿はほとんどない。


不便すぎる大橋

 橋の名前は「第2ペナン大橋」。10キロほど北に1985年に完成した「第1大橋」の渋滞緩和を狙い、昨年3月に開通した。中央政府が主導して45億リンギ(約1320億円)を投じたが、通行量は目標の1割強にとどまる。橋の入り口が中心部から遠いためで、地元の運輸業者は「不便すぎて使えない」とこぼす。

 6月、タイのバンコクは未明の大雨で多くの店舗や住宅が浸水し、通勤の足が止まって企業活動が一時マヒした。1千万人都市に見合わない貧弱な排水能力のせいだ。

 11年の大洪水を教訓に、当時のインラック政権は大規模な治水事業を約束した。ダムや放水路の建設に3500億バーツ(約1兆2千億円)の予算を確保し、入札で発注先も決めた。ところが汚職の疑いが浮上し、計画は凍結されたままだ。

 アジアのインフラ不足は古くて新しい課題だ。波及効果が大きく、透明性の高い事業計画で、選球眼の厳しいリスクマネーをいかに呼び込むか。世界人口の6割、44億人の潜在成長力を解き放つには、インフラの「量」だけでなく「質」への視点が欠かせない。

[日経新聞8月24日朝刊P.1]
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(中)「一帯一路」狙う中国 国をまたぐ開発バブル

 万年雪を頂く天山山脈が間近にそびえる。中国の西端、カザフスタン国境の新疆ウイグル自治区ホルゴス市。「世界有数の商業地区になる。買い時だよ」。不動産会社社長が高層マンションの購入を熱心に勧めてきた。

 商業施設や五つ星ホテル、国際会議場……。東京ドーム400個分の広さを誇るカザフとの「共同開発特区」は、中国側だけで200億元(約3850億円)を投じる。

 3年前は砂と岩だけだった辺境の地は、山を切り開いた高速道路と鉄道の建設を合図に、開発の大波が押し寄せた。「年内にカザフ側の開発も始まる。道がつながれば必ずにぎわう」。閑古鳥が鳴く免税百貨店に出店した電器店店主は強気だ。

 自国から中央アジア、中東、欧州を陸路と海路でつなぐ「一帯一路(新シルクロード構想)」を掲げた中国。アジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設と併せ、ヒト・モノ・カネの三位一体でアジアのインフラ整備に手を貸し、周辺の開発まで主導しようと狙う。


地元は潤うが…

 先行する一帯一路の国内部分はすでに多くの大規模事業が進行し、地元経済を潤している。が、各地を歩けば、国家戦略に名を借りた過剰開発の実態が浮かび上がる。

 「一帯一路の建設へ団結しよう」。中部の陝西省西安市の街中には勇ましい標語があふれる。ここでも道路と鉄道に沿い、巨大工業団地やマンション群が建設される。威容が際立つ韓国サムスン電子の半導体工場には70億ドル(約8500億円)が投じられる。

 「昔は畑しかなかった。習近平(国家主席)のおかげさ」。タクシー運転手の鄭藍藍さん(43)は喜ぶが中国経済は減速が鮮明。「こんなに工場を建てて大丈夫か」。現地進出した欧州機械大手の幹部は心配顔だ。

 中国政府が自作自演する開発バブルは、国境を越えてまん延し始めた。

 3つの高層ビルの屋上を200メートルの巨大な船型プールでつなぐ。シンガポールの名所「マリーナベイ・サンズ」にそっくりな光景がカンボジアのプノンペンで再現される。リゾートホテルや国際展示場、商業施設を詰め込む開発の背後に中国企業の影がちらつく。

 中国は港湾や橋、最近では国立競技場の建設を支援し、その見返りに巨大複合施設の開発権を得た。建設現場で目立つのはクメール文字ではなく漢字。コンドミニアムの販売価格は1平方メートル当たり1800ドルと、地元の工場労働者の年収より高い。

支援待ちの現実

 「開発が年内に始まる」というホルゴス市の特区のカザフ側に入ると、散乱した古びた資材とパイプが白い砂をかぶっていた。「本気で開発を進める地元企業はいない。中国の支援待ちだ」とカザフ側関係者は言う。

 中国とカザフは今年、総額230億ドルの「インフラ整備協力契約」を結んだ。セメントや鉄鋼、ガラスなど、中国からの過剰生産品目の供給が柱だ。突然の人民元切り下げにも通じる、輸出促進策の顔が見え隠れする。

