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キャメロンの「リトルイングランド」は虚構
英国総選挙後の懐疑論が間違っている理由
2015.5.15(金) Financial Times
(2015年5月12日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
英首相、全国で地方分権推進を約束、スコットランド独立否決
5月7日の総選挙で予想外の決定的勝利を収めたデビッド・キャメロン首相〔AFPBB News〕
アンゲラ・メルケル氏が2013年に再選された時、世界は同氏の成功をドイツで物事がうまく行っている兆候だと見なした。だが、先週の英国総選挙でのデビッド・キャメロン氏の決定的勝利は、海外でそれよりずっと懐疑的な報道をされている。
米ワシントン・ポストの見出しは「選挙は英国をリトルイングランドになる道へ導くかもしれない」と宣言した。
米ニューヨーク・タイムズのあるコラムニストはさらに上を行き、「英国の自殺」と書いた。
一方、多くのヨーロッパ人は、新キャメロン政権が確実に英国が欧州連合(EU)を離脱すべきかどうかを問う国民投票を実施することになったことに唖然とし、腹を立てている。そしてスコットランド国民党(SNP)の躍進と、それが英国の結束に与える潜在的な影響は全世界で注目を集めている。
あるインド人アナリストはとがめるように、「国が分裂の瀬戸際にある時に、なんで英国はまだ自国が大国だなどと主張できるのか?」と筆者にこぼした。
英国のEU離脱とスコットランドの英国離脱
英国左派の一部はこの幻滅感を共有しており、選挙での自分たちサイドの敗北を深刻な国家的病の確かな兆候と解釈している。英国の総選挙は深刻な問題を抱えた国を露見させたという議論を展開するのは容易だ。だが、この議論は間違ってもいる。
もちろん、英国のEU離脱(Brexit)とスコットランドの英国離脱(Scexit?)はどちらも起こり得る。
しかし、今から5年後、この新政権が任期を終える時に、英国という連合王国がまだ1つのまとまった国であり、まだEU加盟国である可能性の方がずっと高い。また、英国は世界で最も外向的な国の1つであり続けるだろうし、西側諸国で屈指の高成長を維持している公算が大きい。
キャメロン氏がコミットしたEU離脱の是非を問う国民投票は間違いなく壮大な賭けであり、主に自党を宥めるために打って出た賭けだ。英国のEU加盟条件の再交渉は、政府がEU残留キャンペーンを展開できるようにする隠れ蓑以上のものは生まないだろう。
確率が非常に高いのは、英国人が国民投票でEU残留を選ぶことだ。過去1カ月でこの問題に関する世論調査が4回行われており、すべての調査でEU加盟国であり続けることに賛成する意見が大多数を占めた。
もちろん、再交渉の複雑なプロセスやユーロ圏のさらなる混乱、国民投票のキャンペーン自体が考えを一変させる可能性はある。一部のアナリストは、近年、EUに関する国民投票はフランス、アイルランド、オランダなどで予想外に否決されたと指摘する。
しかし、これらはすべて欧州の条約改正に関する決断であり、抗議票のリスクが限られていた。ブレグジットはそれよりはるかに根本的な選択肢であり、英国民は恐らくそのリスクを取らないだろう。
もし英国民がEU残留に票を投じたら、SNPが引くかもしれない潜在的な引き金を取り除くことになる。つまり、スコットランド独立の是非を問う2回目の住民投票の要求だ。
SNP躍進の本質
スコットランドに割り当てられた59議席のうち3議席を除くすべてをSNPが獲得した先週の総選挙の結果は、圧倒的な独立支持の気運の印象を与えた。だが、今回の選挙でさえ、実際にSNPに投票したスコットランド人は半数程度だった。
総選挙で民族主義的な心情を表現することは、リスクなしで感情を表出する方法だ。独立に賛成票を投じることは、まるで別の問題となる。再び、通貨同盟と税収に関する難しい問題を投げかけるからだ。
独立国家スコットランドを是とする経済的な根拠は、実際、原油価格の急落に伴い、この1年で大打撃を受けた。スコットランド人がもし独立に賛成票を投じるよう求められた時には、そうした面倒な検討事項が再び焦点となる。また今後5年間で、すべての主要政党がやがて反対勢力を生み出すため、SNPの輝きがある程度失われるだろう。
1つ、英国に関する外国の正当な懸念は、たとえ実際に分裂しなくても、英国は国家的アイデンティティーや憲法、緊縮経済に関する難問に取り組む中で強烈な内省の時期を経験する、というものだ。
キャメロン氏の英国は国際的な政治の舞台における脇役だというワシントンで一般的な見方は、反論するのが難しい。
2013年に英下院がシリアでの軍事行動を否決した議決はいよいよ、英国が保安官代理のバッジを返上し、世界の警察の役目を米国だけに任せることを決意した瞬間に思える。
イラクとアフガニスタンにおける戦争は外国の戦争に対する英国の意思を弱らせ、これは防衛予算の削減に反映されている。
しかし、中東に爆弾を落とす意欲は国際主義の唯一の尺度ではない。そしてキャメロン氏の英国は活気のない狭苦しい小国イングランドになるという考えは全く見当違いだ。
世界一グローバルな都市ロンドン
英ロンドンの名物ビル「ガーキン」、破産管理下に
ロンドン住民の37%は外国生まれ〔AFPBB News〕
ロンドンは今、恐らく世界で最もグローバルな都市だ。住民の約37%は海外で生まれている。そして金融、輸送、文化、観光、その他多くの産業の中心地だ。
ロンドンは類稀な都市ではあるが、依然、英国は全体として本能的に貿易国であり、人と資本を世界中から引き付ける磁石だ。
政治は国を内向きにさせるのかもしれない。しかし、それ以上に強力な社会的、技術的、人口動態的、経済的な力が、キャメロン氏の英国を今後もグローバル化の最前線に置くだろう。
By Gideon Rachman
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43788
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