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日本車、パキスタンで甘い汁
非常識なほど保護されている自動車産業
2015年6月8日(月) The Economist
パキスタンの首都イスラマバードにあるスズキの大型ディーラー店では、顧客が感極まった表情を見せることがしばしばあるという。
「たくさんの顧客が、初めて『メヘラン』を手に入れる時、文字通り涙するんです。というのも、このクルマを買うために、生涯かけてこつこつと貯金してきた人が多いからです」と、同ディーラーの社長、モハムド・アリ・ハーリド氏は話す。
1989年の発売以来、モデルチェンジなし
しかし、パキスタンを走る最も安いクルマの1つであるスズキのメヘランについては、もっと泣くべき要素が多くある。このボックスタイプの珍妙なクルマは、1989年のデビュー以来ほとんど変わっていない。タクシー運転手たちは、工場から直接出荷されたばかりの部品でも、すぐ交換しなければならない、と文句を言っている。
メヘランはこの国で手に入る唯一の小型車であるうえ、手に入れるには何カ月も待たなければならない。ベーシックモデルでも価格は6250ドル(約75万円)と決して安くない。スズキがインドで販売していた同等モデルの「スズキ・マルチ」より約3割も高い。マルチは昨年、インド市場での販売を完全に終了した。
パキスタンの高級車市場も、選択の幅は狭く、価値ある商品は不足している。道路を見渡せば、トヨタ自動車の「カローラ」と、わずかばかりのホンダの「シビック」で混雑している。しかも、クルマはほぼ必ず白と言っていい。
これらのクルマはパキスタン国内で組み立てられたものだが、エアバッグやアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)の標準装備だけでなく、パワーウィンドーすら標準装備とするのに他国に比べ何年も後れを取っている。
市場を日本3社で占領
パキスタンの自動車業界は、スズキ、ホンダ、トヨタのわずか3社の日本企業によって占領されている。3社とも、自動車の輸入部品を扱う地元企業と合弁でクルマを組み立てており、高率関税および様々な複雑怪奇な規制の恩恵に預かっている。これらの政策は本来、パキスタンにおいて「クルマの現地生産」を推進するはずのものだった。
時折、パキスタンの健全な競争推進を担当する競争委員会が騒ぎを起こすことがある。
5年前、同委員会は「(自動車メーカーが)互いに市場の棲み分けをきちんとしている」ため、各社とも「生産台数を増やす代わりに、その数を制限することによって利益を増やす戦略」を採っているとの警告を発した。
競争委員会は昨年も厳しい内容の報告書を発表したが、業界から激しい反発を受けたため、このほど同報告書をウェブサイトから削除することを余儀なくされた。
輸入中古車への規制緩和をけん制
ちなみにパキスタンの人口は1億9000万人にも上るにもかかわらず、年間の自動車生産台数はわずか11万6000台にとどまる。自動車業界は、政府が自動車産業及び自動車市場に少しでも競争をもたらそうと、輸入中古車に関する規制を緩和する計画を導入することを恐れている。
トヨタのパキスタンにおける合弁会社で、クルマの生産および販売を手がけるインダス・モーターのCEO(最高経営責任者)のパルヴェズ・ギアス氏は、「政府は貿易国になりたいのか、それとも国内に生産基盤を構築したいのか、どちらかを決める必要がある」と言う。
しかし、自動車業界が中古車の存在を懸念するとしたら、明らかに何かが間違っている。
© 2015 The Economist Newspaper Limited.
May 9-15, 2015 All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
このコラムについて
The Economist
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