▲英バーミンガム大で発見された最古のコーランの断片(バチカン放送７月２９日独語電子版から)

http://blog.livedoor.jp/wien2006/archives/52111576.html
ウィーン発 『コンフィデンシャル』
2015年08月01日06:00

　当方は７月２６日、「英バーミンガム大学は、イスラム教の聖典コーランの世界最古の断片とみられる古文書が見つかったと発表した。放射線炭素年代測定によると、同古文書は９５％以上の確率で西暦５６８年から６４５年の間の作成と判定された」と指摘し、「なぜ、このニュースが驚くべきかというと、発見された古文書がイスラム教の創設者ムハンマド（５７０年頃〜６３２年）の同時代の人物による可能性が考えられるからだ。ひょっとしたら、『同記述者はムハンマドを個人的に知っていた人物かもしれない』（バーミンガム大のデビット・トーマス教授）というのだ」と書いた。

　バチカン放送独語電子版（７月２９日）には上記の続報が報じられていたが、読んで驚いた。英大学で発見されたコーランの断片がひょっとしたらムハンマドが生まれる前に記述された古文書の可能性が考えられるというのだ。すなわち、イスラム教創設者ムハンマドよりもコーランの原書が先に存在していた可能性が示唆されていたのだ。事実とすれば、センセーショナルだ。

　バチカン放送によると、独ミュンスターで教鞭をとるイスラム教学者マルコ・シェーラー氏は独日刊紙フランクフルター・アルゲマイネに寄稿し、「これは仮説だが」と断ったうえで、「今回発見されたコーランの断片がムハンマド前に作成された古文書の可能性が考えられる。アラブの唯一神伝統に基づいて記述されたテキストが存在し、後日のコーランはそれを基に作成されたと考えられる」というのだ。もちろん、その仮説が裏付けられるためには、今回発見されたコーランの断片より古いコーランが見つかることが前提だ。

　ただし、英バーミンガム大らが実施した放射線炭素年代測定で「西暦５６８年から６４５年の間」という測定結果が出ている。年代を「西暦５６８年」とすれば、ムハンマドの誕生より早いことになるから、「ムハマドが生まれる前にコーランが存在していた」というシェーラー氏の仮説は今回のバーミンガム大の発見で裏付けられた、ということもできる。

　イスラム教の聖典コーランは神が最後の預言者ムハマドに託した啓示がまとめられたものといわれている。現在のコーランは第３正統カリフのウスマーン（在位６４４〜６５６年）によってまとめられたもので、西暦６５０年頃といわれてきた。

　ちなみに、独ベルリンで教鞭をとるイスラム教研究家の Angelika Neuwirth 女史は「コーランはユダヤ教、キリスト教の唯一神教の流れから生まれた聖典だ。コーランを通じてキリスト教を学ぶこともできる。コーランの研究には政治的意識と批判精神をもって取り組まなければならない」と提案し、コーランも欧州の歴史のアイデンティティーの一部であると主張している。

　バーミンガム大で発見されたコーランの断片はこれまで発見された最古の断片と見られ、ひょっとしたらムハマドを生前知っていた記述者の手によるものではないか、といった推測が聞かれたが、シェーラー氏は一歩進めて、「ムハマドが生きていた時代より前のコーランの断片」という仮説を立てているわけだ。キリスト教の聖典「聖書」の場合、その記述者はほとんどがイエスの死後、西暦１００年前後の人間だ。いずれにしても、、シェーラー氏の仮説は極めて衝撃的だ。バーミンガム大の女学生が偶然見つけたコーランの断片はイスラム教の聖典の成立について抜本的な見直しを強いるかもしれない。 　

