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5月9日、第2次世界大戦で戦った父親の肖像写真を掲げ、旧ソ連の対ドイツ戦勝70年を記念するモスクワ市内の祝賀行進に参加するウラジミール・プーチン大統領〔AFPBB News〕
ロシア中間層を分裂させるプーチン大統領 忠誠心を問われる究極のテスト、国外へ移住するか、とどまるか・・・
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43863
2015.5.25 Financial Times
(2015年5月22日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
昨年夏、ロシアがウクライナでの戦闘に巻き込まれると、オルガ・タラレイさん(40歳)は長年の勤務先であるエリクソン社内でストックホルムに転勤し、故郷モスクワの政治状況から逃れるチャンスに飛びついた。
「大統領が何をやっても、ロシアではほとんど誰も抗議しません。この先予想できる限り、変化が起きる可能性は全くないと思います」とタラレイさんは言う。
だが、イリーナ・フォミナさん(35歳)にとっては、昨年の出来事は正反対の衝動を呼び覚ました。
香港育ちで複数の外国語を話し、イタリア家具の輸入業者でモスクワ在勤の幹部を務めるフォミナさんは、国外でロシアに対する認識が変わる様子を見て、計画していたオーストラリア移住を延期することにした。
「私は(ロシア大統領のウラジーミル・)プーチンを信頼しているし、彼がロシアのための何らかのビジョンを持っていると思っています」と彼女は言う。「外国へ行って、絶えず自分の信念を擁護しなければならない立場には置かれたくありません」
■国外移住に対する考えが真っ二つ
似たような社会経済的バックグラウンドと学歴を持つタラレイさんとフォミナさんがロシアのイデオロギーの分布の反対側に立ち、自身の将来について相反する見解を持つようになったことは、クリミア併合から1年以上経った今、複雑で次第に激化するロシアの都市部中間層の分裂を浮き彫りにしている。
欧米との関係が悪化し続ける中、統計と経験的な事例は、ロシアを去る人が以前より増えていることを示している。だが、去る人がいる一方で、ロシア愛国主義の新たな波に鼓舞され、国内で経済危機を乗り切ることを選ぶ人もいる。
「昨年プロパガンダで始まった状況と反ウクライナのレトリック、そして何より重要なことにクリミア併合が中間層を分裂させた」。尊敬されているロシアの世論調査機関レバダ・センターのレフ・グドコフ所長はこう語る。「プーチンを支持する人の割合が上昇し、プーチンを支持しない人の割合が低下した」
考えを変えてプーチンを支持するようになった人は、国外へ移住する可能性が低くなった。レバダ・センターが3月に実施した調査によると、移住を希望するロシア人は12%にとどまり、2013年5月の22%から大幅に減少した。
だが、グドコフ氏はこう続ける。
「移住を希望する人がどんな人なのかを見ると、最も教育水準が高く、経済的に最も安定しており、反プーチン感情が最も強いモスクワ出身者であるようだ」
国外移住に対する懸念が高まったのは、昨年、ロシア連邦統計局が2014年1〜8月期に20万3659人以上の人が国を去り、前年同期と比べ70%増えたと発表した後のことだ。
人口動態の専門家は、出国者の急増は実は統計方法の変更に起因していると言う。だが、たとえ全体としては移住したいと考える人が減っているとしても、国外へ移住している人の数が実際に増加している可能性を示す兆候が見られる。
モスクワのロシア国立高等経済学院の人口動態の専門家、ミハイル・デニセンコ氏は、イスラエルの移住統計によると、イスラエルに移住したロシア人の数は2013年がおよそ4000人だったのに対し、昨年はおよそ5000人に上ったと指摘する。
米国への移住を目指すロシア人のためのコンサルティング会社をニューヨークで経営しているユーリ・モーシャ氏は、昨年は同社のロシア人顧客は60人程度だったが、今年は1カ月に最大30人が契約していると言う。
■子供の海外留学は非愛国的か?
「創造的な階級、中間層、2011年にボロトナヤ広場で抗議行動を行った人たちにとっては、ウクライナ戦争とそれに伴う国内事情は、事実上、あらゆる希望がついえたことを示している」。アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のロシア研究部門のトップで自身もロシア系移民であるレオン・アーロン氏はこう指摘する。「内々の個人的な会話では、人々は子供たちについて話している」
教育コンサルティング会社カーファックス・エデュケーションの創業者、アレクサンドル・ニキチッチ氏は、同社の事業で子供たちを外国へ送り込もうとするロシア人家族が増加したと言う。だが、その一方で、非愛国的だと見られるために、子供たちが国外で教育を受けるのを望まなくなった家族も知っているという。中間層の分裂を浮き彫りにした格好だ。
「最近の経済的、政治的展開の結果、子供たちを外国に留学させることを決めたり、ついに自ら移住を決めたりする人は明らかに増加している。だが、世界中のどんな教育でも受けさせる余裕があるのに、家族が子供たちをロシアに帰国させる新たなトレンドもある」
ロシアにとどまった方がいいと感じている家具会社の販売幹部、フォミナさんは言う。
「私は家にプーチンの肖像画を飾っているわけでも何でもないけれど、彼は国のために良いことをたくさんやったと思っています」
彼女の意見はよく英国に住む兄弟との議論に発展することがあり、自分が国外へ引っ越したら、常に守勢に立たされることになると心配している。
今ではストックホルムに住んでいるタラレイさんは、反プーチン陣営に完全に共感しているが、奇妙なことに、フォミナさんの気持ちが分かるという。
タラレイさんによると、彼女はもう「どこから来たのか」という質問に答えたくないという。必然的に「何らかの政治的な会話が始まる」からだ。「みんな聞くんです、『なぜ(クリミアが)起きるのを許したのか』って。そうすると、こう言うわけです。『でも、私には何もできなかったんですよ!』って」
■完全には割り切れない微妙な感情
タラレイさんは今月初め、財界の大物から反体制派に転じ、現在亡命生活を送っているミハイル・ホドルコフスキー氏が外国で立ち上げる計画の新たなロシア反対運動について講演するのを見た。
「ホドルコフスキーはロシア国民が民主主義を受け入れる用意ができており、それが実現すると考えているようです」とタラレイさんは言う。彼女は本来、ホドルコフスキー氏の支持基盤の1人であるべきだが、今のところ納得していない。
「この点については彼に同意できません。けど、もしかしたら彼の方が私より多くのことを知っているのかもしれませんね」。タラレイさんは、さらにこう付け加えた。「モスクワ以外の人々について私が得ている情報は、すべてテレビの情報ですから」
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