http://www.asyura2.com/15/kokusai10/msg/707.html
Tweet |
[FT]インド、中国囲い込みにソフトパワー外交
2015/5/19 14:00日本経済新聞 電子版
インドのモディ首相は今週、遠く離れたモンゴルに足を運び、弓術を試みたり、伝統的な弦楽器を演奏したり、カンタカ(釈迦の愛馬にちなんで名付けられた)と呼ばれる競走馬を贈り物として受け取ったりした。それはなぜなのかと首をかしげる人もいるだろう。端的に言えば、それを解く鍵は「中国」にある。
民族行事に参加したインドのモディ首相(左)に話しかけるモンゴルのサイハンビレグ首相(17日、ウランバートル近郊)=ロイター
中国が米国とその同盟国による封じ込めや囲い込みを恐れるのと同様に、インドも中国の急速な軍事力増強とパキスタン、スリランカ、バングラデシュ、ネパールといったインド周辺国に対する経済的影響力の拡大にいらだっているのだ。
モディ首相は今回、インドの歴代首相として初めてモンゴルを公式訪問した。中国がインドの裏庭で外交を繰り広げているように、この訪問でインドも中国の裏庭で同じことができるということを示そうと試みた。ただ、そのスケールは軍事面でも経済面でも中国の5分の1と控えめだ。
■モディ氏、中国に「意趣返し」
モディ首相が主張するようにインドは(中国とロシアの間に位置する)モンゴルの「3番目の隣国」だったが、モンゴルはインドの「アクト・イースト(東方で行動を)」政策にとっては不可欠な存在だ。モディ首相は軍事面での協力の重要性を強調し、モンゴルを「戦略的パートナー」に昇格させ、モンゴル軍をサイバーセキュリティー面で援護すると申し出ただけでなく、モンゴルを世界で「新たに輝く民主主義の光」と称賛し、それとなくインドと米国に結びつけ、中国をけん制した。
「これは逆封じ込め作戦だ」とニューデリーのインド政策研究センターで戦略研究を教えるブラーマ・チェラニー教授は言う。「モディ氏は習近平国家主席に意趣返しをしている。習氏がモルディブとスリランカを先に訪問し、インドの訪問を後回しにしたのを覚えているだろう」
モディ氏は就任1年目にして予想外にも積極的に外交活動を行っているが、同氏が今月の画期的な中国訪問と組み合わせて、モンゴルや韓国などの他の中国近隣国への訪問を行ったのは偶然ではない。
「韓国もそのゲームの一手だ」とチェラニー氏は言う。「インドは自国だけでは力が限られてしまうので、中国の周辺国と手を組むことで力を増強しようとしている」
モディ氏の外交活動の第1段階は、南アジアの周辺国とのもつれた関係を速やかに再構築し、可能であれば共通の信仰である仏教とヒンズー教(共にインドが起源)を文化的な名刺としてたくみに利用することだった。同氏は1年前にニューデリーで行われた就任式に(中国の反発にもかかわらず、亡命中のチベット仏教指導者を含む)すべての首脳を招いた。また、ヒマラヤのブータン王国を首相としての最初の外遊先に選んだ。
■最も人口の多い国同士の外交争い
同氏は次いでネパール、ミャンマー、モーリシャス、スリランカを訪問した。これらの国へ中国の潜水艦が寄港していることはインドの安全保障体制上の懸念材料だ。また、1月に行われたスリランカでの大統領選挙で、親中のラジャパクサ政権に勝利した連立政権へ(同氏の訪問は)控えめな支援となった。モディ氏は近いうちにダッカに赴き、待ち望まれたバングラデシュとの国境の再設定に関する合意に調印すると見込まれている。同氏の外遊先に入っていないのは、1947年以降インドと唯一敵対し、関係がぎくしゃくしている隣国パキスタンのみだ。
インドの外交戦略の第2段階は世界の大国との関係構築だ。隣国である中国が含まれるのはもちろんのこと、インドと同様に中国の海洋進出や領土拡大の野望を懸念する日本や米国も対象に含まれた。モディ氏がウランバートルとソウルを突如訪問したことから、同氏の外交は既に第3段階に入っていることが分かる。中国の軒先で、世界で最も人口の多い2つの国の外交争いが行われている。
中国の政策立案者は、昨年のインドによるベトナムへの軍艦派遣や、南シナ海における航行の自由を求める米国とインドによる共同声明を苦々しく受け止めた。彼らが、モディ氏が新たにモンゴルの草原地帯の馬や弓矢に強く関心を寄せていることを見落とすはずがない。
By Victor Mallet
(2015年5月19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO86971720Z10C15A5000000/
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。