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ロシアと中国:気まずい友人関係
2015.5.14(木) The Economist
(英エコノミスト誌 2015年5月8日号)
ウクライナ危機はロシアを中国に接近させている。だが、両国の関係は対等とはほど遠い。
対ドイツ戦勝70年記念の大規模軍事パレード、ロシア
5月9日、ロシア・モスクワの「赤の広場」で、第2次世界大戦の対ドイツ戦勝記念日に、70年記念軍事パレードに出席するウラジーミル・プーチン大統領と習近平国家主席〔AFPBB News〕
70年前のナチスドイツ降伏を記念する5月9日のモスクワでの戦勝式典は、今日の地政学について多くのことを物語る。ロシアのウクライナ侵略(および第2次世界大戦後初の欧州での主権領土の併合)に抗議して西側の指導者が欠席する中、中国の習近平国家主席は、友人であるウラジーミル・プーチン氏の主賓になった。
ウクライナを巡る西側の制裁や、確実視される欧米との関係の長期的な冷え込みによって、ロシアには、中国をできるだけしっかりと抱え込むこと以外に選択肢がなくなっている。
拡大する戦略的パートナーシップ
両国の戦略的パートナーシップ拡大の象徴はまだある。5月第3週には、中国の海軍艦艇3〜4隻とロシアの海軍艦艇6隻が集まり、東地中海で実弾演習を行う。2013年以降太平洋で数回行われた同様の演習に続く今回の演習は、米国とその同盟国に明確なメッセージを送ることを狙っている。
ロシアにとっては、この演習は、自国に強い友人と地理的範囲が拡大する軍事関係があることを示すものだ。一方、中国にとっては、この種の小規模な演習でさえ(中国の艦艇はアデン湾での海賊対策任務から振り向けられる)、「強軍の夢」を含むと習氏が言う「中国の夢」に関するスローガンに沿ったグローバルな野心の高まりを物語る。
より実際的なレベルでは、今回の演習は、中国がロシアに売り込みたいと思っているミサイル誘導可能な「054A」型フリゲートのためのショーウィンドウを提供する。
また、中国が経済的プレゼンスを拡大している不安定な地域での作戦経験も提供する。中国は2011年、リビアが混乱した時期に同国から3万8000人超の中国人を避難させる作戦を実施した。先月には中国海軍が、内戦によって引き裂かれているイエメンから数百人の中国市民を脱出させた。
アルジェリアでは少なくとも4万人、アフリカ全土では100万人を超える中国人が働いていると考えられている。
中国とロシアの関係は、冷戦終結以降、緊密さを増してきている。両国とも、異なる理由で米国の「ヘゲモニー(覇権)」に憤慨しており、より多極的な世界秩序を望む気持ちを共有している。
衰退する大国のロシアは、少なくとも失った地位の一部を取り戻す方法を探している。
一方、台頭する大国の中国は、中国を抑制しようとする米国の試みと見なすものに対して反感を抱いている。
ともに独裁的な政権を持つ国連安全保障理事会の常任理事国として、ロシアと中国は西側のリベラルな干渉主義をけなすことに共通の利害を見いだしている。
両国は2008年、ロシアが演出したグルジアでの戦争のわずか1カ月前に、長年にわたる国境紛争をすべて解決した。ロシアはこの取り決めを、北大西洋条約機構(NATO)のさらなる拡大に対する抑止力として、より多くの軍事力をロシア西部に集中させる手段と見なしていた。
中国の技術盗用で緊張も
だが、時折緊張はあった。ロシアは1990年代、中国の軍事力近代化を支援するうえで重要な役割を果たした。ロシアはおかげで、さもなくば国内での受注不足から衰退していただろう軍需産業の基盤を守ることができた。
だが、2000年代半ば以降、自国の軍事技術を中国に盗まれ、その結果、兵器市場で中国がライバルとして台頭したことに苛立ち、ロシアの対中武器売却は減速している。
ロシアは、中国の産業マシンに対する天然資源のサプライヤーに過ぎない存在――最近まで中国を後進国と見なしていた国にとっては屈辱的な立場――になることも警戒している。
ロシアは、自国経済を成長させ続けるのに必要なだけのガスをすべて欧州に販売できる間は、中国との取引を保留することができた。そうした取引の1つが、2006年に発表され、両国が価格を巡って口論になったためにその後密かに取り下げられた、シベリアから中国へ至る2本のガスパイプラインの計画だ。
