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アメリカ 中国 経済
厳しい米国人聴衆を誘い込む中国の楽観主義
アリババ創業者が描く輝かしい未来
2015.6.15(月) Financial Times
(2015年6月12日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44029
アリババ、無人機で茶を配送 中国3都市で3日間限定
中国の電子商取引大手アリババ集団の創業者ジャック・マー氏〔AFPBB News〕
6月第2週、中国と米国の長い商業的ダンスが目覚ましい節目を迎えた。電子商取引大手アリババ集団の創業者、ジャック・マー(馬雲)氏がニューヨーク・エコノミック・クラブで講演し、その場を利用して、アリババがあまりに急成長を遂げているため「今年、我々(アリババ)はウォルマートより大きくなる可能性がある」と明かしたのだ。
米国人の聴衆は、予想に反し、恐怖でたじろぐことはなかった。むしろ、マー氏のスピーチを感動的だと喝采した。
なぜか。マー氏はアリババに抱く壮大な野望を説明しながら、世界貿易がいかに、米国人を含むすべての人に輝かしい未来を開き得るかという驚くほどカリスマ的な夢も描いたからだ。
「今から10年後、(中国には)中産階級の人が5億人いる」と同氏は述べた。「(彼らは)米国(製品)に飢えている――我々は、米国の小さな企業が中国へ行き、モノを売るのを手助けする」
単なるPRと一蹴できないスピーチ
PRとしては、スピーチは見事だった。結局のところ、マー氏はできる限り多くの人を説得して、売買のために彼のプラットフォームを利用してもらいたがっており、数年内に、アリババが中国国外から得る売上高の比率を現在の2%から40%へと引き上げることを期待しているからだ。
たとえ企業のPR戦術のように見えたとしても、このスピーチを一蹴してはならない。米議会下院は、バラク・オバマ大統領に環太平洋経済連携協定(TPP)などの通商協定を遂行する権限を与える貿易促進権限(TPA、通称ファストトラック)法案を承認すべきか否かについて採決を行う用意を進めている。
マー氏のスピーチで最も際立ったことは、それが貿易の未来について、強烈に、かつ臆面もなく楽観的だったことだ。
マー氏は、貿易に関するワシントンのトーンの多くが、いかに受け身で否定的な傾向があるかを浮き彫りにした。別の言い方をするなら、もしオバマ氏が――TPPや別の案件に関して――今後数カ月間で貿易を受け入れるメリットについて有権者を説得したいのであれば、マー氏がやったことを参考にするのも悪くないだろう。
少なくとも3つ、留意すべきポイントがある。
3つの教訓
1つは、貿易という考えを米国の聴衆に売り込むためには、世界の中産階級について語る必要があるということだ。
コンサルティング会社のアーンスト・アンド・ヤングの試算によれば、新興国市場には5億人以上の中産階級の消費者がおり、その数は今後20年でさらに30億人増える見込みだという。
シンクタンクのブルッキングス研究所は、世界の中産階級の消費者に占める米国人の割合が2050年に6%になり、現在の18%から低下すると見ている。
また、新興国市場は過去20年間に(工業生産の源として西側諸国と競争することで)供給ショックをもたらしたが、今度は(潜在的に米国製品を買うことで)需要ショックを提供する可能性がある。
2番目のポイントは、貿易は単に製品だけの問題ではないということだ。アリババは製品だけでなくサービスも扱っているため、これを知っている。
だが、オバマ氏や他の米国人がTPPのような協定を「売る」ことを試みた時は、工業製品に焦点を当てることが多かった。製造業の雇用の役割が減退していることを考えると、これは発言に後ろ向きな趣を与える。
ホワイトハウスの報告書が指摘しているように、米国はすでに世界最大のサービス輸出国だ。そうしたサービス輸出は過去34年間で7倍に増え、増加傾向は今後も続く可能性が高い(ただし、大半の有権者はこの事実をほとんど知らない)。
マー氏の3つ目の教訓は、小さな企業について語ることは有益だということだ。小規模企業は現在、輸出部門の多くを占めないが(ブルッキングスの報告書は最近、輸出売上高に占める中規模企業の割合はわずか11%で、小企業の割合はさらに低く、米国の中規模企業の約60%が全く輸出していないと指摘した)、企業が海外でモノやサービスを売るのが容易になれば、かなり大きな成長のポテンシャルがある。
だから、マー氏の宣伝文句には魅力がある。あらゆる種類の米国人起業家(農家を含む)がサイバースペースを通じて商業的な夢をつかめる未来について同氏が語る時、その言葉にはパンチ力があるのだ。
このビジョンには穴がたくさんある。一例を挙げるなら、ワシントンは知的財産法や労働者の権利、為替操作など、マー氏がほとんど触れなかった問題について、延々と議論している。
また、前出の新たな貿易協定はまだ承認されていない。たとえ年内にTPPが承認されたとしても、中国は協定に参加する12カ国の1つではない。貿易障壁は至るところに残る。
日々塗り替えられていく地政学
たとえそうした注意事項があったとしても、重要なポイントは、中国の起業家の大富豪がニューヨークに立ち、その快活な楽観主義において――そして貿易の潜在性は世のためになる力だという観点において――近代の多くの米国人経営者よりも米国人らしく聞こえたということだ。
これは、ワシントンが貿易の議論について混乱し続けている一方で、地政学が日々塗り替えられていることを示す顕著な兆候だ。
By Gillian Tett
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