http://www.asyura2.com/15/kokusai11/msg/209.html
Tweet |
ギリシャ人の罪悪感と、シリザの背信
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2015/07/post-f640.html
2015年7月18日 マスコミに載らない海外記事
2015年7月16日
F. William Engdahl
ギリシャと、トロイカの壊滅的な要求を巡り、事態が展開しつつある、悲しく危険な時点で、自国の債務状況に対して、ギリシャ国民が罪悪感を抱いていなければ、こうした全てのことが実現していなかっただろうことが明らかになっている。2009年10月に危機が始まって以来、彼等が罪悪感を持った結果、国民全員が破滅の可能性に直面するという人類の悲劇へと、状況は急激に転化しつつある。
前回記事で、元財務大臣のヤニス・バルファキスは、ギリシャ国内でも国外でも、ギリシャ国民と、債務緩和や債務償却に対する国民のあらゆる希望を粉砕するため、意図的にギリシャ国民をその気にさせている、オリガルヒの為のトロイの木馬だと私は主張した。
7月5日、ギリシャ国民は、ユーロ圏に止まる為の条件として、トロイカの更なる緊縮政策を受け入れるか、それとも“ノー”というかの特別国民投票を行った。投票の約61%が、トロイカ緊縮政策に、断固としたノーを主張した。ツィプラスとバルファキスは、そうすれば、トロイカからより良い条件を引き出す上で、ブリュッセルとベルリンで、彼等が“より優位にたてる”とウソをついて、有権者達にノーと言うよう請うたのだ。
ところが、7月9日、ツィプラスは新提案を提出したと発表し、詳細が明らかになると、それが事実上、ギリシャ人有権者が強く反対したばかりのトロイカの要求とそっくりなことが判明した。この裏切りは、士気をくじく、ひどいものだ。7月6日、投票直後のバルファキス辞任後、ツィプラスは、新財務大臣に、ユークリッド・ツァカロトスを任命した。ツァカロトスは、オックスフォードで学んだ“マルクス”経済学者で、もう一人のカフェ“マルクス主義者”ヤニス・バルファキスの友人で、海運業・地主の裕福なオリガルヒ・ギリシャ軍人家族の御曹司だ。トロイカ、IMFや、連中の負債奴隷体制に反対するふりをしている政権にとって、いささか奇妙に思える。
フランスのオランド大統領がツィプラスに個人的に派遣したフランス人高級官僚と相談しながら、ツィプラスと、ツァカロトス財務大臣が、新緊縮政策への降伏文書を書いたことが明らかになった。シリザ政府は、どう見ても、彼等が国民投票で獲得した信頼を裏切って、ギリシャ国民に対し、背信、あるいは反逆を行ったのだ。
2009年以来、このギリシャ危機丸ごとが、ギリシャ外部、内部の両方で、詳細が入念に仕組まれていたことが益々あきらかだ。2009年に、ギリシャ国民が、ひたすら、自分達が悪かったのだから、銀行家に返済することで罰を受けるべきだと思い込んだがゆえにこういうことが可能だったのだ。同じ理由から、彼等は、次々と緊縮政策で国民を懲罰する、パパンドレウ以降の一連の政権に投票してきた自分たちが悪かったと思い込んだ。同じ罪悪感ゆえに、あらゆる苦難にもかかわらず、破壊的なユーロ圏に止まりたいと願うはめになったのだ。
罪悪感とローマカトリック教会の大分裂
罪悪感というのは恐ろしい感情だ。個人の場合、それは、ぞっとするような結果を招きかねない。罪悪感というのは、概して、何も解決するわけでなく、我々の状況をずっと悪化させるだけの、全く無益な感情だが、これが、我々が何かについて罪悪感を抱いている事実を隠そうという馬鹿げた努力で、個人を、自分にも他人にも、ウソをつくようにさせてしまうことになる。我々の罪悪感を隠すためにウソをつくことは、たとえ我々がそれに気がつかなくとも、ひどい結果を招くことになる。我々が生きる社会の道徳律の何かに違反してしまったが、誰も知っているはずがないので、我々はウソをつくのだ。典型的に、我々は自らの、罪悪感を恥ずかしく感じるものだ。
世界のあらゆる主要宗教は、信者の罪悪感を養ってきたが、聖アウグスティヌスが発想した、我々は全て、初めての呼吸をする前に、最初から罪を負って生まれるという原罪の教義を持った特にローマ・カトリック教会にはことさらあてはまる。