 天津市や山東省での相次ぐ大規模爆発事故で国民からの不信が強まるなか、中国政府は国威発揚のため一帯一路をむしろ加速する公算が大きい。検問所で会った30歳代のカザフ人貿易商は「中国のカネを利用する。でもバブルは持ち込まれたくない」と流ちょうな中国語でささやいた。

[日経新聞8月26日朝刊P.]
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(下)リスク投資に挑む日本 試される目利き力

 フィリピンの首都マニラ。線路際まで雑草が生い茂ったレールの上を、かつて日本で走っていた中古の電車が満員の乗客を詰め込んで都心へと走り去る。


対中国で危機感

 スペイン統治下で開業したフィリピン国有鉄道は戦後の混乱で整備が遅れ、走行距離はピークの半分以下になった。今は3〜5両編成で1日26便が運行するだけだ。マニラの人口は約1200万人。東京に匹敵する大都市だが、それに見合う社会基盤が整わない。

 経済成長を阻むインフラ不足を解消しようと、アキノ政権は鉄道や高速道路など50事業を立ち上げた。だが着工にこぎ着けたのはわずか数件。採算割れでも政府保証がないといったリスクが高く、資金集めが難航したからだ。

 今夏、そんなフィリピンの窮状に日本が手を差し伸べた。マニラの鉄道事業に1回の政府開発援助(ODA)としては過去最大規模の2400億円の円借款に踏み切る。通常は工事の進み具合を確かめながら複数回に分けて資金を出すが、今回は資金を一括で提供する。

 「(アジアのインフラ整備では)現地政府に必要以上のリスク保証を求めるやり方がまかり通っていた。そうした慣習を変える」。安倍晋三首相は今春のセミナーでこう語り、有言実行とばかりにフィリピンの案件に手を挙げた。

 日本の背を押したのは中国主導で発足するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の登場だ。AIIBは素早い資金提供が売り物。うかうかしていたら、中国の影響力が増すばかりだ。採算性第一だった日本の尻に火がつき、よりリスクを取る方向にかじを切った。


民間資金を呼ぶ

 政府は来年の通常国会に国際協力銀行(JBIC)法の改正案を出す。採算が合う案件にしか資金を出せない制約をやめ、複数案件を合算して黒字ならば個別案件の赤字に目をつぶる。対象が広がるのは確実だ。

 日本が描くのはJBICやアジア開発銀行(ADB)が主導し、潤沢な民間資金を巻き込む姿。膨らむ投融資リスクを官民で分かち合う。だがリスクを避けてきた日本にはAIIBに対抗して素早く案件を組成できる人材が足りない。

 苦い教訓がある。国際協力機構(JICA)は2012年、インフラ整備を手がける民間事業体への直接出資を11年ぶりに再開した。経団連が切望した事業だが、ふたを開けると案件は6月末時点で3件のみ。政府関係者は「JICAにリスク投資に詳しい人材がいなかった」と漏らす。

 枠組みを整えても迅速に組成できないと絵に描いた餅。ADBは米ゴールドマン・サックスの元幹部など経験豊かな人材獲得に注力する。日立製作所の幹部は「スピード感が高まれば(国の支援を)より活用しやすくなる」と期待する。

 「AIIBは民間がどう関与できるか分からない」。JBICの渡辺博史総裁はAIIBの融資基準が不透明ならば民間の参加は難しいとみる。裏を返せば、民間との協調でリスク許容度を高める枠組みの日本に勝機はある。ただリスクを取りながら、不採算案件をどう排除するか。アジアのインフラ競争に向け、迅速な実行と目利きの力の両方が求められる。

 吉田渉、阿部哲也、富山篤、堀田隆文、佐竹実、京塚環、中村亮が担当しました。

[日経新聞8月27日朝刊P.2]

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「民」が主役、「官」は黒子 (アジア・インフラ大競争)[日経新聞]

 「インド国内100カ所に現代型の都市を建設する」「9路線の超高速鉄道を敷設する」「16の新しい港をつくる」「巨大発電所を5つ新設する」――。

 2014年5月に発足したモディ政権が打ち出してきたインフラ整備計画には、華々しい構想がずらりと並ぶ。経済改革を掲げる同政権は、製造業育成策とともにインフラの充実を経済成長の軸に据えた。ところが、その後多くのプロジェクトは動いていない。実行の遅さはインドビジネスの現場で当たり前の光景だが、政府計画の遅れは、さらに深刻だ。