アジアへの「ピボット」を余儀なくされるロシア
ところが、そうした状況が一変した。ロシアメディアの言葉を借りれば、ウクライナ危機によって、ロシアは代替的な市場と資金源を見つけることで西側の制裁の影響を弱めることを目指し、自国経済をアジアに「ピボット」することを余儀なくされている。
中国にとっては、これは有利な価格でロシアの天然資源への大きなアクセスを手に入れる絶好のチャンスだ。
また、西側の競争企業に取られていたかもしれない大型インフラ契約へのアクセスを確保し、中国企業の利益になるプロジェクトに資金を提供する千載一遇のチャンスでもある。
理論的には、ロシアのウクライナ侵略とクリミア占領は、中国が最も一貫して保持している2つの外交政策の教義に反している。すなわち、他国への不干渉とあらゆる種類の分離主義の否定だ。だが、中国はロシアを非難する国連安保理決議で投票を棄権する一方、中国のメディアはロシアに強い支持を与えた。
中国は、米国が宣言したアジアへの「リバランス」から米国の気をそらせるかもしれない欧州での新たな冷戦を密かに歓迎した。
有利に交渉進める中国
中ロの新たな緊密さを示す特筆すべき証拠は、昨年5月に調印された4000億ドルのガス契約だ。この契約では、ロシアが2018年から30年間、中国に年間38BCM (10億立方メートル)のガスを供給することになっている。
中国の強い主張に応じ、ガスは東シベリアの新たなガス田から、まだ建設されていないパイプラインを通って供給される――他国へ流用されないことを確実にするための手段だ。
他の契約も後に続いた。最大のものは11月に調印された仮契約で、この契約では、ロシアがさらに年間30BCMのガスを提案された西シベリアからのパイプラインを通じて売る。どの場合でも、恐らく中国は、価格面で自国に有利に交渉できただろう。
中国へのハイテク武器輸出を再開するという最近のロシアの決定でも、ロシアの弱みは明らかだった。ロシアは4月、中国に防空システム「S-400」を約30億ドルで売却することに合意した。このシステムは台湾や尖閣諸島(この島嶼に対する日本の領有権主張に異議を唱える中国にとっては釣魚島)に対する空の優位性を中国に与える助けになるだろう。
ロシアは昨年11月、中国に最新鋭戦闘機「スホイ35S」を売却する用意があると述べた。ロシアは当初、中国が必ず設計を盗むことで被ると思われる損害を穴埋めするために、48機より少ない数の売却を拒んでいた。ところが、ここへ来て、24機だけ売ることにおとなしく同意した。
行く手に待ち受ける問題
だが、前途に控える問題が認識できる。1つは、両国がかつてロシアの裏庭だった中央アジアで影響力を競い合うことだ(習氏はモスクワに向かう前に中央アジアに立ち寄った)。
プーチン氏は、中央アジアで拡大する中国の経済力に対抗する意図もあって、ユーラシア経済連合(EEU)を確立したいと思っている。中国は、その中央アジアを通ってシルクロード経済ベルトと呼ぶものを発展させたいと思っている。
また、中国は、この地域で安全保障関係を強化するために、ロシアや中央アジア諸国もメンバーになっている上海協力機構(SCO)を利用している。SCOのパートナー諸国としばしばテロ対策訓練を実施している。
もう1つの困難は、ともに中国のライバルであるインドやベトナムといった国々とロシアの軍事、エネルギー面でのつながりだ。
だが、最大の問題は、中国との関係でますます従属的な役割へと追い込まれることに対するロシアの苛立ちかもしれない。ロシアにとっては、中国とのパートナーシップは痛切に必要なものになった。中国にとっては、あれば便利だが、決して不可欠なものではないのだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43774
#WSJに続きEconomistでも
- ロシアが中国に供給するガスは当初50億立方メートルで最終的には380億立方メートル あっしら 2015/5/14 18:30:46
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