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[核心]中国の「資源爆食」が終わる
石油需要の伸び鈍化も 本社コラムニスト 脇祐三
中国の景気が減速し、資源消費の伸びにブレーキがかかってきた。世界中から燃料、原料などを買い集め、「資源爆食」といわれたころとは様変わりだ。中国の需要急増と並行して原油や鉄鉱石など国際商品価格が上昇し、価格上昇によって新たな資源開発が進み、供給が増えてきたところで需要の勢いが鈍った。
この需給関係の緩みとドル高が重なって、資源価格下落の引き金を引いた。中国の需要鈍化が続けば、将来の世界のエネルギー資源の需給関係の予測も修正を迫られる。
中国の国家エネルギー局によると、今年1〜6月の中国のエネルギー消費の総量は前年同期比0.7%増だった。中国政府は1〜3月、4〜6月の実質国内総生産(GDP)成長率を、前年同期比7.0%と発表している。エネルギー効率が徐々に改善しているとしても、エネルギー消費の伸び率は経済成長率の公表数値とかけ離れた低さだ。
政府目標に合わせたようなGDPの数値より、個々の産業統計のほうが減速の実態を映し出す。発電量、電力消費量は前年同期比でほぼ横ばい。電力消費量は第3次産業が前年同期比8.1%増となった半面、需要全体の7割強を占める工業は0.4%減った。重工業の電力消費が、前年の実績を割り込んだからだ。
資源別では石炭の国内生産、輸入の減少が目立つ。水力、原子力、風力、太陽光など、化石燃料以外による発電が急増しているのがその一因だろう。
2014年までの10年間に3倍に増え、世界の5割を占めるようになった粗鋼生産に、頭打ちの兆しが出てきた。素材産業の過剰生産が曲がり角に来ていることも、石炭離れやエネルギー需要全体の伸び悩みにつながっている。
石油消費量は推計で3.2%増。1〜6月の原油輸入量は1億6000万トン(日量平均648万バレルに相当)で、前年同期比7.5%増になり、原油安局面での備蓄の積み増しの動きも反映しているとみられる。
12%超の伸びが続いていた天然ガス消費量は、昨年8.6%増にとどまり、今年1〜6月の増加率はわずか1.4%だ。最大のガス供給者である中国石油天然気集団(CNPC)は、今年の国内の天然ガス需要見通しを2080億立方メートルから1900億立方メートルに下方修正した。国内の生産も輸入も拡大しているので、余剰感は強い。
中央アジア諸国やミャンマーからのパイプラインによるガス輸入に加えて、ロシアからのガス輸入もこれから本格化する。中国需要の伸び悩みに伴って、アジアのスポット市場での液化天然ガス(LNG)相場は昨年から大幅に下落した。
中国石油化工(シノペック)が着手したオーストラリアなどからのLNG輸入施設の新増設事業も、軒並み進行が遅れている。習近平政権の反腐敗運動の矛先が「石油閥」に向かい、大手各社の幹部の入れ替えが続いているのに加え、国内で長期契約ベースの大口顧客を見つけるのが容易でないという事情もある。
石炭や石油より二酸化炭素の排出量が少ない天然ガスの利用拡大は、地球温暖化対策として重要になる。そこで、中国政府が近く産業用のガス供給価格を大幅に引き下げるという観測も広がってきた。これまで資源の不足を見込んでカネに糸目をつけずに調達してきた中国が、確保した資源が余るので消費を促すようになったともいえる。
核開発問題を巡って米国などと合意に達し、制裁の解除が近づいたイランに、欧州諸国を中心に各国の政府や企業の代表の訪問が相次ぐ。イランと太い通商のパイプを維持してきた中国も資源輸入の拡大に関心を示すが、前のめりになっているわけではなさそうだ。
「当面の量の確保は問題ない。サウジアラビア、イラク、イランの原油は似たような油種。どこが最も割安な価格を提示するかが選択のカギ」。中国の石油業界アナリストは、そう説明している。
中長期の石油需要を大きく左右するのは、これからモータリゼーションがどのくらいの勢いで進むかだ。世界最大の自動車市場になった中国では、1〜6月累計の新車販売台数が前年同期を若干、上回った。だが月次では、4、5、6月と前年実績割れが続いた。株価急落の影響が広がった7月以降は、さらに冷え込む可能性がある。
石油需要の先行きを考えるうえでも、自動車の販売動向から目が離せない。
日本エネルギー経済研究所は昨年10月、40年までの世界のエネルギー需要の増加の46%を中国とインドの2カ国が占めるという長期予測を発表した。この基準ケースの前提とした40年までの中国の年平均成長率は5.4%。これを3.9%に置き換えた低成長ケースでは、中東からの石油・ガス供給へのニーズが大幅に低下するという。
「最近の中国の動向を見ると、今後のダウンサイドリスク発生の可能性とその影響について、分析を深める重要性、必要性を感じる」。同研究所の小山堅常務理事はそう指摘する。
中国の爆食で資源が不足する懸念から、資源の余剰で産出国の経済が冷え込み世界に悪影響が及ぶ懸念へ――。後者のチャイナリスクも非現実的とはいえなくなる足元の経済状況だ。
[日経新聞8月10日朝刊P.4]
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