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2015年07月11日
古村治彦です。
今回は中国とロシアの経済協力関係に関する記事をご紹介します。上海協力機構は2001年に作られました。一時期低調でしたが、最近、この枠組みでユーラシア統合が進められようとしています。上海協力機構、ユーラシア経済連合、シルクロード経済ベルト、そしてAIIBが接着剤となれば、EUまでつながります。このうちのどれともつながらない日本は「負け組」にされていくことでしょう。
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中国は全般的な経済協力のための基礎を築いた(China and Russia Lay Foundation for Massive Economic Cooperation)
リード・スタンディッシュ筆
2015年7月10日
『フォーリン・ポリシー』誌
過去10年、中国政府とロシア政府はパートナーと言うよりも競争相手であった。しかし、ロシアと中国の指導者たちは2か国の地域経済プロジェクトを統合することを考えている。その結果、中国とロシアの関係は変化しつつある。それぞれが考えている地域経済プロジェクトは、ロシア側がユーラシア経済連合(Eurasian Economic Union)、中国側がシルクロード経済ベルト(Silk Road Economic Belt)である。
ロシアの都市ウファで上海協力機構(Shanghai Cooperation Organization)の首脳会談が2日にわたって行われた。ロシアのウラジミール・プーティン大統領と中国の習近平国家主席は、中国が計画している中央アジア地域に建設する数十億ドル規模の道路、鉄道、パイプラインのネットワークと、旧ソ連ブロックであるアルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン、ロシアで形成しているユーラシア連合を統合するための枠組みを話し合ったと報道されている。インフラのネットワークとユーラシア連合の合同は、上海協力機構の支援の下で行われることになるだろう。この計画が完成すると、上海からサンクトペテルブルグまでを網羅する支配的な経済主体となる不透明な組織が出現することになるだろう。
カーネギー・モスクワ・センターのアジア太平洋プログラムロシア部長で上級研究員のアレクサンダー・ガブエフは、『フォーリン・ポリシー』誌の取材に対して次のように語った。「経済統合について初めてワーキング・グループが作られた。ユーラシア経済連合とシルクロード経済ベルトの統合は現在のところ実現可能である」。この経済統合計画は、ロシア主導のブロックの規制と中国の大きな経済力を統合することである。中国は中央アジアに既に500億ドル以上を投資している。ユーラシア連合は関税同盟を形成している。これによって中国からヨーロッパまでの製品輸出にかかる輸送費を劇的に削減することが出来るのだ。これは、中国から輸出された製品が1つの統合された関税ゾーンを越えるだけで済むからだ。ガブエフは「この計画には、地政学的と言うよりも、商業的に強力な論理が存在している。」と述べている。
上海協力機構は2001年に中国、ロシア、中央アジア4カ国で創設された。上海協力機構は元々、メンバー諸国の間の広範な争いを解決するために創設されたものだ。この目的は達成された。それ以降、上海協力機構は、経済開発から対テロリズム対策まで、多くの面で協力関係を構築するようになっている。しかし、上海協力機構はある1つの問題について決定的な役割を果たそうと苦闘してきた。
金曜日、ウファに集まった各国の指導者たちはインドとパキスタンから出されていた上海協力機構の正規メンバー申請を受理した。ロシアは、イランに対する国連の経済制裁が解除された後、イランを正規メンバーとしたいとする希望を表明した。グラスゴー大学の中央アジア専門家のルカ・アンセスキは「上海協力機構は中国とロシアのパートナーシップによって再び活力を取り戻している。そして、上海協力機構は急激に重要性を増している」と語っている。
中国とロシアの国営メディアは経済協力計画と上海協力機構を大々的に宣伝し始めている。中国国営の新華社通信はこの経済統合計画を「全ユーラシア大陸の協調と繁栄」の青写真と呼んでいる。ロシアと中国は中央アジアにおける影響力を巡る綱引きを行っていたが、その状況から変化しつつある。
プーティンは自分たちが西洋諸国から孤立していると考えている。そして、ロシア経済は経済制裁と石油価格の下落によって弱体化していると考えている。その結果、ロシアは中国との関係を強化しようとしている。ロシアの東への軸足の移動は、エネルギー取引の形で現れている。昨年、ロシアは中国との間に4兆ドル規模の天然ガス取引合意を取り付けた。今年、ロシアは中国主導のアジアインフラストラクチャ投資銀行(AIIB)に参加した。そして、ロシアはウファでの首脳会談で上海協力機構の下で新しい開発銀行の創設を巡る話をスタートさせた。ロシアは自国の影響力圏における中国の台頭を恐れてこうした提案を以前は拒絶していたが、態度を変更させている。
しかし、こうした新しい状況の下で、ロシアは中央アジアとその他の旧ソ連地域における自国の位置づけを考え直している。アンセスキは「ユーラシア連合はロシアが望んだような成功の姿ではない」と述べている。ユーラシア連合は2015年1月に成立したが、ベラルーシ、カザフスタン、ロシアとの間で貿易に関する争いが発生したことで協力関係は傷つけられた。そして、ロシアはメンバー諸国に対して説明した経済刺激策を実行できないでいる。アンセスキは「ロシア政府は中国からの投資と競い合うことは不可能だし、追いつくことすらできないと分かっている」とも語っている。
ロシアは中央アジア地域における安全保障の提供者としての影響力を維持することを目的としている。ロシアは、軍事基地の設置、軍事同盟、2002年に締結された旧ソ連地域の安全保障ブロックである集団安全保障条約地域(Collective Security Treaty Organization)を通じて地域における影響力を維持している。この形は、中国と中央アジア諸国両方を満足させている。中国は国外に軍隊を駐留させることに懸念を持っているし、中央アジア諸国はロシアの軍事力の存在に慣れている。ガブエフは、「この経済統合の形では、中国が銀行の役割を果たし、ロシアは軍事力を提供することになるだろう」と述べている。
ウファで計画の概要が描かれたようであるが、経済統合合意の実現までにはいくつもの大きな障害が待ち受けている。ロシアの指導者たちの間には中国に対する姿勢に関して分裂があると専門家たちは指摘している。1つのグループは、ロシア政府内の現実主義的なテクノクラートたちだ。彼らは、西洋諸国と仲違いしているロシア経済にとって中国は必要な存在であり、ロシアが中国の経済力に対抗することは不可能であり、中国からの投資を必要としていると考えている。しかし、ロシアの安全保障に関する諸機関は、拡大し続ける中国はロシアの影響力を弱めると懸念を持ち続けている。現在までのところ、現実主義的な人々が論争に勝利しつつあるようだ。
(終わり)
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