ムンバイ市内の都市型鉄道の建設現場。インドのインフラ整備は計画通りに進まないことが多い

■インド、土地収用法改正のメド立たず

 経済の中心都市ムンバイの郊外で計画する新国際空港の開発。第1期工事だけで総工費は約620億ルピー(約1200億円)に上り、年間1000万人の利用を見込む現地州政府肝煎りの大型事業だ。しかし、新空港の建設は当初計画より5年遅れ、本格的な工事はいまだに始まっていない。

 最大の理由は、土地の確保が進んでいないためだ。インドは土地収用のプロセスに大きな問題がある。地権者や周辺住民が開発計画に反対すれば、デモや訴訟が起きるのは当たり前。法律も住民側に手厚い内容になっているため、訴訟のたびに工事が止まってしまう。

 こうした現状を変えようと、モディ政権は土地収用法の改正を経済改革の目玉に掲げる。開発者側が土地を収用しやすいよう、住民の合意を得るための手続きを簡素にするなどの内容を盛り込んだ。これに対し、野党の国民会議派は「モディ政権はビジネスのことしか考えていない」と強硬に反対し、一斉にネガティブキャンペーンを張った。

 8月13日に閉会した国会で、改革の実現を期待する向きもあった。だが、野党の審議拒否などで国会は空転し、土地収用法の改正案は冬季国会に先送りとなった。

 あるインフラ金融関係者は「土地収用の問題が解決しなければ、いつになってもインフラ整備は計画通りに進まないだろう」とため息をつく。構想ばかりぶち上げても、肝心の鉄道や道路が完成しない。もはや「持病」のようなインフラ整備の遅れを解決する道筋は見えない。


■ADB、専門家の助言で整備後押し

 政府の掛け声倒れで進まないインフラ開発の現実は、アジアの新興国に共通する課題だ。

 アジア随一の経済成長を謳歌するフィリピン。アキノ大統領は官民パートナーシップ(PPP)によるインフラ整備を最重要課題に掲げる。高速道路、鉄道建設など50事業をリストアップしたが、就任から5年がたっても着工にこぎ着けたのは数件にとどまる。

 PPP方式といっても関連法などが整わずノウハウにも欠けるため、リスクの所在が不明確で民間企業が参加に二の足を踏んでしまう。

[東南アジアのインフラ需要と実際の支出額の差は大きい]

数値左から:2010年から20年までのインフラ需要・同期間のインフラ需要の年間GDP比率・1980年から2009年までの累計インフラ支出のGDP比率

ベトナム  1100億ドル 8.1% データなし
フィリピン 1270億ドル 6.1% 2%
タイ     1730億ドル 4.9% 4%
マレーシア 1881億ドル 6.7% 6%
インドネシア 4500億ドル 6.2% 7%
※アジア開発銀行のデータを基に作成

 アキノ政権は14年に国内総生産(GDP)の3%程度だったインフラ関連支出を、16年までに5%に増やす方針を示した。ところが、アジア開発銀行(ADB)によれば、フィリピンのインフラ整備には10〜20年に1270億ドル(約15兆8000億円)が必要だ。

 年間ベースでGDPの6.1%に相当する巨額の投資は政府だけでまかないきれない。民間マネーで不足分を補えれば理想的だが、その取り組み自体がうまくいっていない。

 こんな現状に一石を投じる試みがある。今年からADBが始めた「PPP助言業務」だ。インフラ建設に長く携わった専門家を集め、政府への助言や関連法の整備までを担う。第1弾として5月、フィリピンの国有鉄道整備事業への助言が決まり、民間企業の参加で計画進展の期待が出てきた。ADBはインドでの助言業務も視野に入れる。

 インフラ事業を証券化し、資金を呼び込もうとする取り組みもある。東南アジア諸国連合(ASEAN)と日中韓などによる基金「信用保証・投資ファシリティ(CGIF)」は、アジア域内のインフラ案件を事業主体が証券化することを促す方針だ。

[アジアのインフラ需要の内訳]
電力 4088639
通信 1055657
鉄道、道路、空港など 2466123
水・公衆衛生 381290
(合計) 7991709
※アジア開発銀行調べ。単位は100万ドル、期間は2010〜20年

