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コラム:英国の「分裂マグマ」、総選挙で増大=田中理氏
2015年 05月 8日 17:31 JST
田中理 第一生命経済研究所 主席エコノミスト
[東京 8日] - 近年まれに見る大接戦となった7日の英国下院総選挙(定数650議席、任期5年)は、出口調査によれば、政権与党の保守党が316議席程度を獲得し、第1党の座を守った模様だ。
単独過半数(326議席)の獲得は難しい情勢だが、現政権で連立パートナーである自由民主党や北アイルランドの地域政党である民主統一党(DUP)の協力が得られれば、保守党が再び政権を率いることが決まる。
出口調査通りの結果となれば、保守党が非多数派政権を樹立したとしても、他党がそろって反対票を投じない限り、議会で法案を通すことも可能となる。保守党による単独政権の芽も出てきた(投票に参加しない議長と北アイルランドのシン・フェイン党の議員を除けば323議席が実質過半数であり、保守党が事実上過半数を制する可能性もまだ残されている)。
政権奪還を狙った野党・労働党は、大票田としてきたスコットランド選出議席を根こそぎスコットランド民族党(SNP)に奪われたほか、接戦の選挙区を落とし、239議席程度と伸び悩んだ。移民増加への不満票を取り込み、昨秋の補欠選挙で議席を獲得した英国独立党(UKIP)は、選挙戦終盤での失速が響き、大政党に有利な選挙制度にも阻まれ、数議席を獲得するにとどまった模様だ。
他方、昨秋のスコットランドの英国からの独立投票後に一段と支持を伸ばし、今回の選挙戦で台風の目となったのがSNPだ。スコットランド選出59議席のうち58議席を獲得した模様で、改選前から大幅に議席を上積みした。
下馬評では、保守党が第1党の座を死守するものの、連立政権の発足に必要な議席を確保できず、第2党の労働党がSNPなどの協力を得て政権発足にこぎ着けるとの見方が多かった。また、保守党・労働党のどちらが勝利した場合も、安定過半数の確保が難しく、連立協議の難航が予想され、政権発足までに時間がかかることや、近い将来に再選挙が必要になる恐れがあることも指摘されていた。
こうした不安を覆し、保守党政権が発足する可能性が高まったことを受け、8日の外国為替市場では英ポンドが急伸している。1)選挙後の政権運営が不安定化することへの警戒姿勢が和らいだこと、2)保守党は労働党に比べてビジネス・フレンドリーな政策を志向する傾向があることに鑑みれば、ポンド買いの初期反応もうなずけよう。
ただ、保守党党首のキャメロン首相は2013年1月の演説で、次期総選挙で保守党が勝利した場合、欧州連合(EU)との関係見直し協議を行ったうえで、2017年末までに英国のEUからの離脱の是非を問う国民投票を実施することを約束している。
恐らく金融市場では、離脱投票が予定される2017年までは相当な時間があり、相場に織り込むには不確定要素が大きすぎると受け止められたのだろう。また、連立候補の自由民主党が離脱投票に反対しており、連立政権内でブレーキ役となることが期待されている可能性もある。
だが、自由民主党のクレッグ党首は投票直前の英国放送協会(BBC)の番組内で、保守党との連立に再参加する際に同党が重視する政策項目は国民保険制度や教育制度などであり、EU関係や離脱投票の優先順位は低い(すなわち離脱投票の要否は保守党の判断に任せる)ことを示唆している。
保守党内の強硬な離脱論者が近年勢いを増していることや、自由民主党が改選前の57議席から10議席程度へと大幅に議席を失ったことに鑑みれば、離脱投票の実施が回避される可能性は極めて低くなった。
<EU離脱投票とスコットランド独立のリスク>
もちろん、国民投票が実施されても、英国のEU離脱はさすがにないだろうとの漠然とした安心感が漂っており、今のところ金融市場参加者の間で、この問題に対する危機意識は高まっていない。世論調査によれば、キャメロン首相が投票実施を打ち出した2013年頃は離脱派が残留派を一貫して上回っていたが、その後は両者が拮抗(きっこう)し、最近では残留派が優勢との調査結果が増えている。
ただ、昨年9月のスコットランドの英国からの独立投票では、投票日が近づくにつれて独立賛成派が勢いを増し、金融市場に動揺が広がったことは記憶に新しい。また、ギリシャ不安が再燃するたびに、同国のユーロ離脱懸念が蒸し返されている。いざ投票が近づけば、英国やEUの将来をめぐる不透明感が増し、金融市場は身構えざるを得ない。
