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国境がもたらすものは経済効果か悩みのタネか 国による違いを利用した「国境ビジネス」の光と影
http://www.asyura2.com/15/kokusai10/msg/646.html
投稿者 rei 日時 2015 年 5 月 11 日 07:10:16: tW6yLih8JvEfw
 

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43611

ドイツへ殺到する国境近くのオランダ人

 国境が目に見えるところにない島国、日本。一方、ヨーロッパ諸国はお互いが国境で接し合っている。

 越境すれば、そこは「異国」である。使用言語はもちろんのこと、文化も違い、場合によっては異なる人種の住む国がすぐ隣にある・・・。それをことのほか意識するのは自分が島国の出身者だからなのかもしれない。

 ヨーロッパ大陸で生まれ育った人たちにしてみれば、国境の存在を気にしないのが普通である。しかし、その近辺に住み生活を営む人たちにとっては、国境はある意味で特別な存在になりうる。国境は、アイデア次第でビジネス展開を可能にする場所だからだ。

 1985年6月に締結されたシェンゲン協定により、EU圏内では国境での審査なく自由に出入国が可能になった。この協定は、フランス、ドイツとベネルクス3国(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)が中心となり調印されたもので、その目的は国境の通行自由化にある。

 それまでは、国境(付近)で義務化されてきた検問を廃止する代わり、不法移民管理や犯罪防止を徹底する条件の下で、EU諸国内の自由移動を保障するために締結された協定なのだ。

オランダとドイツの国境付近にあるガソリンスタンド。オランダの黄色いナンバー車が目立ち、連日超満員である。(画像提供:Ad.nl)

 その結果としてEU圏の人びとは、各国間を(ほぼ)検問なしで行き来できるようになった。また、国境ならではのビジネスの自由化も可能になった意義は大きい。

 たとえば、オランダ東南部からドイツ北西部にかかかる国境周辺の高速道路や一般道は、特に乗用車の交通量が多いことで知られる。それも、その90%はオランダナンバーだ。それはなぜか。

これを見れば明白。ヨーロッパ諸国でガソリン代がもっとも高額なのはオランダ(Netherlands)である(出所:2013年度Autoblog調べ)

 実は、ドイツはオランダよりガソリン代が安いからだ。

 国境から10キロ以内に住むオランダ人たちは、よほど緊急なことでもない限り、本国で給油することはなく、レンタカー会社や大型トラック会社までもが国境を越え、ドイツ側でガソリンを入れるのが定番となっている。

 この国境周辺にはガソリンスタンドが林立しており、連日盛況なのは言うまでもない。

 オランダ人客を見込んだドイツ側では、ガソリンを販売するのみならず、オランダ人にとって必要不可欠な生活必需品が全商品割安で購入できるスーパーマーケットを作り、オランダ人客に限ったキャンペーンを展開したり購入数制限なしの特権を与えたりと、ビジネス展開にも工夫を凝らしている。

 多くのオランダ人を呼び寄せるため、オランダ人のみ対象のレストランも充実させ、加えてキャンプ場やショッピングセンター、カジノから子供が遊べる娯楽施設に至るまで、全てオランダ語が通じる配慮をするほどオランダ人誘致に徹している。

 週末ともなれば大量に押し寄せるオランダ人たちを、国境付近に住むドイツ人たちは「民族大移動」と揶揄しながらも、地元の経済に欠かせない彼らの存在を歓迎しているようだ。

飛び地をはさんだ花火ビジネス

国境線が家を二分している。向かって左側がベルギー、右側がオランダ

 オランダとベルギーには有名な飛び地が存在する場所がある。バーレ・ナッサウ(オランダ)とバーレ・ヘルトッフ(ベルギー)がそれだ。オランダ側には21カ所のベルギーの飛び地が街中に点在し、ベルギー側には20カ所(国境をまたぐものは4カ所)ある。

 この地域で、もっとも繁盛しているのが花火販売業である。花火、とはまた突飛だが、実はオランダでは、安全性の問題もあり、花火の販売期間が毎年11月末から12月末までの1カ月間のみと法律で定められているのだ。

 しかし、隣国のベルギーは状況が異なる。こちらは年間通じて花火を販売することが許可されているため、お祝い事や行事など、何かと理由をつけて花火を打ち上げたがるオランダ人たちは、このベルギー側の飛び地で花火を購入するのである。

店内に国境線があるバーレ・ナッサウ(オランダ側)のスーパー。右はオランダ、左はベルギーの国旗の色で国境線が描かれている(画像提供:Zeeman)
ベルギーの飛び地バールレ・ヘルトッフにある専門店で、花火を購入するオランダ人観光客(画像提供:Ad.nl)

 オランダ国内では販売は禁止だが、隣国での購入は禁止されていない。この「正当な理由」をもってオランダ人たちはベルギーのこの地域までツアーを組んで押し寄せ、花火を大量に購入するというわけだ。

 それを見込み、この地では専門店はもちろんのこと、コンビニやタバコ屋なども花火を扱い、オランダ人専用の「目玉商品」を提供したり、セールを定期的に催したりして、季節を問わず日夜商売に励んでいる。

社会問題化した国境ビジネス

 オランダとドイツとの国境付近で社会問題化した国境ビジネスもある。大麻をはじめとするドラッグの流入問題だ。国境付近にある麻薬販売店(オランダ側のみ、一般的に「コーヒーショップ」と呼ばれている)を訪れる客の半分は、ドイツ人といわれている。

 つまり、事実上国境が取り払われたことにより、麻薬がドイツのみならず、ドイツ経由で他国へ比較的簡単に流出することになる。これは他のEU加盟国から非難の対象となっており、両国では特に国境近辺の治安悪化を危惧し、現在も警察による取締りが厳しい。

ドイツとオランダの国境・ウェイラーでの警察による麻薬所持チェック(画像提供:De Gelderlander)

 たとえば、オランダ東南部とドイツの国境にある村・ウェイラー(Wyler)では、両国の警察官が国境付近で待機し、オランダ側からドイツ側へ出国する乗用車やトラックに対し、抜き打ちの検問を定期的に行なっている。

 これを避けるため最近では、自転車を使って数人がリレー式に運び出す新手の方法で麻薬が国外に流出し、東欧で転売が行なわれている事実もあるといわれており、国境を越えた警察と密売者とのいたちごっこは長引きそうだ。

 ヨーロッパ諸国が、EU共同体になる際に掲げられた目標は、簡単にいえば「国境をなくすこと」だった。しかし、国境が事実上取り払われた後、ヨーロッパ経済は低迷し続けているといえる。

 1958年に発効されたEEC(ヨーロッパ経済共同体)設立条約の前文では、各国間の円滑な流通を促し、経済繁栄をもたらすための障壁撤廃の重要性が説かれていた。

 今後のEUに求められているのは、揺るぎない経済基盤を築き上げ、経済状況を好転させ、それを継続させていくことではないだろうか。そのための一つの策として、各国の国境をさらに有効に活用すれば、多少なりとも経済に貢献できることを忘れてはならないと思う。

 

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