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米国支配層は、“政治的仲介者”としてアジアで大きなポジションを維持するため、対立の要素を際立たせることで、日中関係を筆頭にアジア諸国が政治的にまとまることをできるだけ先延ばしにしたいと考えている。
南シナ海における中国の埋め立て造成や滑走路・港などの建設にあれこれ口を出しているのも、ASEANと中国の政治的関係をぎくしゃくした状態に置きたいからである。
転載する記事にも「そもそも引き金を引いたのは中国」とあるように、日本の政府やメディアは“なんでも中国が悪い”という見方を国民に押しつける傾向があるが、南シナ海領有権問題の発端は、南方地域での拡張に動いた大日本帝国が南シナ海の多くの島々について領有を宣言し台湾・高雄の行政区域に組み入れたことにあるとも言える。
日本は、サンフランシスコ講和条約で南シナ海諸島の領有権を放棄させられたが、それぞれの島の領有権をどの国が引き継ぐかは国際的に曖昧なまま(未確定のまま)推移してきた。
(東南アジア諸国の多くが戦後もしばらくにあいだ欧米の植民地状態にあったことも領有権の画定を遅らせた一因)
そのため、国共内戦に敗れ“高雄”がある台湾のみを領有するかたちになった中華民国、独立と統一を果たしたベトナム、南シナ海の西側を占め米国から独立を果たしたフィリピン、英国から独立しボルネオを領有するマレーシア、そして、台湾を一体の領土と考える中華人民共和国が、歴史的経緯を楯に、それぞれ領有権を主張する複雑な様相を呈するようになった。
台頭著しい中国の実効支配強化に向けた最近の動きはすさまじいものがあるとしても、領有権係争の島に構造物をつくった最初の国はベトナムであり、他の国々も次に示すように実効支配を強化してきたいきさつがある。
ベトナム:1975年にフィリピンから奪い取ったサウスウエストケイに埠頭と建造物を建設(ベトナムはスプラトリー諸島の29の島と環礁を占有)
マレーシア:1983年に占領したスワロー礁を埋め立て海軍の拠点を設営
台湾:1995年に占有したスプラトリー諸島のなかで最大の島タイピン島にレーダー基地を建設し守備隊を派遣:2008年に滑走路を完成
フィリピン:スプラトリー諸島の10の島及び環礁を実効支配し、バグアサ島に滑走路と飛行場を建設、今後埠頭も建設する予定
領土・領海に関する問題はどの国のどんな政治家であっても“鬼門”であり、一ミリでも譲歩する素振りを見せたとたん政治的地位を失いかねないほどの難題である。
(朴正煕大統領が石原慎太郎氏に竹島が爆破されなくなったらスッキリすると語ったそうだが、領土をめぐる係争はそれくらい重くやっかいな外交問題である)
尖閣諸島問題をそうだが、どの国の政治指導者もお互いの政治的実情はわかっているから、南シナ海の両領有権問題は、主張を激しくぶつけ合いながらも、どこかの時点の現状を“固定化”して落ち着かせていくしかないだろう。
ベトナムは中国との間で問題棚上げ(現状固定)の方向で動いているし、国際仲裁裁判所に提訴したフィリピンも、中国と争っても勝ち目がないことを国民に理解してもらうような情報を時として流している。
尖閣諸島問題でわかるように領有権についてはどの国の側にも立たない米国は、詰まるところ、紛争を抑え安全な自由航行を保証する南シナ海共同行動綱領の策定を求めているのであり、日本も、南シナ海領有権問題でどこかの国の主張に与するような動きを見せてはならない。どこの国が実効支配をしていようとも、安全な自由航行を確保する責務があるという対応に徹すべきである。
※ 参考
サンフランシスコ講和条約
第二条
(f) 日本国は、新南群島及び西沙群島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。
