http://www.asyura2.com/15/kokusai11/msg/203.html
Tweet |
[地球回覧]インドが中国に並ぶ日
「格好良いだろう。俺のハーレーダビッドソンさ」。インド西部の商都ムンバイ。オートバイの店をのぞくと、スマートフォンで撮影した写真を見せながら、地元の熟年男性が話しかけてきた。1台200万円もする高級バイクだ。外資系金融機関に勤めており、妻と備品を買いに来た。
バンドラ地区にスワロフスキー、ロレックスなど有名ブランドの店が並ぶ。市内には貧しい人々が多く住む地域がいくつもあるが、この一角は別だ。富裕層が高価な品を事もなげに買っていく。どこかで見た光景。そう、2000年代前半の上海や北京と似ている。
中国では02年に英高級車のベントレーが販売拠点を開くと、同ブランドの5千万円前後もする最高価格帯の車が世界で最も多く売れる国になった。当時は一部のぜいたくにすぎないと見られたが、振り返ってみれば富裕層から始まった消費ブームの予兆だった。
消費ブームの裾野が広がり、05年ごろに中国の経済はテークオフ(離陸)期に入った。同国の名目国内総生産(GDP)は05年から10年間で5倍近い10兆ドル強に増え、新車販売も4倍以上の2300万台に達した。そしていま、インドでも同様にテークオフの兆しが点在するようになった。
中国の05年とインドの15年の類似点は多い。インドに関する国際通貨基金(IMF)の予測では、15年の名目GDPは2兆3千億ドル(約280兆円)で、05年の中国と同じ水準に膨らむ。1人当たりGDPは05年の中国をやや上回る1800ドルになりそうだ。
新車販売は15年のインドが前年比5%増の340万台と見込まれる。05年の中国は500万台以上。それでも増加幅では「インドも今後10年間で(中国と同じように)4倍、5倍の拡大が可能だ」と、自動車用ライトの製造大手であるインド企業、ルマックスのビニート・サハニ最高経営責任者(CEO)は強気だ。
ルマックスの工場はムンバイに近い工業都市プネにある。プネにはドイツのダイムラーやフォルクスワーゲンの自動車工場が並び、インドの成長を支える。
国境紛争も抱えるインドと中国は長く、地域のライバルとみなされてきた。人口は中国が13億人、インドが12億人で、それぞれ世界の1位、2位だ。名目GDPでは05年ごろまでインドが中国の4割程度だったが、その後の中国の伸長で5倍以上に差が広がった。
パワーバランスが崩れた結果、中国に対するインドのけん制力は弱まった。中国は多数の欧州諸国の参加も得て新たな国際金融機関であるアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立を主導する。南シナ海での軍事活動を強め、インド洋への進出をうかがい始めた。
インドはBRICS(新興5カ国)の一員として国際社会での影響力拡大を目指す。中国に追いつくには同国が減速している間にテークオフを確実にするしかない。IMFは15年の実質成長率をインドが7.5%で、中国は6.8%と予測する。中印の逆転は99年以来だ。成長率は今後もインドが7%台後半で、中国は6%台前半に減速すると見込んでいる。国連は人口でも20年代後半にインドが中国を上回るとみている。
インドの成長を阻む要素も少なくない。インフラ不足、貧富の差、非効率な国営企業、不透明な行政権限――。だが、同様な欠点は中国を巡っても指摘されてきた。インド経済がかつての中国のように離陸し、両国が肩を並べる日はくるのか。その視点は中国の将来を占ううえでも重要だ。
(ムンバイで、編集委員 村山宏)
[日経新聞7月1日朝刊P.15]
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。