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(回答先: 「大戦の結果ロシア領」根拠ない…菅長官が反論(読売新聞) 投稿者 怪傑 日時 2015 年 5 月 21 日 10:04:32)
サンフランシスコ講和条約第二条
(c) 日本国は、千島列島並びに日本国が千九百五年九月五日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。
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日本の戦後処理を規定したサンフランシスコ講和条約及び日ロ平和条約が締結されていない現状を考えれば、菅官房長官が語った「日露間において第2次世界大戦の結果は確定しておらず」という説明は正しい。
そして、これは、戦後アジア地域の国境線問題として現在大きな話題を集めている南シナ海領有権騒動と共通する戦後世界のトゲでもある。
サンフランシスコ講和条約(第二条)によれば、1910年に併合した朝鮮についてのみ朝鮮の独立を規定しており、敗戦により日本が放棄することになった他の領土(台湾・千島列島・西沙群島・新南群島(南沙諸島))については、新たにどの国が領有するのかが画定されないまま現在に至っている。
菅官房長官の論を援用すれば、台湾でさえ、中華民国や中華人民共和国に領有権があるかどうかさえ定かではないのである。
日本政府は、サ条約が発効した時点で中華民国(台湾)政府と日華平和条約(中華人民共和国との平和条約締結により現在は無効)を締結したが、そのなかでも、
「第二条
日本国は、千九百五十一年九月八日にアメリカ合衆国のサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約(以下「サン・フランシスコ条約」という。)第二条に基き、台湾及び澎湖諸島並びに新南群島及び西沙群島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄したことが承認される。」
とうたっているだけで、台湾が新たに中華民国の領有になったことを認めたわけではない。(敗戦国日本が戦勝連合国の内部問題にそれ以上立ち入ることはできない)
当然のことだが、中華民国政府は、この条文が、台湾のみならず、現在大きな係争地域になっている南シナ海の新南群島(南沙諸島)及び西沙群島の自国への領有権移管を意味するものと解釈している。
※ 1978年に締結された日中平和条約には国境線を含む領土領海に関する条文はない。
中華民国の領有権解釈を補強するのが第3条である。
「第三条
日本国及びその国民の財産で台湾及び澎湖諸島にあるもの並びに日本国及びその国民の請求権(債権を含む。)で台湾及び澎湖諸島における中華民国の当局及びその住民に対するものの処理並びに日本国におけるこれらの当局及び住民の財産並びに日本国及びその国民に対するこれらの当局及び住民の請求権(債権を含む。)の処理は、日本国政府と中華民国政府との間の特別取極の主題とする。国民及び住民という語は、この条約で用いるときはいつでも、法人を含む。 」
第2条では領有権を認めたわけではないが、第3条により、日本政府は、台湾に対する中華民国の実効支配=施政権を認めたことになる。
菅官房長官は、「ロシア側の主張に根拠はない。米国も日本の立場を支持しており、北方領土に対する日本の主張を認めていると認識している」と語っているが、日本が主張できるとしたら、“国後島と択捉島は千島列島に含まれない”というレベルである。
米国の主張も、国後・択捉はソ連領と画定したわけではないというレベルであって、両島が千島列島に含まれないというものではない。
北海道の付属島嶼である歯舞色丹諸島はロシアが不法占拠(平和条約締結に向けた保障占領)を続けているが、択捉及び国後について、領有権を放棄した日本がその領有権の行き先についてあれこれ言える立場にはない。
なぜそのようなことをわざわざ言うのかと言えば、国後と択捉に対するソ連(ロシア)“施政権(実効支配)”ないし領有権を認めなければ、国際司法の場に仲裁を申し入れることはできても、正当な施政権さえ持たないロシアとのあいだで北方領土に関する交渉を進めることがきないからである。
菅官房長官は、「領土問題の全面的解決が困難であったために、平和条約の締結交渉を継続することとし、日ソ共同宣言という国際約束が締結された。そういう意味で、日露間で第2次大戦の結果は確定していない」と説明している。
日ロ平和条約が締結されていないことから日露間で第2次大戦の結果は確定していないことは確かだが、日本が千島列島の領有権を放棄したことは確かである。
菅官房長官の論を進めると、連合国(UN)が千島列島の新しい領有権者を画定しない限り、北方領土問題の交渉相手さえ定まらないことになる。
当然のこととして、歯舞色丹諸島は別だが、ロシアが国後択捉を不法占領しているとしても、それは連合国が解決すべき内部問題であり、日本がとやかく言える筋合いのものではない。
このような意味で、領有権はともかく北方領土に関するロシアの施政権を認める方が、領土問題の解決にとっても早道なのである。
決定的なことを言えば、ソ連や中国を除外した“単独講和”のサンフランシスコ講和条約をの締結を是とするにしても、それならなおいっそう、領有権を維持したと考えていた北方領土からソ連の撤退を米英に求め、その実現をもって講和条約締結に臨まなければならかったということである。
※ 参照投稿
「プーチン大統領:クリルの住民は日本との統合に賛成票を投じないだろう:北方領土問題にクリミア問題との類比は無意味」
http://www.asyura2.com/15/senkyo183/msg/400.html
「南シナ海埋め立て合戦 中国への反発強まる:ベトナム・フィリピン・マレーシアのほうが南シナ海係争諸島の造成で先駆」
http://www.asyura2.com/15/kokusai10/msg/695.html
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