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[ポジション]原油先物に弱気サイン
需給ギャップ埋まらず 米シェール減産に懐疑論
原油先物市場で相場の先行きに弱気な見方が浮上してきた。米国のシェールオイル減産に対する懐疑論が強まり、供給過剰が意識されやすい。国際指標のニューヨークのWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物は今月中旬に5カ月ぶりの高値をつけてから上値が重い。急反発を演出したヘッジファンドなどの短期マネーは買い持ち高をじわり手じまい始めている。
「夏場の需要を見込んでロシア産原油を購入したが買い手がつかない」。欧州系資源商社のトレーダーは首をかしげる。「エスポ」と呼ばれるロシア産原油は6月積みがアジア市場で売れ残り、資源商社は大幅な値引きを迫られているという。
サウジアラビアやイラクが増産を続け、産油国のシェア争いが激化している。6月5日の石油輸出国機構(OPEC)総会でも生産枠は据え置かれる見通しで、1日あたり約150万バレルに達する需給ギャップの解消にメドがついていない。現物のトレーダーからは「先物価格の急反発は現物市場を映していない」との声も聞こえてくる。
WTI原油先物は5月中旬に1バレル60ドルを超え、3月から5割近く値を戻した。現物の供給過剰が長引く中、原油価格を押し上げたのは投資マネーだ。特にヘッジファンドなどの短期マネーは、米国で今年後半からシェールオイルの減産が本格化するとの思惑から買い持ち高を積み上げてきた。
焦点はシェールオイルの減産の行方だ。住友商事グローバルリサーチの高井裕之社長は「年内の大幅な減産は見込みにくい」と指摘する。金融緩和の余剰マネーがシェールの生産業者の資金繰りを支え、破綻件数は増えていない。
生産業者はコストの削減も急いでおり、掘削にかかるコストは過去半年で3割近く減っている。WTIが60〜65ドルで収益を確保できる業者が多く、再び増産を検討する動きも出てきた。
先物市場では来年以降も、原油価格の上値を抑えるサインがともる。WTIで決済期限が2016年末の期先の価格は約61ドルで推移し、3月下旬とほぼ同水準だ。決済期限が近く中心限月となる期近との価格差は3月に10ドルを超えていたが、足元で3ドル台に縮小した。投資マネーが主導して期近物が急反発する一方で期先の上値は重い。
期先価格が上がりにくいのは、生産業者が来年に生産する原油について販売価格を固定するため、先物で売りヘッジを出しているためだ。米シェール大手はWTIが60ドルを超えると、ヘッジ売りを増やす。「60ドルが当面の上値のメド」との見立ての根拠ともなる。
投資マネーそのものにも変化の兆しが見える。WTIでは投機筋の買越残高が5日に昨年7月以来の高水準に積み上がったが、足元で減少に転じた。原油取引を手がけるエレメンツキャピタル(東京・港)の林田貴士・代表取締役は「期近の下落余地が大きいので売り持ち高を増やしている」と打ち明ける。
買い持ち高は相場の上げ局面で価格を押し上げるが、ポジションを解消する手じまい売りが膨らめば急落の引き金になる。足元で膠着が続く原油相場だが、積み上がった買い持ち高は相場の波乱要因になりかねない。
(金子夏樹)
[日経新聞5月30日朝刊P.17]
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