 先進国並みの格付けを持つCGIFが保証すれば、事業者はインフラ債券を発行しやすくなり、その分を他の事業に回せる。販売先は先進国も含めた機関投資家を想定する。これも民間マネーを域内に行き渡らせる試みだ。

 年7000億ドルを超える域内のインフラ需要を満たすには、公的資金だけは到底足りない。政府の動きの遅さを補い、民間マネーを還流させる取り組みは始まったばかり。今後、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)が誕生すれば、既存の開発銀行との協調融資という新たな選択肢も増える。

 いま、まさに転換期にあるアジアのインフラ開発。経済成長のスピードを考えれば、喫緊の課題だ。持続的な成長につながるのか、経済の伸びに水を差すのか。答えは、そう遠くない将来に明らかになるはずだ。

(ムンバイ=堀田隆文、マニラ=佐竹実)

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO90752410Q5A820C1I00000/

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中国の「一帯一路」、世界に増殖  (アジア・インフラ大競争)[日経新聞]
2015/8/26 2:00

 「一帯一路(新シルクロード構想)はウィンウィンの道であり、各国経済の緊密な結合を促す原動力になる」――。習近平国家主席の大号令のもと、国内外で巨大インフラ整備プロジェクトに乗り出した中国政府と企業。「一帯一路」は、はやくも世界各地で増殖が始まっている。

■海洋進出や海底資源の確保狙う

 世界的なリゾート地として知られる南太平洋の島国フィジー。首都スバの郊外で5月中旬、片側1車線の真新しい道路の建設が進んでいた。中国の援助を受け、2011年6月から建設が始まった全長19キロの「セリア・ロード」だ。

 工事現場ではフィジー人のほか、多くの東洋系の労働者が汗を流す。現場監督より上の役職はほとんどが中国人だ。道路脇には中国人作業員向けの簡易宿泊所が立ち、中国人の料理人が油をふんだんに使った中華料理に腕を振るっていた。

 島の東端にあるスバと西側の地域を結ぶ幹線道路沿い。中国の援助で建てられた病院や、中国企業による建設計画を示す看板が数多く並ぶ。現在は空き地が広がる道路脇に産業団地をつくり、企業を誘致する計画のようだ。「農地を買いたい」「リゾート開発の用地を探してほしい」。スバで観光業を営むサミー・アリさんの携帯電話には、中国本土からこうした依頼が毎日のように寄せられるという。

 フィジーは南太平洋の島々をつなぐ船舶や航空の要衝で、地域の大国だ。現首相のバイニマラマ氏による軍事クーデターを機に、06年から14年9月まで軍事政権が続き、欧米との関係が冷え込んだ。その隙間を埋めたのが中国だ。

 オーストラリアのシンクタンク、ロウイー研究所によると、フィジーに対する06〜13年の中国の援助額は3億3300万ドル(約410億円)に達し、豪州の2億5200万ドルを抜いてトップに躍り出た。中国はフィジーの政治問題に深入りせず、インフラ整備の受注拡大という実利を取る戦略に徹してきた。

 「中国語しか話せない中国人との意思疎通は手間がかかる」「仕事の質が悪い。フィジーをインフラ建設の練習場にしているのではないか」――。これまで批判も多かった中国企業の進出だが、どんなに小さな案件でも積極的に手を挙げる姿勢に「インフラが不足するフィジーで、いま本当に必要な相手は中国かもしれない」と、地元の見方も徐々に変わってきているという。

 もちろん、中国の積極姿勢には、南太平洋への海上進出をにらんで足がかりをつくることや、付近に眠る広大な海底鉱物資源の確保という狙いが透ける。インフラ支援は外交の一環――。中国の実利主義が、南太平洋へも「一帯一路」を広げる。


■ミャンマー山岳地帯でダム建設計画目白押し

 中国・チベット高原に源を発し、ミャンマーを縦断してインド洋に注ぐ大河、タンルウィン川。山岳地帯で長く開発が手つかずだったが、ミャンマー国内の流域でいま、中国企業によるダムの建設計画が目白押しだ。

