(2015年5月22日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
中国の李克強首相が5月第4週にブラジルに立ち寄った際、李氏とその相手方であるブラジルのジルマ・ルセル大統領は、530億ドル相当の商取引を発表することで強い印象を与えようとした。
だが、このパッケージの多くは、特に経済成長の落ち込みを心配するブラジル国民にとってより魅力的に見えるように温め直された古い発表案件から成っていた。
過去の発表の「温め直し」
例えば、中国がブラジル産牛肉に対する禁輸措置を解除するという素晴らしいニュースを例に取ってみよう。
禁輸措置は「狂牛病」に対する不安から2012年に導入されたもので、中国とブラジルは最初、昨年7月にブラジルの牛肉輸出に対する禁輸解除を示唆した。そして両国は昨年12月にも禁輸解除を発表した。今は、6月までに禁輸措置が完全に解除されると約束している。
ブラジルと中国との関係は本来、21世紀を特徴付ける2国間貿易パートナーシップの1つになる可能性を秘めた、天国で結ばれたような理想の組み合わせであるはずだ。
すでに農業大国であるブラジルは今後数十年間、中国やその他アジア諸国の食料需要の拡大に応えられる可能性のある数少ない国の1つだ。
一方、中南米最大の経済大国であるブラジルは、道路や鉄道、港、空港であれ、電力網であれ、インフラを整備する緊急の必要に迫られている。この点で中国は、インフラの専門知識を持ち、市場を探し求める余剰生産能力があるもう1つの大陸規模の国として、ブラジルを手助けするユニークな位置にいる。
また、中国は貯蓄率が高いが、国内市場を発展させる必要がある一方で、ブラジルはほとんど貯蓄しないが、繁栄する消費者とサービス経済を誇っている。
両国間のシナジーは自明のことだが、それを実現するのは容易ではなかった。合意をまとめたり履行したりすることの難しさは、先日公表された案件に見られるいくつかの悩ましい文言に現れている。
最も曖昧な文言に与えられる賞は、「長期的関係を築くための協力に関する合意」に調印した中国工商銀行(ICBC)とペトロブラスが受賞した。
別の合意では、中国企業2社がブラジルの鉄鉱石輸出業者ヴァーレに輸送サービスを提供するのを「容易にする」ために、中国輸出入銀行がこれらの中国企業2社に融資することを「検討する」覚書を結んだ。
ヴァーレと上記中国企業の1社である中国遠洋運輸集団(コスコ)は鉄鉱石専用船の売却契約についても発表したが、これは両社が昨年9月に最初に明らかにしたものだ。
それほど新しくないその他の発表には、国営石油会社ペトロブラスに対する中国の融資や、ブラジルのエンブラエルの航空機40機に対する中国の発注などがあった。
やはり曖昧だったのが、ブラジルの大西洋岸とぺルーの太平洋側の港をつなぐ鉄道の建設について調査する計画だ。
ブラジル、中国双方がすべきこと
確かに、中国とブラジルが投資を前進させるインセンティブは増大しており、中国企業はある程度ブラジルに食い込んでいる。
中国の送電会社、国家電網がブラジルで強力な存在感を示す一方、中国の石油企業はブラジルの豊富な海底油田鉱区に投資している。
全体として、結果はまちまちだ。ユーラシア・グループによってまとめられたブラジル貿易局の数字によれば、2国間の輸出は2000年のわずか20億ドルから、昨年は780億ドルまで急増した。
だが、ブラジルに対する中国の外国直接投資(FDI)は激しく変動しており、2010年の3億9500万ドルから2013年に1億1000万ドルに減少した後、2014年に8億4000万ドルに跳ね上がった。
両国とも、もっと柔軟になる必要がある。中国は、中国製機器や中国人労働者の利用など、中国がプロジェクトに付けているとアナリストらが言う条件を緩和しなければならない。
ブラジルは、官僚主義を減らし、今なお疑いの目で見ている中国企業を受け入れる必要がある。
ブラジルにとって良い出発点は、多くの人が中国向けの措置だと考えている、5000ヘクタールを超す広大な農地を外国人が購入することを禁止する措置を緩和することかもしれない。
あるいは、輸入部品の比率が高い自動車に対する増税措置を緩和してもいいだろう。これもやはり中国を標的にしていると考えられている措置だ。
そのような対策が取られるまでは、どれだけ多くの古いニュースを温め直しても、大きな可能性が腐るままに放置されている関係を新しく作り変える役には立たない。
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