http://www.asyura2.com/15/kokusai11/msg/355.html
Tweet |
ISD条項に限らず、TPPは、加盟する主権国家の“内政”に広く深く関与する内容になっており、干渉する側の加盟国には利があるとしても、干渉される側の加盟国には耐えられないものである。
それでも加盟しようとする国は、ベトナムが典型だが、激しい誘致合戦のなかでできるだけ多くの外資を導入したいからである。
このような意味で、すでに外資の投資蓄積が高まっているタイはTPPに加盟するメリットはほとんどない。離脱する可能性もあるマレーシアも、ベトナムなどとの競争上TPPに手を挙げたが、それほど実利があるわけではない。
中国的な緩やかな「自由貿易協定」政策のほうが新興国や後進国にとってメリットが大きいし、日本など産業資本主義先進国も中長期的に見ればそのほうが得られる経済的利益が大きい。
=================================================================================================
[経営の視点]TPP、アジアに広がるか
「仲間はずれ」のさじ加減
編集委員 太田泰彦
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉が土壇場で迷走している。7月末のハワイ閣僚会合は物別れに終わった。決着を阻んだ争点は、表面的には農業分野の乳製品の扱い。だが実際には、明日の日本経済の姿を左右する、より重大な論点が水面下に潜んでいる。
TPPの分かれ道は交渉に参加していないタイにある。通商政策を仕切るアピラディ商業相は先週、「TPPの体制がしっかり確立するかどうか急がずに見守る」と言明。今まで検討してきたTPP加盟を保留する方針を明らかにした。ハワイ会合の失敗を受けての冷めた判断である。
なぜタイが重要か。東南アジア諸国連合(ASEAN)の中で、バンコク一帯は日本メーカーが最も多く集積する製造業の一大拠点だからだ。日本の製造業を支える部品・材料のサプライチェーン(供給網)はタイ抜きでは回らない。
今すぐには無理でも、タイを含めてTPP経済圏をやがて地域全体に広げたい。これが日本にとり死活的な課題である。築いてきた調達網を丸ごと仲間の輪の中に取り込まなければ、加盟国だけに与えられる貿易の優遇措置を使えない。タイがTPPに興味を失えば、困るのは日本なのだ。
たとえば自動車産業の例を見てみよう。日本から米国に輸出する場合、完成車に組み込む部品・材料の“出身地”が問題になる。日本国内やマレーシア、ベトナムなどTPP参加国から多く調達すれば、この車は「TPP産」と認定され、関税撤廃の対象となる。
ところが、タイや韓国、中国など「非TPP国」から調達した部品の比率が高いと、その車は「TPP産」とはみなされない。適用される米国の関税率は高いままだ。これが「原産地規則」と呼ばれる、仲間と仲間以外を区別する貿易協定の独特のルールである。
トヨタ自動車など国内調達の比率が高いメーカーは厳しい条件でもクリアできるだろう。逆に仏ルノーとの部品共通化で、積極的に海外で調達先を多角化してきた日産自動車などは、苦しい立場に追い込まれる。
ここに根源的なジレンマが浮上する。原産地規則によって域内調達する部品の比率を高くすべきか。それとも低くすべきか。
高い比率を課せば、壁の内側に戻ろうとして製造業の国内回帰が進むかもしれない。他方、既にアジア全域に張りめぐらされた日系企業の調達網がTPPによって分断されかねない。どちらが長い目で見て日本の国益にかなうのか……。
忘れてならない視点は、タイなど未加盟のアジア諸国に対し、TPPをいかに魅力的に見せるかである。タイの製造業の集積が、日系企業の競争力の源泉であるのは間違いない。加盟すれば得をする、言い換えれば、加盟しないと損をするような仕組みを築かない限り、自由貿易の仲間の輪は広がっていかない。
有志国による戦略的な自由貿易協定とは、そもそも本質的に排他的で差別的な「意地悪な政策」なのだ。原産地規則は、タイが仲間外れを恐れ、参加を切望するようなさじ加減が望ましい。各企業はどんな要望を政府に伝えているだろうか。
(シンガポール)
[日経新聞8月24日朝刊P.9]
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。