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日本がリビアの二の舞にならないために
ニューズウィークの6・2号の35ページに「地中海の密航船をなくすカギはリビアに」という記事が載っています。「カダフィ政権崩壊後にリビアが陥った混乱は、シリアやイラクの情勢ほど注目されていない。しかし事態は深刻だ。リビアには今、2つの政府がある。1つは国際的に承認された暫定政権だが、首都トリポリを掌握するのはイスラム主義勢力『リビアの夜明け』が樹立した政権だ。暫定政権は北東部の港湾都市トブルクに追い込まれ、イスラム勢力掃討作戦を率いる退役将軍のハリファ・ハフタルが支配力を強めている。加えて、多くの軍閥が全土に割拠。無政府状態に乗じて、テロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)系の組織など過激派も勢力を広げている。こうした状態で密航ブローカーがはびこり、漁船やゴムボートに難民を乗せ、金品を強奪し、肉体的な虐待を加えているのだ。」と書かれています。
リビアからの難民が密航船で地中海に出て、難破したりしているのは事実なので、リビア国内の混乱が相当にひどい状態であるのはこの記事のとおりでしょう。
ただ、上の引用に続いて「ムアマル・カダフィは失脚前の数年間、欧米諸国に友好的な態度を取り、食糧援助などの見返りを得ていた。おかげでヨーロッパへの難民流出を防げた。」と言う記述は明確なウソであり、典型的な情報操作です。
リビアはサウジアラビアなどと同じく原油産出国であり、リビア産の原油は軽質油でとても高品質です。そのため、カダフィが中心となった自由将校団による1969年の革命以来、原油の輸出代金を使って相当な福祉国家となっていたのです。医療や教育はほぼ無料。結婚すれば住居を、就農すれば農地を、国家が無償で用意するという政策が行われていました。
2011年のカダフィ政権に反対する動きが出てきた後、リビア国内から国外へ避難するための海外労働者が空港などに多人数殺到しているところの報道がありましたが、リビア国民は特に働かなくても国家が生活の面倒を見てくれるため、役得のある公務員になれなければそのまま失業することを選ぶということがごく普通に行われていたのです。つまり、額に汗して働くことは海外出稼ぎ労働者に任せ、自国民は国家の原油収入に頼って生きるという環境であったのです。中東産油国の多くはほぼ同じような状況であり、レンティア国家と呼ばれています。中東産油国の中でも、リビア産原油は高品質で高値で輸出が出来たので、カダフィ大佐は、その資金を使って砂漠の緑地化を計画したり、アフリカ諸国の統一機構を作ろうとしていました。
カダフィ大佐は40年以上政権に付いていましたが、その間、なんどか、退任しようとしています。リビア国民が自分に頼り、自立しようとしないからだという理由です。しかし、周囲から頼られ、祭り上げられて、結局政権に付き続けたのです。そして、2011年、唐突に始まったアラブの春で一気に政権を追われ、最後には無残に虐殺されてしまったわけです。
表向き、リビアの革命は、カダフィ大佐の出身地とその他の地域の間の対立が原因であったと言われています。多分、確かに、そういった面はあったでしょうが、決定的な理由は違うはずです。
反体制派の動きが表面化した後、カダフィ政権は空爆を実施します。それが、独裁カダフィ政権が自国民を虐殺していると国際的に報道されたのですが、単にデモをするだけの一般市民に空爆をすることはどんな独裁者もやるはずがありません。明らかに国際的な評判を落とすからです。
911のアメリカ同時テロ後、カダフィ政権が自ら大量破壊兵器の開発を取りやめることを宣言したことから分かるように、カダフィ政権は相当に対外関係に気を使っていたのです。そういった気遣いの原因は、複数回に渡る暗殺やクーデターの未遂があったことや、1986年のアメリカによるリビア空爆でカダフィ大佐は養女を亡くしたこと、1988年の米パンナム機爆破事件(ロッカビー事件)がリビアによるテロだされたことや、それを理由に経済制裁が行われたことなどがあります。特に、ロッカビー事件は明確な証拠、少なくともカダフィ大佐が係ったという証拠は全くなく、実際、1999年から2003年にロッカビー事件の犠牲者にリビア政府が賠償金を支払ったときも、経済制裁を取りやめさせ、国際社会で普通に経済活動をするための挨拶料、「国際社会復帰のためのライセンス料」とされていました。ちなみに、2003年には「リビア政府が補償金総額27億ドル、犠牲者1人当たり1000万ドル(約12億円)の支払いを開始した」ということで、「英国などは、少しでも早く最終段階の支払いにまで持ち込みたくて、かなり焦っている感じすらあるのですが、しかし2001年に、170人分として総額3100万ドルを受け取って落着させたフランスは、英米が1人分1000万ドルという数字で決着したことで不満が爆発し、現在リビアと再交渉中であると伝わっています。」こういった状況ですから、ニューズウィークの記事の「ムアマル・カダフィは失脚前の数年間、欧米諸国に友好的な態度を取り、食糧援助などの見返りを得ていた。おかげでヨーロッパへの難民流出を防げた。」という部分は全く事実とは違う、明らかな情報操作のためのウソ記事、デマ記事であるのです。
では、2011年のアラブの春で、なぜカダフィ政権は空爆をやったのか。理由は多分2つあります。現実に反政府勢力の中に強力な武器を使う勢力がいて、通常の警察活動では対処できなかったこと。そして、政権内部に強硬な手段を取らないとやられてしまうと主張して空爆実施へ誘導する勢力がいたことです。
アフリカの国々での内戦やユーゴスラビアでの内戦、中東諸国での戦争などで、その原因として民族対立、宗派対立、部族対立などが指摘されますが、ほぼそのすべてで以前はごく普通に平和共存が出来ていたのです。つまり、対立を演出し、内戦を誘導する勢力がいたということです。
リビアは第二次大戦前はイタリアの植民地であり、大戦後はフランスとイギリスの委任統治領でした。当然、権力者であるフランス・イギリスの当局者と関係の深い人々が多数国内に存在し、彼らが結局、カダフィ政権打倒に動いたことがリビア混乱の原因です。
当然、こういった人々自身、リビアの混乱がここまでになるとは予測していたはずがなく、2011年の反政府の動きを担った人々の大部分は後悔をしているでしょう。
翻って、日本もアラブの春の時期のリビアと同じような条件が整いつつあります。自分自身の本来の良心に基づいて動くことのできない人々の大量増加です。基本的には終戦時に戦争責任を誤魔化した人々がおおもとに居たのですが、現在は、主に高校入試から始まる入試不正、試験不正に関わった人々が非常に多数存在していて、彼らが全体像を理解しないまま動かされているのです。
マスコミや政府機関が真実を認めず、ウソを公表する状況も常態化しつつあります。日本で軍事革命が行われる可能性はほぼありませんが、それと同等程度の影響がある原発事故や自然災害が起こることは十分にあり得離ることで、リビア同様、今後、国外脱出のために船で朝鮮半島や中国を目指す人々が大量に出るという事態になる可能性はかなりあると思います。
そうさせないためには、少なくとも現状の入試不正・試験不正を止めることが必要ですし、責任を問うことはしないにしても、できれば過去そういった状態が続いていたと言うこともきちんと認めることです。他に何か手があるのでしょうか??
2015年6月6日09時00分 武田信弘
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