現在のギリシャ危機は、約1700年前、ビザンチウムから現れたキリスト教会が、1054年頃、教会史で、ローマ・カトリック教会の大分裂として知られる衝撃的な分裂をした歴史的事実と無関係ではない。この分裂の神学上の核心にあったのは、後に東方正教会として知られるようになったものが、ローマ・カトリック教会の原罪という教義を受け入れることを拒否したことだ。正教会は、人は生まれながらにしてアダムとイブの罪を、あがなわねばならない罪悪を負っていると考えることを拒否した。
現在のギリシャの状況の残酷な皮肉は、ギリシャ文化に染み込んだ伝統である、そうした文化的遺産にもかかわらず、現在、ギリシャ国民は、ある意味、今会わされている目に相応しい、何か実に、ひどい事をしてしまったという集団的責任を感じている。もはや、ギリシャ人は、満足感は感じられず、2009年に明らかになった、この深刻なヨーロッパの危機を引き起こしたことを遺憾に思い、責任があると思わされるようになっている。
人々の罪悪感は、恐ろしい結果を引き起こしかねない。ドイツ国民はこれを分かり過ぎるぐらい分かっている。1919年、勝利した連合軍は、ドイツ政府に、悪名高いベルサイユ条約の231条、戦争責任条項の署名を強制した。条項にはこうあった。“…連合国政府はドイツおよびその同盟国の侵略により強いられた戦争の結果、連合国政府および国民が被ったあらゆる損失と損害を生ぜしめたことに対するドイツおよびその同盟国の責任を確認し、ドイツはこれを認める。”
第一次世界大戦の罪をドイツに一国に負わせ、更にドイツに、戦争賠償金を、連合軍の勝利国 -アメリカ、イギリス、フランスと、イタリアに支払う懲罰を受け入れるよう強制したことが、直接、第三帝国を出現させ、1945年、ドイツ二度目の残酷な敗北を招いた一連の出来事を引き起こしたのだった。1945年、スイス人の精神分析学者、C.G. ユングが、ドイツ国民は、同郷人による残虐行為に、集団的責任(ドイツ語で、コレクティーヴシュルトKollektivschuld)を感じているという文章を書いた。ユングは、これは“…ドイツ国民に、この罪悪感を認識させる為の治療で、最も重要な課題の一つだろう”と書いていた。
戦後、イギリスとアメリカ占領軍は、“こうした残虐行為。あなた方の過ちだ!”という類のスローガン (ドイツ語では、Diese Schandtaten: Eure Schuld!)を書いた強制収容所のポスターを含む広報活動で、恥と罪悪感を植えつけた。
ギリシャの‘原罪’
現代ギリシャ崩壊に話題を戻そう。いうなれば、支払えない債務と、耐えがたい緊縮政策というギリシャ崩壊の根源は、2000年に、ユーロ圏と呼ばれる特権的集団に忍び込むために、ギリシャ政府がついたウソにさかのぼる。
GDPの3%財政赤字と、GDPに対する公的債務の総計が60%というマーストリヒト条約の上限要求を満たすために、ギリシャがウソをついた際、ゴールドマン・サックスは積極的なパートナーだった。ゴールドマン・サックスの金融上の難しい理屈を考える連中が彼等に提案した複雑な通貨上のからくりを利用して、ギリシャ政府はウソをついた。ユーロ参加を成立させるべく、政府は、16億ユーロもの軍事物資購入もブリュッセルに隠していた。
ゲオルギオス・パパンドレウが外務大臣だったギリシャが、ユーロに参加した2000年、コスタス・シミティスのPASOK全ギリシャ社会主義運動政府が、欧州中央銀行や、EUの公式統計機関EUROSTATの幹部から、知られたくない秘密を隠しおおせるだろうと、我々は信じ込むことになっている。
現在の公式説明は、2009年10月、元新PASOK政府のパパンドレウが、2000年、シミティス政権で外務大臣をつとめていた際に知った秘密を、奇妙なことに、首相として、暴露することに決めたのだ。パパンドレウは、ギリシャの年間赤字が、3%ではなく、12.7%だったことを“発見した”と発表した。このニュースそれ自体が、引き続いて起きた債務急増を必ずしも招いたわけではない。