(新南群島がほぼ南沙諸島に該当)
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南シナ海埋め立て合戦 中国への反発強まる
ベトナム、軍事施設を新設/フィリピン、滑走路を改修へ
【北京=島田学】中国とフィリピン、ベトナムなどが領有権を争う南シナ海で、各国が埋め立てや建造物の建設を競い始めた。環礁を埋め立て、滑走路などの建設を着々と進める中国に、ベトナムなどが対抗する構図だ。南シナ海では資源探査を巡って摩擦が続いてきた。互いに実効支配の既成事実化を狙った“埋め立て合戦”の色合いが強まれば、対立が一段と深刻になる恐れがある。
■工事の正当性を強調 「我々には南シナ海の主権を証明する十分な法的、歴史的根拠がある」。米戦略国際問題研究所(CSIS)が最近、ベトナムによる南シナ海の岩礁埋め立てを示す衛星写真を公表したのを受けて、ベトナム外務省のレ・ハイ・ビン報道官は工事の正当性を強調した。
CSISの写真からは、ベトナムが南シナ海の南沙(英語名・スプラトリー)諸島の2カ所で埋め立て工事を進め、塹壕(ざんごう)や銃座などの軍事施設を新設したことが分かるという。
ベトナム政府筋は「埋め立ては長年続けてきたもの」と中国への対抗措置との見方を否定するものの、レ・ハイ・ビン報道官は「中国こそ直ちに埋め立てを中止すべきだ」と警告した。
中国への反発はフィリピンでも強まる。「自国領の一部だという事実を示すために訪れた」。フィリピン軍のカターパン参謀総長は11日、南沙諸島で実効支配するパグアサ島(中国名・中業島)を訪れ、駐留部隊などを視察した。比軍は1970年代から同島に滑走路を保有しているが、ここにきて老朽化した滑走路の改修を計画する。
比軍は対中けん制のため日米との連携も強める。4月に実施した米軍との合同演習は、人員規模を例年の2倍に増強。12日に始まった日本の海上自衛隊との共同訓練も比軍側から要請した。
■実効支配巡る反発の連鎖 反発は新たな反発を生む。中国外務省の華春瑩副報道局長は12日の記者会見で「挑発的だ。中国の南沙諸島を不法に占拠するのをやめ、あらゆる施設を撤去すべきだ」と比軍を強く非難した。
ただ、そもそも引き金を引いたのは中国だ。南沙諸島で実効支配する7つすべての環礁で構造物をつくり、2014年後半から一斉に大規模な埋め立て工事を始めた。小さな環礁だった永暑礁(英語名・ファイアリークロス礁)は埋め立て地の拡大で、南シナ海最大の面積を誇る「永暑島」に変わった。
米国防総省が8日発表した中国の軍事力に関する年次報告書によると、14年末に約2平方キロメートルだった中国の南沙諸島での埋め立て地は、今では4倍の約8平方キロメートルにまで広がったという。
中国は永暑島で長さ約3キロメートルに及ぶ滑走路を建設中だ。将来は「南シナ海の不沈空母」(中国メディア)として軍事利用するとみられる。もっとも中国海軍トップの呉勝利司令官は4月末の米海軍のグリナート作戦部長との協議で、南シナ海で建設中の施設はいずれも海難救助や防災、漁業調査などの民生目的だと強調。「将来的には米国などが利用することも歓迎する」と挑発まがいの発言まで飛び出した。
危機感を強める東南アジア諸国連合(ASEAN)は、4月末の首脳会議で中国の埋め立て強行に「信頼を傷つけ、平和や安定を損ねかねない」と異例な強い調子の議長声明を採択した。8月にマレーシアで開くASEAN地域フォーラム(ARF)でも主要議題となる見通しだ。
経済外交ではアジアインフラ投資銀行(AIIB)創設など周辺国との協調を訴える中国だが、安全保障面で強硬姿勢を続ければ、周辺国との信頼醸成はままならない。
[日経新聞5月13日朝刊P.6]
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