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欧州にとってキャメロン首相の勝利が意味すること
誰も予想できない国民投票の結果
2015.5.12(火) Financial Times
(2015年5月11日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
英総選挙、保守党が単独過半数で勝利 キャメロン首相続投
世論調査の予想を覆し、単独過半数を獲得した保守党のデビッド・キャメロン首相と夫人〔AFPBB News〕
英国の世論調査会社が前回これほど予想を大きく誤ったのは1992年だった。ジョン・メージャー氏の勝利は欧州の惨事の前兆だった。その数カ月後、英国が欧州為替相場メカニズム(ERM)から脱退したのだ。
それから23年を経た今回の選挙の衝撃は、英国の欧州連合(EU)脱退という新たな欧州危機の前触れとなるのだろうか。
先週の総選挙で2017年までにEU加盟継続の是非を問う国民投票を公約しているデビッド・キャメロン首相が勝利を収めたことについて、欧州の観点から、筆者は4つの結果を見て取れる。
1つ目は、国民投票までの長引く不確実性だ。英国のEU加盟を支持する向きは、自分たちの意見が多数派であることを示す世論調査に慰めを見いだしている。自分で自分をだましてはいけない。こんなに早い段階で国民投票の結果を予想できる人は誰もいない。それに、先週の出来事の後で、一体誰が世論調査を信頼するのか?
難航が予想される交渉
それよりも、政治的な力学に目を向けた方が有益だ。ここに見て取れるのは、復活したスコットランド民族主義と、それに対して生じ得るイングランドの反動だ。これはEUの大義のためにならない組み合わせである。
キャメロン氏はもう連立相手と立場を調整する必要がなくなったかもしれないが、同氏はぎりぎり過半数を確保した程度で、保守党内のEU懐疑派の立場が強くなる可能性がある。
これが第2の結果につながる。交渉は簡単には済まないということだ。一連の交渉は現在のEUとギリシャの交渉にも増してアクシデントに見舞われやすい可能性がある。
キャメロン氏は7つの提案を行っている。EU域内の移住の抑制、他のEU加盟国からの「ベネフィット・ツーリスト(失業手当など福祉目当ての移住者)」への給付を停止する権利、EUから各国議会への一部権限の返還などだ。その一部には、いずれEU条約の改正が必要になるだろう。
キャメロン氏はEU域内からの移住者への給付制限に関しては、合意をまとめられる可能性が十分ある。
この要求は理不尽でもなければ、EUの基本原則に反してもいない。移動の自由はそもそも、給付制度を選ぶ自由を意図したものではない。
またEU加盟候補国の市民がEU域内での就労を許されるまでの移行期間を延長せよという要求にも支持を取り付けられるかもしれない。しかし、他の要求で同意を得るのは困難だ。
もし条約改正が必要になれば、明らかに、キャメロン氏の計画に沿ってそれが実現することはあり得ない。同氏が、後に正式に実行される政治的合意だけを求めることはあり得るだろう。だが、そのような合意はEU全加盟国の同意を必要とするし、満場一致の合意が達成可能であるかどうかは全く定かでない。
EUの地政学的な弱体化
キャメロン氏は英国民にEUに残留するよう説得しなければならないだけでなく、残るEU諸国のすべての人を説得し、そのような合意が彼らにとっても最善の利益になることを納得させなければならない。
ユーロ「圏外」を喜ぶべきは英国か?
欧州における英国の地位が問われている〔AFPBB News〕
そのためには、キャメロン氏がかつて見せたことのないような、とてつもなく大きな外交努力が必要になる。
3つ目のポイントは、これらの交渉が行われている間に進むEUの地政学的な弱体化だ。
英国のEU脱退の可能性と英国との交渉中に起こり得る分裂は、ウクライナを巡る対立でロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対してEUが一致した立場を維持するのを難しくする。
キャメロン氏はすでにEU外交において主導権を放棄し、ドイツのアンゲラ・メルケル首相とフランスのフランソワ・オランド大統領に先導を委ねている。キャメロン氏が親EUの大義を支持するよう英国民の説得攻勢に全精力を向ける中、この点で変化があると思ってはならない。
最後に、英国のEU脱退とギリシャのユーロ圏離脱が同時に起こるという身の毛のよだつような可能性がある。
EUはこの2つを受け入れる余裕はない。ギリシャは恐らく、英国の国民投票までは無事だろう。
ひょっとしたら、英国の有権者が意図せずして、ユーロ圏が大きな過ちを犯すのを防ぐことだってあり得る。
まだ悪い方向に進み得ることは多々ある。英国の国民投票の結果を左右する主たる要因は、人々が今日何を考えているかではなく、また、EU加盟の経済的なコストと利益でもない。
問題は、今から国民投票までの間に何が起きるか、だ。どんな世論調査も、それを我々に教えてはくれない。
By Wolfgang Münchau
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43752
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