パパンドレウ発言の効果で、2008年9月、世界的金融危機の結果引き起こされたギリシャ不況を、本格的なギリシャ国内危機に変えてしまった。彼がこれを発表した際、ギリシャの失業は既に10%で、ニューヨークの格付け機関は、ギリシャ国債の格付けを、あらゆるユーロ圏の国で最低BBB+に引き下げた。
当時の深刻な景気後退に、過酷な緊縮政策で対応するようパパンドレウに助言した人物が、シリザの財務相を辞任したばかりのヤニス・バルファキスであり、彼の驚くべき仕業がギリシャを現在の混乱状況に追いやったのだ。
パパンドレウは、バルファキスの助言に従って苛酷な緊縮政策を実施し、状況は、本格的な国家危機と化した。政府は支出を大幅に削減し、増税し、雇用を凍結し、定年を延長し、公共部門の賃金を10%削減し、全国的な反緊縮政策ストライキを引き起こした。
大手マスコミが、ひっきりなしに強調している様に、EU、ECBやIMFによるギリシャ向けの何十億もの金融債務は、直接、ギリシャ国民にわたり、寛大過ぎる年金制度や、税金支払いを拒否する国民を生んでいるという入念に作り上げられた神話がある。当然これは、我々が往々にして合意を形成する、ドイツや他のEU諸国のパブで仲間うちで文句を言いあう際、とてつもない怒りを引き起こす。
この説明に一つだけ間違いがある。真実ではないことだ。危機が本格化して以来、ギリシャ債権市場に対するヘッジ・ファンド攻撃と、2010年2月の、超投機家ジョージ・ソロスが率いたユーロ攻撃で完了し、ギリシャ政府の金利を高騰させ、トロイカが、融資とクレジットを、約2400億ユーロという額にまで拡大した。
大手EUマスコミでは決して説明されない本当の疑問は、そのお金に何が起きているのかだ。アテネ大学のギリシャ人経済学者ヤニス・ムザキスは、2400億ユーロのうち、830億ユーロは、主にフランスとドイツの銀行で構成される債権者が保有している古い債務の返済に使われると計算した。410億ユーロは、主にギリシャ以外のEUや他の銀行が保有している既存国債の利子支払い維持に使われる。480億ユーロは、ギリシャの法律のおかげで、ギリシャで税金を支払わないギリシャ・オリガルヒが大半を所有している民間ギリシャ銀行の緊急救済に使われる。トロイカ融資の350億ユーロは、2012年の債務“元本削減”融資に使われる。これで、総計2400億ユーロのうちの2070億ユーロにのぼる。つまり全体の86%、大半がバブルが破裂すれば、自分達は“大き過ぎて潰せない”だろうと知りながら、ギリシャ債務を積み上げた愚劣なフランスとドイツの銀行を救うために使われるのだ。まさにその通りとなり、ECBとEUは、連中の救済を強いられよう。
2400億ユーロのうち、わずか270億ユーロしか、ギリシャ政府予算や、インフラ投資にまわらない。しかも、この債務では、ギリシャの銀行を含め無謀な銀行の借入債務をギリシャ政府が引き継ぐ。
罪悪感
要するに、ギリシャとギリシャ国民は、だまされ、詐欺にあい、強奪され、今やシリザと、自分達の存在の為に戦ってくれるものと期待していたツィプラス首相に裏切られたのだ。2010年始め以来、ギリシャでは、ベレンバーグ銀行のホルガー・シュミーディングが表現した通り“平和時に、あらゆる欧米の国によって課されたもののうち最も過酷な緊縮政策”が行われている。
ギリシャ国民自身が、金融詐欺に責任があると感じていなければ、パパンドレウとバルファキスが、2010年2月以降、ギリシャ国民に押しつけたものから逃げきれる政府などあり得ない。ギリシャ国民は、脱税するオリガルヒを真似して行っている税金極小化の慣習以外、いかなる金融詐欺の罪を犯しているわけではなかったし、犯してもいないのに、ギリシャ国内のオリガルヒが所有するマスコミや、EUのあらゆるマスコミの集中砲火のおかげで、明らかに、ギリシャ国民は、自分達は“罪をおかしており”罪の意識を負うべきだと説得されてしまっている。
あらゆる主要な宗教で、罪と債務を意味する単語が同じなのは注目に値する。偶然だろうか? 私はそう思わない。こうした“債務”(ドイツ語では、シュルデン) の背後にあるのは、債権者が“罪人”からの借金返済要求だ。十字軍の血まみれの本当の歴史に戻ると、ローマ教皇が宣言した戦争は、当初、1054年のローマ・カトリック教会大分裂後、東方正教会から、コンスタンチノープルとその周辺を占拠し、ローマ・カトリック教会の統治下にするためのものだった。
