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OPEC、生産目標を維持
供給過剰解消のめど立たず、イラン・ロシアが波乱要因に
【ウィーン=黄田和宏】原油市場で過剰供給が長期化する懸念が強まっている。石油輸出国機構(OPEC)は5日の総会で生産目標の据え置きを決めた。加盟国は現在、シェア拡大のため目標を上回る原油を供給しており、総会でこれを黙認した。今後はイランの市場復帰の可能性や、増産を続けるロシアなど非加盟国の動向が波乱要因となりかねない。
OPECは5日、ウィーンの本部で年2回の定例の総会を開き、日量3000万バレルとする現在の生産目標を据え置いた。OPECの加盟12カ国は5月も3100万バレル強の原油を生産したとみられ、目標を超過しているが、カタールのアルサダ・エネルギー相は「原油需要は力強さを増している」と、需要増への対応との考えを示した。バドリ事務局長は「(目標は)割り当てではない」と説明した。
生産目標が半ば形骸化するなかで、OPECが直面しているのが新たな供給増への懸念だ。そのひとつが、主要な加盟国であるイランの国際市場への完全復帰だ。6月末を期限とする米欧など6カ国との核開発問題を巡る協議で最終合意に至れば、経済制裁が解除されて石油輸出が可能となる。
イランのザンギャネ石油相は「1カ月以内に日量50万バレル、半年で同100万バレルを増産する」と話しており、供給過剰が強まるおそれがある。「原油価格には影響を与えない」とも説明し、他の加盟国にイラン増産への配慮を求めているが、調整は難航が予想される。
もうひとつの懸念が非加盟国の動向だ。特に、ロシアやブラジルなど経済協力開発機構(OECD)に未加盟の国が足元で生産を増やしている。ロシアの5月の生産量は日量1070万バレルを超え、ソ連崩壊以降で最高水準だった今年1月に迫っている。OPECは生産量の確保を優先するために原油安を容認し、北米のシェールオイルの生産にブレーキをかけた。今度は原油安で財政悪化にあえぐロシアなど他の産油国の増産が新たな脅威となっている。
OPECとロシアは、昨年夏以降の原油価格の下落を受けて、協調体制の構築に向けて意見交換を活発にしている。昨年11月の総会前には、国営石油会社ロスネフチのセチン社長がウィーンを訪れ、加盟国と協議したほか、3日にOPECが開いた国際セミナーではロシアのノバク・エネルギー相がサウジやイランなどと会談した。
OPECとロシアを合わせれば、世界の石油生産の5割程度を占める。減産で協調できれば、価格引き上げに有効とみられているが、歳入確保のために増産を継続するという悪循環から抜け出せない。両者は中国などのアジアでのシェア獲得を巡っても競合関係にあり、互いに譲れない状況に陥っている。
原油市場では当面の供給過剰が解消する見通しが立たず、相場の上値が重くなっている。石油連盟の木村康会長(JXホールディングス会長)は「需給バランスや中東情勢など地政学的リスクに反応しながら当面は現在の水準で推移する」との見通しを示した。
国際指標のひとつ北海ブレント原油は5日の総会終了後、一時上昇に転じたものの、次第に売りがかさみ、1バレル60ドル台と4月中旬以来の安値をつけた。イラクのアブドルマハディ石油相は適正な原油価格は「75〜80ドル」との認識を示しているが、供給過剰に有効な対応策を見いだせないなか、価格の低位安定が長期化する可能性がある。
[日経新聞6月6日朝刊P.6]
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