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中国主導のBRICS銀、総裁人選で揺れたモディ印首相
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投稿者 あっしら 日時 2015 年 5 月 25 日 02:29:04: Mo7ApAlflbQ6s
 


[ASIAの鍵]
中国主導のBRICS銀、総裁人選で揺れたモディ印首相[日経新聞]
2015/5/22 6:30

 日々、その表情を変えながら、ダイナミックに成長し続けるアジア。つっこんだ取材をしているからこそ、注目を集めるニュースの裏に隠れた独特なお国柄が見えてくる。人々の熱い息づかいを、歴史的に抱えている背景を、現地の事情に通じた海外駐在記者が、一歩踏み込んだ視点でわかりやすく伝える。

 国際金融の世界では無名に近いだろう。中国が主導し設立する新たな国際金融機関「新開発銀行」(通称・BRICS銀行)の初代総裁に就く人物は、国際機関に多い財務相や中銀総裁を経験した人物ではない。指名権を持つインド政府が11日に発表した名前は、民間人のK・V・カマート氏。この人選の裏には、モディ首相の深い思惑があった。


■「脱開発金融」事業転換でインド民間銀最大手育てる

 カマート氏は、インド国内の著名な2つの企業の会長として知られる。民間銀最大手ICICI銀行と、IT(情報技術)サービス大手インフォシスだ。取締役会にも出ていたインフォシスは、突如転身が決まったカマート氏の後任探しで大わらわだ。

 カマート氏は1947年、インド南部カルナタカ州で生まれた。一貫してインド国内で教育を受け、大学で機械工学、大学院進学前コース(ディプロマ)では経営学を専攻した。国際金融の世界は欧米の大学で経済学や開発学の博士号を取得した人が多く、カマート氏のような経歴の持ち主は珍しい。

 社会人の第一歩を踏み出したインド産業開発金融投資会社(ICICI、現ICICI銀の旧親会社)で頭角を現し、30歳代にして将来の経営者候補と目された。

 「政府が許可する開発案件の融資は成功の見返りが少なく、失敗した時の代償ばかり大きい。中長期的には成り立たない」。1985年ごろ、唯一の事業だった開発金融からの撤退を当時のトップに進言した。

 この進言がきっかけとなって、ICICIは94年にリテール業務も手掛けるICICI銀を設立し「脱開発金融」へと動き出す。96年に社長兼最高経営責任者(CEO)に就いたカマート氏は、子会社であるICICI銀が親会社のICICIを吸収合併するという荒技も成し遂げ、民間銀最大手という現在の地位を築いた。その胆力や組織運営力は、BRICS銀の設立に役立つだろう。

 皮肉にも、BRICS銀はカマート氏が撤退するよう進言した開発金融を担う国際機関だ。中国、インド、ブラジル、ロシア、南アフリカの5カ国が均等に出資し、15年末か16年に融資を始める。アジアインフラ投資銀行(AIIB)と同じく、有り余る外貨準備を影響力拡大に活用したい中国が主導する。14年7月のBRICS首脳会談では、中国の上海に本店を置き、インドから初代総裁を出すと合意した。

 それでは、インド政府がカマート氏を初代総裁に指名した意図はどこにあるのか。

 実は、カマート氏は88〜96年、ICICIを飛び出してアジア開発銀行(ADB)で勤務していた。民間部門への融資を担当し、インドネシアやフィリピン、中国を飛び回った。今回の総裁指名には、その経験を買われた一面もあるようだ。BRICS銀がADBなど既存の枠組みに対して先鋭的になることを防ごうという意図もあるかもしれない。

 ただ、インド政治に詳しいシンクタンク、オブザーバー・リサーチ財団の名誉研究員マノジ・ジョシ氏は「最後の最後に人選がひっくり返った」と内情を明かす。

 総裁人事はモディ首相とジャイトリー財務相の2人だけで決めたが、直前まで本命だったのは「ヤシュワント・シンハ氏」だった。モディ首相が属す与党、インド人民党(BJP)が政権を担った10年以上前に財務相を務めたことがある党の重鎮だ。

 息子のジャヤント・シンハ氏は、現在財務省の副大臣にあたる財務担当国務相に就いている。ジョシ氏は「ある時点からモディ首相らは、この親子関係が問題を複雑にしかねないと考え始めた」と解説する。「おそらく情報が筒抜けになることを恐れたのだろう」