1146年、クレルヴォーのベルナルドゥスは、“異教”イスラム教徒に対する中世十字軍時代に、最も強力で裕福な騎士団、テンプル騎士団に書簡を書いた。ベルナルドゥスは、テンプル騎士団にこう宣言した。“聖戦で不信心者を殺害するキリスト教徒は、必ず褒賞を得られ、自分自身が殺害されれば、更にそれは確実になる。” (新騎士号を讃えるテンプル騎士団への書 De Laude Novae Militiae, III-De Militibus Christi)
カリスマ的なフランス人大修道院長、クレルヴォーのベルナルドゥスは、貧乏で文盲の何万人もの農民を、南部ドイツとフランスから動員した。彼のときの声は“天の怒りを急ぎ鎮めよ. . .異教徒に対する勝利を急ぎ、汝の罪を贖え、聖地解放を汝の悔悛の褒賞とせよ. . .剣を血糊で汚さない者は呪われよ。”というものだった。
ベルナルドゥスは、神の恐怖を、農民に植えつけ、生まれながらにして罪を負っているのを償う唯一の方法は、異教徒を虐殺することだと説得した。その途上、彼等は、正教ビザンチンのマヌエル1世コムネノス皇帝から、ローマの為に、ビザンチンを占領すべきなのだ。現在、フランスのルイ7世と、ドイツのコンラート3世という十字軍の王様役を、オランド大統領と、策略に富んだサピン財務大臣と、メルケル首相と、厳しく冷酷なショイブレ財務大臣が演じている。
罪の意識や、個人や国民全員に対して、罪悪感を醸成するのは、教会やひどい政治指導者連中が、国民を操る為に見つけ出した最悪の方法の一つだ。罪の意識は、理不尽な罰の恐怖と化する。ギリシャ国民は実際、彼等には身に覚えのない罪のかどで罰せられているのだ。フランスの銀行家、ゴールドマン・サックスの銀行家のただひとりとて、フランス人IMF専務理事ラガルドとて、危機における役割のかどで投獄されてはいない。2月11日に、ECB債権の担保として、ギリシャ国債の引き取りを停止すると発表してギリシャ危機の現在の段階を引き起こし、バルファキスとツィプラスが国民を裏切るのに利用した危機を引き起こした元ゴールドマン・サックス銀行家のマリオ・ドラギが、英雄のごとく扱われている。
背信行為をしたのは、ギリシャ人有権者達が、更なるトロイカ緊縮政策に、明らかな“ノー”と言った四日後に、トロイカに“イエス”と言ったツィプラスだ。
ギリシャ人は、特にギリシャ政治家やオリガルヒが、彼等をEUに、そして更にEuroに誘い込むまでは、そして今でも、かなりの程度、依然、素晴らしく、温かく、穏和な国民だ。彼等は社交的で、良い仲間と、美しい音楽やダンスを味わいながらの美味しい食事という人生の楽しみを享受する人々だ。そうした良さが、そういうものに脅かされていると感じる連中によって、破壊されつつある。
国内では、ギリシャ・オリガルヒや、バルファキス、ツィプラスや、今のオリガルヒ財務相ユークリッド・ツァカロトス等の、連中の政治的取り巻き連中や、トロイカの背後にいる国外の権益による、ギリシャ国民に対する裏切りという、明らかに長年計画の作戦を通して、ギリシャ国民は、次の回では、懲罰の恐怖という罪悪感のサイクルから、彼等にこういう仕打ちをしたと思える連中に対し報復する意欲を高まらせる方向に移行しようという誘惑にかられよう。そんなことになってはならない。報復は、誰が標的であろうと、常に自己破壊的だ。罪などおかしていないことを自覚し、ギリシャ国民を破壊する犯罪的行為を認識することによってのみ、ギリシャ国民は、善を行い、危機を解決する精神力を見いだせよう。代替策は殺人と自殺だが、我々はそれにはうんざりだ。
F. William Engdahlは戦略リスク・コンサルタント、講師で、プリンストン大学の学位を持っており、石油と地政学に関するベストセラー本の著書で、オンライン誌“New Eastern Outlook”に独占的に寄稿している。
記事原文のurl:http://journal-neo.org/2015/07/16/greek-guilt-and-syriza-perfidy/
----------
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。