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『ニューズウィーク日本版』2015−7・7
P.28
「フィリピンが消せない「内なる中国」の存在
対中路線:領有権をめぐる関係悪化もいずれ回復?
経済発展に欠かせない中国系「チノイ」の影響力
南シナ海の領有権争いが、中国とフィリピンの激しい「舌戦」に発展している。
中国が地図上に引いた「九段線」に基づきスプラトリー(南沙)諸島の埋め立て作業に着手し、フィリピンは南シナ海を「西フィリピン海」と呼び始めている。フィリピンのペニグノ三世・アキノ大統領は6月初めに日本を訪問した際、中国の野心をナチスドイツになぞらえた。駐フィリピン中国大使はこの発言に対し即座に反応。「到底受け入れられるものではない」と強く非難した。
これまでは政治的な意味合いにとどまっていたこの舌戦が、とうとう産業界にも影響。両国関係は最悪なものになっている。アキノの「ナチス」発言直後のこと、中国系フィリピン人商工会議所(FFCCCII)は、両国の国交樹立40周年を祝うために予定していた盛大なイベントを急きょ中止した。
FFCCCIIは、影響力の大きい中国系フィリピン人実業家たちも所属する組織。アンヘル・グ会頭は、中止の原因はアキノの発言だと指摘。祝賀イベントの中止が、現状への「最も分別のある対応」と語った。
任期満了まで1年を切り、アキノ政権内ではナショナリズムの傾向が強まっている。アキノが中国の戦略を第二次大戦に向かう頃のナチスドイツになぞらえたのは、これで2度目だ。グは、この事の政治的レトリックが利益を上回る害をもたらすとみる。
歩み寄る次の大統領候補
なかでも最も影響を受けているのが、中国系フィリピン人の大物実業家たちだろう。フィリピン一の大富豪ヘンリー・シーヤフィリピン航空の大株主ルシオ・タンなどだ。
「チノイ」と呼ばれる中国系フィリピン人が人口に占める割合はわずか1・5%だが、彼らは同国の経済に大きな影響力を持っている。米フォーブス誌が発表した15年版世界富豪番付にリスト入りしたフィリピン人11人のうち、9人がチノイだった。
母国フィリピンと祖先の国である中国が対立している現在の領有権争いについて、彼らはこれまで直接的な発言をしていない。だがフィリピン国内に「中国寄り」の感情を持っている者がいるとすれば、それは彼らのはずだ。
彼らがそうした感情を抱いているとすれば、それは2つの国の文化を受け継いでいるからというより、ビジネスの価値を重視しているからだ。彼らは政治的議論よりも貿易の精神を優先する起業家。しかも中国はフィリピンにとって最大の輸入相手国であり、日米に次ぐ第3位の輸出相手国でもある。
現在は大きな意見の隔たりから対立している両国だが、フィリピン国内には、この緊張がずっと続きはしないという意識もあるようだ。ジュジョマル・ビナイ副大統領やマヌエル・ロハス内務・自治相といった次期大統領の有力候補たちは既に、中国との妥協が可能なだけではなく「必要なこと」だと述べている。ビナイに至ってはさらに踏み込み、資源の共同開発まで提案している。
中国系フィリピン人コミュニティーも、両国の緊張緩和に向けて働き掛けていくだろう。
フィリピンスター紙は最近こう書いた。「中国人は私たちにとつて友人以上の存在。彼らは親族だ」
対中強硬路線を堅持するアキノだが、最終的には中国とのリバランシングを迫られるのかもしれない。
ジャスティン・カルデロン」
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