コメント
1. 2015年8月04日 16:19:40 : nJF6kGWndY そもそもコーランの内容の、かなりの部分は、当時のアラブ社会の一般常識だから コーランと類似内容の文献が発見されても、あまり驚くほどのことではないが >「西暦５６８年から６４５年の間」という測定結果が出ている。年代を「西暦５６８年」とすれば、ムハンマドの誕生より早いことになるから、「ムハマドが生まれる前にコーランが存在していた」というシェーラー氏の仮説は今回のバーミンガム大の発見で裏付けられた 「西暦５６８年」と仮定するのは、年代測定の基本を知らない愚かな解釈
2. 2015年8月04日 22:01:33 : wagnWuB44I コメントありがと。 見つかった断片は、コーランと類似内容の文献ではなく、コーランの第１８〜２０章の一部が含まれる古文書だそうだ。 7月22日のロイターの記事は次の通り。 ---------------------------------- ［ロンドン　２２日　ロイター］ - 英バーミンガム大学は２２日、同大学の図書館に保管されていたイスラム教の聖典コーランの断片が世界最古の写本の１つで、イスラム教預言者ムハンマドと面識のあるものが書いた可能性もあると明らかにした。 この断片は長い間、誤って７世紀終盤のものと一緒にまとめられていたが、９５．４％の確率で正確とされる放射性炭素年代測定法を用いて調べたところ、５６８─６４５年のものだと分かったという。 ---------------------------------- 放射性炭素14による年代測定は数十年から数百年の誤差があるというから、"西暦568年から645年"というのは確かにちょっと首をかしげるね。他に文献的な補正資料があるのかわからないけど、そう断定できる説明が聞きたいね。 (ピ)
3. 2015年8月05日 09:39:07 : dy9pI2acKU 記事中でひとつかけている情報は、「ムハマドは文盲だった」ということじゃないの。だから、ムハマドが「自分で書いた」ということにはならずに、「記述者はムハマドと同時代の人」という話になる。その辺が、ちょっと読者にわかりずらくなってる。 年代測定の件は、確かに？ですな。ムハマドの生前にテキストが存在したという他の傍証が知りたいところ。 では
4. 2015年8月05日 13:39:32 : dy9pI2acKU あ、生前ではなく、生まれる前だ。 Ｗｉｋｉには、イエメンで見つかった古いコーランのテキストが、コーランが様々な文書の寄せ集めであることを示していて、一部分はムハマドが生まれる数百年前から存在していた・・・とあるな。初期イスラムは、キリスト教のアラブ系宗派だったという指摘もあり、マリアに相当する（のかな？）ハディージャ（ムハマドの年上のかみさん）や彼女の甥も信仰の対象だったよう。 こりゃ、おもろい。 で
5. 2015年8月05日 17:53:30 : nJF6kGWndY >>02　見つかった断片は、コーランと類似内容の文献ではなく、コーランの第１８〜２０章の一部が含まれる古文書 いや、コーランのイスラム世界での定義は、「最後の預言者ムハンマドに対して下された啓示」だから 仮に、それがムハンマドの（脳内）啓示の以前から存在していたとすれば コーランではなく、「コーランと一致する内容がたまたま書いてあった類似文献」ということになるわけだ ただし、外部の人間は、過去の文献の内容を、ムハンマドが神の啓示としてパクッタと解釈するのも不思議ではないｗ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%B3 コーランは、イスラーム教（イスラーム）の聖典である。イスラームの信仰では、唯一不二の神（アッラーフ）から最後の預言者に任命されたムハンマドに対して下された啓示と位置付けられている。ムハンマドの生前に多くの書記によって記録され、死後にまとめられた現在の形は全てで114章
6. 2015年8月05日 17:57:23 : nJF6kGWndY もちろん、全知全能なるアッラーが当時や過去ののアラブの常識や風習を理解していて、それを啓示として与えたという可能性も排除はできないｗ
7. 2015年8月05日 19:23:23 : wagnWuB44I なるほど。 説明ありがと! (ピ)
8. 2015年8月06日 19:28:58 : KFedyKmZ0c これ、ウスマンが適当にパクってきた可能性もあるんじゃないの？イスラム「正統」を確立する過程で、キリスト教のパウロがした役割を、ウスマンが果たした・・・・みたいな。誰か、ダビンチファイルみたいな小説にして書けばいいのにね。 初期イスラムの実質上の指導者は、カミサンのハディージャで、錯乱気味のムハマドに寝物語で、宣託の内容を吹き込んでいた。そのことを証明する、ハディージャジ直筆のコーランが存在し、シーア派異端により保管されている。影のコーランの存在を知ったモサド工作部隊、イラン最高指導者直属の秘密機関、サウジアラビアの特務機関、中東のこれ以上の混乱を望まぬＣＩＡ、イスラム体制派への絶対的カードとしてコーランの入手をもくろむＩＳＩＳらが、イスラム教を根底から覆すコーランをめぐって、暗闘を繰り広げる・・・みたいな。 ま、書いたら殺されるだろうけど（笑） では

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