 漢能控股集団(ハナジー)、中国水電工程(ハイドロチャイナ)、中国長江三峡集団……。名だたる電力大手が競って大型水力発電所の開発計画を打ち出す。

 国内に大規模河川が多いミャンマーは、電力の7割を水力に依存する。だが、水力は雨期と乾期の出力変動が大きい。このため経済成長に伴う電力不足に悩む政府は、稼働の安定する火力主体の電源構成への転換を急ぐ。大型ダムと水力発電所の相次ぐ建設計画はそうした政府の方針と大きな食い違いを感じさせるが、実はいずれも生み出した電気の8〜9割を中国に供給する計画だ。

 ミャンマーは11年に民政移管を果たすまで旧軍事政権時代に国際的な孤立を深めたが、その間は中国による大型資源開発が相次いだ。象徴が07年に中国電力投資集団が主導してスタートしたミッソンダムの建設だ。総事業費は約36億ドルで、最大出力は600万キロワットとミャンマーで最大の水力発電所となる計画だった。周辺地域で約700平方キロメートルを水没させる可能性があるとされ、環境破壊を懸念する住民らの間で中国に対する反発が強まった。

 11年春に発足した今のテイン・セイン政権は“脱・中国”を志向。ミャンマーにおける中国の大型開発の象徴だったミッソンダムは、同年秋に建設が凍結された。テイン・セイン大統領は自身の任期中に開発を再開しないと明言している。

 ただ、今年11月の総選挙が近づくにつれ、再び中国資本による電源開発が勢いづいてきた。総選挙ではアウン・サン・スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)の優勢が予想される。政権交代という波乱の芽は、中国の「一帯一路」と結びついて、ミッソンダムの開発の再開という思わぬ形で吹き出す可能性も出てきた。

 無人の新築マンションが次々と砂嵐に飲み込まれていく。中国・新疆ウイグル自治区の南西部に位置するカシュガル市。郊外ではパキスタンと高速道路や鉄道、原油パイプライン、光ファイバー網で結ぶ「中パ経済回廊」の拠点整備が進むが、実際に広がっていたのは「鬼城(ゴーストタウン)」だった。

 4月中旬、中国の習主席がパキスタンを訪問し、同国を縦断する経済回廊の開発に総額約450億ドルを拠出すると約束した。カシュガルからアラビア海にのぞむパキスタン南部のカラチ、南西部のグワダルまでを結ぶ壮大な計画だ。起点となるカシュガルは少数民族のウイグル族が多数派を占め、砂漠と小さな果樹園だけの経済発展が遅れた地域だったが、回廊計画で地元経済も一気に活気づくかに見えた。

 たしかに、現地では開発の進展を見越した巨大な工業団地や商業施設の整備が進む。だが、よく見ると、どこも人影がなく、建設途上の建物の多くが砂にまみれている。上海市政府が主導する「上海新城」地区。250万平方メートルの広大な敷地に60億元(約1200億円)を投じ、高層マンションや大型ショッピングモール、高級ホテルを建てる巨大プロジェクトが進行中だ。ただ、地元のウイグル族からの評判は散々だ。

 「花都大道」「明珠大道」……。各新城の地名はいずれも中国名。「ここはカシュガルなのに、なぜ中国の地名を使うのか」。多くの地元住民から不満が漏れる。入居が始まったニュータウンもあるが、実際に購入する地元住民は少数で、多くの建物が利用される当てもないままゴーストタウンと化している。

(北京=阿部哲也、シドニー=高橋香織、ヤンゴン=松井基一)

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO90755070Q5A820C1I00000/

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邦銀、海外投資に収益拡大のチャンス (アジア・インフラ大競争)[日経新聞]
2015/8/27 2:00

 「どんなインフラ分野で民間マネーを取り入れられるか、考える必要がある」。アゼルバイジャンのシャリホフ財務相は5月上旬のアジア開発銀行(ADB)年次総会のセミナーでこう述べた。旧ソ連時代から残る発電所や道路といった老朽インフラの更新に民間マネーを呼び込むことが重要だと訴えた。

 麻生太郎財務相が「質の高いインフラ投資」を提唱したADB年次総会では、政府によるインフラ投資よりも民間マネー呼び込みの重要性を指摘する声が相次いだ。

 背景にあるのは、お金の流れの変化だ。経済協力開発機構(OECD)によると、先進国から途上国へ流れる民間マネーは2013年時点で3077億ドル。10年前の16倍に急増している。一方、13年の政府開発援助(ODA)は1269億ドルと同2.2倍にとどまる。