 ニューデリーにある財務省の情報が、BRICS銀の本店となる上海に漏れることは警戒すべきだろうが、果たして土壇場で人選を再考する理由になるだろうか。親子関係については、以前からわかっていたはずだし、ジャヤント・シンハ氏が現在のポストに就いたのは半年以上も前のことだ。


■隣国のインフラ開発に関与深める中国

 筆者は4月上旬から、「ヤシュワント・シンハ総裁説」の真偽を確かめるため、ジャヤント・シンハ氏側に探りを入れていた。当時は取材への警戒心が漂っており、まだ「ヤシュワント・シンハ総裁案」が残っていたとみられる。首相と財務相が人事見直しを検討し始めたのは4月ごろではないか。

 その間、中国とインドの間では何が起きていたのか。

 まず、インドの隣国スリランカでは、年初の大統領選で親中派から政権を奪ったシリセナ大統領が3月下旬に中国を訪れた。シリセナ氏は中国が軍事利用をもくろんでコロンボで進めた港湾開発を差し止めた当事者だ。だが北京で習近平国家主席に会ったシリセナ氏は、一転して中国の港湾開発再開に前向きな言及をしたという。


 4月中旬には習主席がインドと対立するパキスタンを訪問し、パキスタンを縦断する経済回廊の開発に450億ドルを拠出すると約束した。経済回廊は、パキスタンが実効支配しインドも領有権を主張するカシミール地方を横切る。モディ首相にとって看過することのできない計画だ。

 道路や港湾などインフラは、開発の建前が産業目的であっても、いつでも軍事転用することができる。中国とインドは国境紛争やシーレーン争奪など緊張関係にあり、インフラ開発に関連する情報は機密にもなる。

 「ヤシュワント・シンハ総裁」を土壇場で断念し、民間人のカマート氏に白羽の矢を立てたのは、モディ首相が隣国に対する中国の執着心に神経をとがらせ、情報漏洩への警戒を強めたからと考えてもおかしくないだろう。

 これまでBRICS銀は、国際通貨基金(IMF)や世界銀行といったブレトンウッズ体制に挑戦する新興国の舞台装置と見られてきた。だが、その舞台裏では決して一枚岩にならない中国やインドがせめぎ合っている。初代総裁のカマート氏は、並み居る新興国の雄たちのはざまで孤軍奮闘を余儀なくされるのだろうか。

《視点》中国、出資比率で譲歩 AIIBに重点移す

 中国は、米国中心の金融システムに挑むため「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」と「新開発銀行(通称BRICS銀行)」という2つの国際開発金融機関の創設を積極的に推進した。ただ、もし中国の思惑通りにBRICS銀の準備が運んでいたら、AIIBは必要なかったと言えるかもしれない。インド人の外交専門家はBRICS銀の出資比率を巡る激しい攻防について「当初、中国はBRICS銀に最大規模の出資をしたいと要求したため、インドは決定的な力を握られてしまうと非常に恐れた」と明かす。「覇権争いの取っ組み合い(tussle)だった」との指摘もある。

 BRICS銀は中印とロシア、ブラジル、南アフリカの5カ国が、2012年の首脳会談で創設に基本合意した。授権資本1000億ドル、払込資本500億ドルで、5カ国が均等に出資する。資本市場の流動性不足に備え1000億ドルの「緊急時外貨準備金基金」を設け、中国が410億ドル、南アが50億ドル、残り3カ国が180億ドルずつ出す。中国は出資で主導権を握れなかったが、基金の拠出額を突出させて、上海を本店とする権利を勝ち取ったようだ。

 一方のAIIBは、習近平国家主席が13年のインドネシア訪問中に提案した。BRICS銀の交渉失敗を踏まえ、圧倒的な議決権を握るよう周到に準備したフシがうかがえる。最終的な資本金1000億ドルのうち、アジア域内を750億ドル、域外を250億ドルに分けて、出資比率は国内総生産(GDP)の規模と連動させ、中国が3〜4割の議決権を得る形を整えた。AIIBの準備開始はBRICS銀から1年遅れたが、15年中の運営開始をめざし、BRICS銀の「15年末か16年初め」(中国財政省)より早まる公算が大きい。少しでも影響力を高めたいという中国の姿勢がにじむ。

(ニューデリー=黒沼勇史)


http://www.nikkei.com/article/DGXMZO86980650Z10C15A5000000/

 

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