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ニューヨーク市場のWTIの推移。原油価格は一時よりは回復したが…
米シェールの債務はギリシャ並み[英国エコノミスト]
2015/7/17 6:30
掘削技術の革新により急成長してきた米シェール産業だが、原油価格の下落で苦境に直面しつつある。2011〜14年のブームで過剰投資を重ねてきたことが、多くのシェール企業の財務体質の悪化を招いた。新規投資の凍結とコスト削減で対応しているが、原油価格が回復しない場合、破綻する企業も出てきそうだ。
米ウォール街の連中は、石油の試掘を手がけるヤマ師と同じくらいシェール産業が成功するかどうかについての議論が大好きだ。特にここへ来て、米シェール企業の財務状況を巡る議論が激しくなっているのも無理はない。
悲観派は、米金融大手で08年に破綻したリーマン・ブラザーズの問題点を早くからつかみ、同社株の空売りで莫大な利益を上げた米大手ヘッジファンドのマネジャーであり、著名投資家として有名なデビッド・アインホーン氏のような空売りをする連中だ。
彼らは、水や砂、化学薬品を使い、岩を割ってシェール層から油を取り出すフラッキング(水圧破砕法)事業はいわば底なしの穴で、これまでカネが投入されすぎたと主張している。
■狂ったように借り入れた経営者
一方、米石油業界の先駆者たちは、米国の原油価格指標が昨年の1バレル100ドル(約1万2000円)強から現在の57ドル(約7000円)まで下がっても、シェール産業は成功すると主張する。
これらの石油関係者は今もシェール企業に多額の資金を投じている多くの投資家に支えられている。事実、昨年12月以降だけでシェール企業が株式や債券の発行により調達した資金は約350億ドル(約4兆3000億円)に達する。
いずれの主張にも一理ある。シェールエネルギーの将来について楽観的な見方をすることも、現在、山のように存在する多数のフラッキング企業に不安を抱くのも当然のことである。
実際、シェール産業が成功するかどうかは大きな問題だ。今やシェールは大規模な産業に成長し、その上場企業による投資額は既に5000億ドル(約61兆4000億円)に達する。
資金の多くはジャンク債を通じて調達されてきた。非公開企業まで含めると、シェール関連企業が抱える負債額は今やギリシャのそれに匹敵する。
テキサス州とノースダコタ州の地下を大量に掘削してきた結果、今や米シェール企業によるシェールの産出量は世界の原油産出量の5%を占める。
米シェール企業がどれほど健全かという問題は、西欧の運転手からサウジアラビアの族長ら、アジアの消費者に至るまで世界中の人々に影響を与える。
シェールエネルギーについて楽観視する向きがあるのは、シェール業界が原油価格の下落に賢く対処してきたことがある。11〜14年は、積極投資により生産高を急拡大させた。シェール企業の経営者らは当時、狂ったかのように借り入れ、土地の権利を競り上げ、見境なく掘っていた。
■上位60社強は利益ゼロ
しかし、掘削リグ労働者がぜいたくな作業宿舎でロブスターを食べたり、テキサスの町が小型ジェットで周回されたりするのは遠い昔の話になった。
代わりに今の米シェール業界の新しい標語は「倹約」だ。昨年12月以降、コストは5分の1削減された。これは主にサプライヤーの絞り込みによる。テキサス州では2万人が解雇された。シェール企業の経営者は、産出量が最も期待できそうな油井に集中し、そこで掘削を進めていると話す。その結果、稼働中の掘削リグ数は半減したが、産出量は維持されている。
コスト削減が進む一方で、掘削する油井を選別し始めたことから、新規投資は利益を生むはずだ。ほとんどの企業が1バレル60ドル(約7400円)なら、新たな油井の場合、投資額に対し25%以上の利益を得られると豪語する。これだけ状況に機敏に対応してきたのだから、コスト削減の余地はあるだろう。
シェール企業が、かつてのブーム中にひどい意思決定を重ねた過去から自由になり、明るい未来に集中できればいいが、どの企業も既存の減少する資産を将来の見込み資産と合わせていく必要がある。過去のまずい投資などの遺産があることを考えれば、悲観的に考えるのがよさそうに思える。
シェール企業の上位60社余りは、莫大な投資を重ねてきたにもかかわらず、利益はほぼ上げていない。にもかかわらず、投資家たちはこれらの企業をその純資産価値よりかなり高く評価している。つまり、その株価はバブルの要素を含んでいるということだ。
多くの企業は、追加投資の必要がない油井の稼働によって現金を得ている。15年第1四半期の上位企業の決算を見ると、そのキャッシュフローの31%は原油価格が高かった頃に行ったデリバティブ投資によるものだ。だが、こうしたリスクをヘッジする取引も来年あたりには終わりを迎えるはずで、キャッシュフローは減少していく。
■価格の回復なければ破綻も
このことが、さらなる借り入れをせずとも生産量を増やせるとするシェール経営者たちの主張に疑念を生じさせている。入ってくる現金が減れば、シェール各社は損益をバランスさせるために投資額を3分の2以上は削減せざるを得なくなるからだ。投資額が減れば生産高も減ることになる。
しかも、資本市場が常に積極的に資金を提供するとは限らない。シェール企業の負債総額は850億ドル(約10兆4000億円)に上ると言われ、財務体質が悪い企業は半分に達する。過去数週間、資本調達のペースも減速している。
不確定要素は原油価格だ。多くのシェール企業の経営者は、原油価格が回復すれば、窮地を脱することができると確信している。石油業者は往々にして楽観主義者だ。そうでなければ地面に穴を掘ることなどするはずがない。
だが、原油価格が上昇しなければ、過去に行ったまずい投資の報いを受けることになる。デフォルト(債務不履行)に陥る企業が増え、資産を売却したり買収されたりする企業が出てくるだろう。
そうなれば、銀行や投資家も短期的損失に直面することになる。これまでとは異なり、無駄のない筋肉質な競争力ある産業として浮上するのであれば、自分たちの過去から学ぶ必要がある。
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http://www.nikkei.com/article/DGXMZO89333400V10C15A7000000/?n_cid=DSTPCS001
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