 米インフラ基金の幹部は、インフラ整備の課題について「資金の不足ではなく、民間が投資できる優良案件の不足だ」と指摘した。世界的な金融緩和を受けて、投資資金は世界中にあふれているというわけだ。

 国際協力銀行(JBIC)の渡辺博史総裁は「(景気が低迷する)欧州は(アジアの金融市場に)簡単に戻ってこない」との見方を示す。代わりに日本の地方銀行や第二地方銀行に投資のチャンスがあるとして、邦銀が海外投資を収益源に拡充できるとみる。

 中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の発足を年末に控え、水面下で日中両国によるアジアの開発金融の主導権争いは激しさを増す。ただ、アジアのインフラ整備を純粋に考えると、日本や中国など官の役割はあくまで黒子。主役の民間マネーをどれくらい引き出せるかで切磋琢磨(せっさたくま)するのが今後のインフラ整備加速の本質といえそうだ。

(経済部 中村亮)

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO90798810R20C15A8I00000/


 

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コメント
 
1. 2015年9月03日 21:49:08 : OO6Zlan35k
コラム:日中、政治的対立をよそに深まる経済的依存関係

Andy Mukherjee

[シンガポール 3日 ロイター BREAKINGVIEWS] - アジアの2大経済大国である日本と中国の間で再び敵対心が強まっている。だが経済上のロジックは両国の関係を逆の方向に向かわせる。すなわち日本の経済的な成功はますます中国に左右され、逆もまた同様だ。

9月3日は経済よりも地政学が前面に出るようだ。抗日戦争勝利70年を記念する大規模な軍事パレードは、中国経済が難しい局面にある中でタイミングの良い国家主義的イベントだ。

一方、日本では防衛省が14年ぶりの大規模な予算を要求している。これには日中が領有権を主張する尖閣諸島(中国名・釣魚島)の防衛強化のための措置が含まれる。

安倍晋三首相のデフレ脱却への取り組みは成果が乏しく、日本経済もまた困難な状況にある。

安倍首相が持つ手段のひとつが円安だ。これは中国人観光客に大歓迎された。今年上半期に日本を訪れた外国人観光客1100万人のうち、中国からの旅行者は280万人と前年同期比114%増加した。高品質な日本製品を求める「爆買い」はあらゆる商品に及び、ドラッグストアはオカモトのコンドームを手に入れたい中国人客であふれかえったという。

2012年に領土問題をめぐって中国で大規模な反日デモが起き冷え込んだ投資も上向いている。伊藤忠商事(8001.T)は今年、タイの財閥チャロン・ポカパン(CP)グループと共に、中国国有の複合企業、中国中信(CITICリミテッド) の株式20%強を取得した。出資規模は104億ドルと日本企業による中国企業への投資としては過去最大となった。

その一方で中国経済の減速を受けて、トヨタ自動車(7203.T)は同国での高級ブランド「レクサス」の生産を先送りする見通しとなった。

中国経済の問題は両国の貿易にも影を落としている。日中間の貿易は2000年から3倍以上に拡大した。だが2012年の安倍内閣の発足以来、日本の中国向け輸出は18%以上減少した。中国から日本への輸出もドルベースで10%超縮小した。また日本は中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)にも参加していない。

もちろん英国とドイツを見れば、強力な経済関係が対立を防ぐわけではないことは明らかだ。しかし企業も旅行者もおそらく日本と中国の関係は改善したほうがいいと考えているだろう。

●背景となるニュース

*中国は3日、北京で抗日戦争勝利70年の記念式典を開催。軍事パレードで1万2000人以上の兵士が行進。中国政府は日本や日本国民を標的としたものではないと説明。

*西側諸国の首脳は大半が式典に参加せず。ロイターの報道によると中国の軍事的拡張に誤ったメッセージを送ることを懸念した。

*防衛省が提出した2016年度予算の概算要求は15年度当初予算比2.2%増の5兆0900億円(423億8000万ドル)で過去最大。尖閣諸島の防衛強化を目指す。

*日中貿易は2000年の850億ドルから2860億ドルへ急拡大。中国は2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟した。
http://jp.reuters.com/article/2015/09/03/column-japan-china-relations-idJPKCN0R311V20150903


[12削除理由]:管理人:無関係の長文多数


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