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FIFAと米国司法制度との対戦はハーフタイムを迎えたところ(写真はゼップ・プラッター会長)〔AFPBB News〕
FIFAが世界の超大国について教えてくれること 国際組織に対する米国の支配力はなお健在
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43941
2015.6.3 Financial Times JBpress
(2015年6月2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
今は米国の司法制度と国際サッカー連盟(FIFA)の対戦のハーフタイムだ。前半には、米国チームがFIFAの有力選手数人の予想外の逮捕で早々に衝撃的なリードを決めた。だが、FIFAは挑戦的な同点ゴールで反撃に出た。信用をなくしたゼップ・プラッター会長を再選したのだ。
この試合の最終的な結果は、全世界で関心を集める。しかも興味を持つのはサッカーファンだけではない。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はFIFAの幹部らの逮捕を、米国の権力悪用の新たな事例として非難した。
プーチン氏の反応は、FIFAの闘争が国際政治における重要な問題の1つについて非常に目立つテストケースになったことを浮き彫りにしている。
すなわち、米国はまだ国際組織を支配できるだけの力を持っているのか、それとも国際機関に対する世界唯一の超大国の支配力は弱まっているのか、という問題だ。
■システム上重要な国際機関に当てはまる問題
FIFAは、もちろん、ニッチな組織だ。だが、究極の権力はまだ西側にあるのかどうかという疑問は、国際通貨基金(IMF)や国連、国連人権委員会を含むその下部組織など、システム上、FIFAよりずっと重要な国際機関にも当てはまる。
銀行間の国際的な送金を扱うスイフト(国際銀行間通信協会)からインターネットを規制するICANNに至るまで、国際経済体制に配線を提供する非政府組織(NGO)のネットワークでも、これが次第に問題になっている。
先週まで、FIFAは西側の支配から抜け出しつつある国際組織の典型のように見えた。2018年と2022年のサッカー・ワールドカップ(W杯)の誘致レースでは、イングランド、スペイン、オランダ、スペイン、オーストラリアの立候補が退けられ、ロシアとカタールが選ばれた。
西側のメディアは、FIFAの汚職に対する批判に満ちていた。だが、ブラッター氏とその配下の人々は、そうした報道を一蹴した。
チューリッヒでの劇的な逮捕は、この西側の無力感の構図を変えた。これは唯一、米国だけができる、あるいは、することだった。
スイスは独自の捜査に乗り出したが、ワシントンの米連邦捜査局(FBI)から促されることなく、単独で行動したとは考えにくい。
だが、いったい何が、米国がこういうふうに行動するのを許したのか。この米国の力は他の領域にも移転可能なのか。そして、その力は衰えつつあるのか。
■世界経済に欠かせない米国金融システム
米国の力の源泉の1つは、基軸通貨としてのドルの役割〔AFPBB News〕
1つの重要な事実は、世界経済における米国の金融システムの中心性だ。
そして、この中心性は米国に本拠を構える銀行の重要性と卓越した国際準備通貨としてのドルの役割に依存している。
米国がFIFAの事件で当事者資格を持つのは、汚職疑惑の対象となっている取引が米国に拠点を置く銀行を通して行われたためだ。
別の場面では、外国人を米国の網に引きずり込むのは、米国金融システムの直接的な利用だけではない。米国の一部の制裁体制は外国人に対し、米国外においても米国の法律に従うことを強いる。従わなければ、米国の制裁対象となる。
例えば、スイフトはベルギーに本部を置いている。だが、もしスイフトの理事たちがイランに制裁を課す米国の法律に従うことを拒んだら、米国への入国を拒否される恐れがあった。このため、理事たちは協力することを選んだ。
これは、他国がまだ行使することができない類の力だ。
例えば、中国は巨大な市場であり、ダライ・ラマと面会したり、台湾を国家として承認するなど、中国政府が嫌うことをやった国を脅すために市場の力を利用することを厭わない。
だが、人民元は国際通貨ではないし、中国の金融システムに対するアクセスはまだグローバルなビジネスにとって必須ではない。
また、個人に中国渡航を禁じるという脅しは、米国への渡航禁止の可能性が持つ萎縮効果を持たない(先週、89人の欧州連合=EU=市民に対して出されたロシア入国禁止措置について言えば、これを耐えられない強制と見なす人はほとんどいないだろう)。
■中国がドルのユニークな地位を脅かす日は来るか?
中国への入国禁止はまだ、それほど大きな効果を持たない〔AFPBB News〕
この状況は変わり得るか? その可能性はある。だが、それには恐らく、中国の通貨がドルに匹敵する国際準備通貨になる必要があるだろう。
IMFのSDR(特別引き出し権)を構成する通貨バスケットに中国人民元を加えるかどうかについて年内にIMFが下す決断が注視されるのは、このためだ。
このような動きは、人民元を国際準備通貨に変える道に沿った明白な一歩になるだろう。そうなれば今度は究極的に、国際体制におけるドルのユニークな地位、さらにはそれが米国に与える力が脅かされるかもしれない。
米国は、人民元の地位を向上させるIMFの動きに反対するかもしれない。だが、慎重に事を進める必要がある。
中国の通貨はまだ完全な兌換性を持たないという事実に基づく反対は、多分に正当だと見なされるだろう。一方、特権的な地位にしがみつこうとする不当な努力でしかないと見られる反対は、米国を弱体化させる結果になりかねない。
というのは、FIFA騒動の最後の教訓は、米国の力はその市場の規模や軍事力だけに基づいているわけではない、というものだからだ。
米国の司法制度はまだ、オープンで民主的な法治社会のルーツから来る道義的な権威を持っている。
■米国司法制度の信用
米国の制度によって執行される正義は荒っぽく見えることがある。脅しや司法取引の利用を考えると、特にそうだ。
だが、もし米司法省が対処すべき重大な事件があると言ったら、その言葉はまだ世界的な信用を持つ。同じ善意の解釈は、モスクワや北京の検察当局には与えられないだろう。
アジアが西側とのギャップを埋めつつあるように、中国は確かに米国との富の格差を縮めている。だが、誠実であるという米国機関の評判は今も欠かせない無形資産だ。米国にFIFAに立ち向かうことを許したのは、その評判だ。
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