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英国のEU離脱を引き起こしかねない過ち 国民投票の議論、「戦場」を間違えてはならない
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投稿者 rei 日時 2015 年 5 月 18 日 07:16:49: tW6yLih8JvEfw
 

英国のEU離脱を引き起こしかねない過ち
国民投票の議論、「戦場」を間違えてはならない
2015.5.18(月) Financial Times
(2015年5月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

ユーロ「圏外」を喜ぶべきは英国か?
欧州の地図の上で、ユーロ硬貨に囲まれて立つ英ポンド硬貨〔AFPBB News〕
 近い将来、英国の欧州との関係を表すことになるだろう大騒ぎの中で、デビッド・キャメロン氏率いる保守党内の「Brexit(ブレグジット)」の旗手たちは、貴重な切り札を握っている。

 首相が約束した再交渉の避けられない事実は、キャメロン氏は欧州連合(EU)というクラブの基本ルールを書き替えることはできない、ということだ。

 改革の約束は可能だ。1つか2つの特別協定も、まあ、あり得るだろう。だが、かなりの度合いの主権の奪還は絶対にあり得ない。

 EU懐疑派はこの単純な事実をよく理解している。彼らが、ほとんど無邪気に、自分たちはただ単に国境と福祉政策に関する権限を自国議会に返すよう求めているだけと言う時、それがうかがえる。

 これはEU懐疑派があらゆる取引に用いるテストだ――キャメロン氏がそのテストに落第することを確信してのことだ。

 仮に首相が様々な譲歩を与えられてブリュッセルから戻ったとしても、EUの一連の条約にプールされた主権を取り戻すことはできないのだ。

EU支持派の重大な過ち

 EU支持派もそれを承知しているが、知らないふりをしている。代わりに彼らは、大半の英国民はキャメロン氏が「改革されたEU」と呼ぶものにとどまることを支持しているという世論調査の結果に目を向け、自分たちの考えを明かさずにいる。

 アジャンクールの戦いとワーテルローの戦いでの勝利を記念する節目の年に、政府と結託して大陸諸国に対する新たな大勝利を宣言するのも悪くない、というわけだ。

 この際、ごまかしはさておき――政治が誠実な仕事だと言った人などいないし、いずれにせよ、目的は手段を正当化するのではないか?――、EU支持派は重大な過ちを犯している。

 戦争で何より大切なことは、戦いが行われる場所を選ぶことだ。

 そして改革の取引の価値によって結果が左右される国民投票は、戦いの場所の選択をEU懐疑派に譲り渡すことになる。

EUに対する3つの要求

 英国の要求は、3つのカテゴリーに分けられる。1つ目は、英国がユーロ圏に参加していないことによって不利益を被らないことを保証するよう求めている。つまり、ロンドンのシティ(金融街)に対する安全装置だ。

 2つ目は、EU全体の改革、特に出稼ぎ労働者の諸手当へのアクセスを抑制し、規制緩和を推進し、国民生活の隅々にまで入り込む介入を制限する改革を求めている。

 3つ目は――これまでのところ曖昧だが――、英国例外主義に言及している。1つの考えは、「絶えず緊密化する連合」という明確に定義されていないEUの目標から英国が抜けられるようにすることだ。

 そのような変更の交渉は、難しいが、不可能ではない。東欧の政治家たちは断固として、労働者の移動の自由の原則を擁護するだろう。

英首相携帯にいたずら電話、偽物と気づかず転送
英国のデビッド・キャメロン首相〔AFPBB News〕
 ドイツのヴォルフガング・ショイブレ財務相は英国のジョージ・オズボーン財務相に対し、すでにギリシャの急進左派連合(SYRIZA)政権に伝えたメッセージを送った。

 すなわち、一国の有権者によって与えられた負託は他国を縛るものではない、というメッセージだ。

 だからキャメロン氏は、ユーロ圏の改革に便乗することで条約改正が手に入ると期待すべきではない。

 ドイツのアンゲラ・メルケル首相――キャメロン氏にとって欠かせない対話相手――にも、レッドライン(越えてはならない一線)がある。積み上げられてきたEU法典を元に戻すことはできない、というものだ。

 しかし、すべての関係者が国内の政治聴衆者を意識して振る舞うために協議は大荒れになり、紛糾するだろうが、英国のパートナー諸国は合意に至ることに大きな利益を持っている。

 欧州が世界で経済的、政治的影響力を行使する限りにおいて、その地位はユーロ圏危機によってすでに大きく低下している。

 中国やインド、ブラジル、あるいは米国は、最も強力な加盟国の1つを失った連合をどう思うだろうか? 

 英国は、どれほど罵られていようと、EUに重要性を与えているのだ。

 だが、こうした状況はどれも、国民投票に関する枝葉末節な議論だ。キャメロン氏が1点稼ぐたびに、懐疑派は、議会はまだローマ条約に縛られていると反論するだろう。

 EUにとどまることに英国が賛成票を投じるのであれば、議論は改革の外見を繕うことではなく、EUと関与することの本質的なメリットを巡って行われなければならない。

EU加盟こそが英国の国益にかなう

 簡単に言えば、あらゆる介入や苛立ちにもかかわらず、英国の利己的な国益は、EUの一員であることによって最大限に満たされるということだ。

 経済であれ、貿易であれ、安全保障や外交政策であれ――そして、そう、移民問題であっても――、EUは国力を削ぐものではなく、それを何倍にもしてくれるものだ。

 この点で、EU支持派は、比較的大きな国でさえ、各国が互いに密接に関連しながら競争している世界では限られた影響力しか持てないという明白な事実以外にも、攻撃材料をたくさん持っている。その証拠は、前議会の任期中に、保守党主導政権によって集められた。

 「Balance of Competences(能力の均衡)」と題した調査報告書は、もともと、保守党内のEU懐疑派によって、EUの受け入れ難い国民生活への介入を証明する手立てだとして考えられたものだ。

 ところが、ふたを開けてみると、圧倒的な証拠によって、その偏見が打ち砕かれた。3ダース近い詳細な分析が、国の安全保障と繁栄はEU内の緊密な協力から切り離すことができないと結論付けたのだ。EUから離脱すれば、英国は弱くなり、安全が低下し、貧しくなる。

 この重大な論拠には、もう1つ利点がある。それは、EU加盟に代わる代替案として何を提示するのか、懐疑派に求めることだ。

 単一市場にアクセスする必要性から、EUの規則や規定を策定する際の発言権を持たずに、それらをすべて実施せざる得ないEU非加盟国として、ノルウェーやスイスの仲間になりたいと彼らは本当に思っているのだろうか? 

 それとも、紺碧の海で溺れ死ぬ方がましだと思っているのだろうか?

サッチャーは知っていた

 改革を求めるキャメロン氏の運動を応援することに害はない。賢明な改革もあれば、馬鹿げた改革もある。だが、EUを支持する根拠は、これまでと全く変わらない。英国は、自国が存在する大陸で孤立するわけにはいかないのだ。

 マーガレット・サッチャーは、保守党党首として、1975年の国民投票で賛成票を支持した時、そのことを理解していた。そして、こう言った。

 「我々は欧州の密接不可分な一部である・・・(誰も)我々を『欧州から連れ出す』ことは決してできない。なぜなら、欧州は我々がいるところであり、これまでずっといたところだからだ」

By Philip Stephens
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43807
 

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