EU諸国の間では近年、英国の「いいとこどり」への不満も広がっており、EUとの関係見直し協議が英国の望み通りに進まない可能性もある。その場合、英国民の間でEUへの不満が一段と広がり、離脱派が再び勢いを増すリスクも無視できない。
SNPの勢力拡大による波紋にも注意が必要となる。保守党政権が誕生する可能性が高まったことで、SNPが労働党政権への協力と引き換えに、スコットランドへのさらなる権限移譲や独立投票の再実施を求める可能性は遠のいた。だが、SNPは他の地域政党とも連携強化を模索しており、今後、国政での影響力を増すことは確実だ。
保守党政権がEU離脱投票を推し進める際には、親EU色の強いスコットランドは英国から独立したうえで、EUに加盟することを目指す可能性が高い。結局、SNPの躍進によりスコットランドへのさらなる権限移譲や、それに付随した地方分権議論が沸き起こることが予想される。
英国はイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの自治州政府によって構成されている。1990年代に北アイルランド議会、ウェールズ議会、そして約300年ぶりにスコットランド議会が復活し、地域主権に関わる立法権限が英国議会から移管されたのに対し、イングランド議会は今も存在していない。そのため、英国議会でイングランド固有の政策を審議する際に、スコットランド選出議員の投票権を制限すべきとの声が再燃することも予想される。
また、スコットランドは、イングランド、ウェールズ、北アイルランドと比べて手厚い財政移転を受けている。権限移譲と引き換えに、こうした傾斜配分の見直しを求める声も今後さらに強まるかもしれない。
総選挙の結果を受け、現政権の継続が決まったことで金融市場ではひとまず安心感が広がっているが、英国ではEUからの離脱を求める遠心力と「内なる分裂」のマグマが静かに、だが着実に蓄積している。
*田中理氏は第一生命経済研究所の主席エコノミスト。1997年慶應義塾大学卒。日本総合研究所、モルガン・スタンレー証券(現在はモルガン・スタンレーMUFG証券)などで日米欧のマクロ経済調査業務に従事。2009年11月より現職。欧米経済担当。
http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPKBN0NT0E420150508
20歳の女子学生勝利=労働党重鎮破る―英総選挙【5/8 11:18】
【ロンドン時事】7日投票の英総選挙で、スコットランド南西部ペイズリー・レンフルシャーサウス選挙区の開票結果が8日判明し、スコットランド民族党(SNP)の新人で20歳の女子大生マリ・ブラック氏が、最大野党・労働党の「影の外相」で選挙戦略主任を務める前職のダグラス・アレグザンダー氏を下して当選した。
報道によると、ブラック氏は過去約350年間で最年少の下院議員となる。同選挙区ではアレグザンダー氏が、区割り改定前を含めて1997年から議席を維持しており、労働党にとって衝撃的な結果となった。
情報提供:株式会社時事通信社
英総選挙は保守党が第1党維持へ、労働党はスコットランドで惨敗
2015年 05月 8日 14:03 JST
[ロンドン 8日 ロイター] - 英国で7日に行われた下院総選挙(定数650)の出口調査によると、続投を目指すキャメロン首相率いる与党保守党が第1党を維持する見通し。ただ、単独過半数の議席は獲得できない情勢となっている。
保守党が勝利すれば、欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票が2年以内に実施される可能性が高い。
出口調査に基づく各党の獲得議席数予想は、保守党が316議席、最大野党の労働党が239議席。この数字が確定すれば、労働党は約30年ぶりの惨敗を喫し、スコットランドの選挙区での議席を失うことになる。
一方、英国からの独立を目指すスコットランド民族党(SNP)は、スコットランドに割り当てられた59議席中、過半数となる31議席を獲得。出口調査によれば58議席を獲得する見通しで、労働党の伝統的な牙城を切り崩した。前回の総選挙では、スコットランドにおけるSNPの議席は6にとどまっていた。
このほか、保守党と連立政権を組んでいた中道左派の自由民主党が10議席にとどまり、反欧州連合(EU)を掲げる英国独立党(UKIP)は2議席を獲得する見通し。
保守党と自由民主党を合わせた獲得議席数は326議席で過半数となる勢い。
保守党のマイケル・ゴブ議員は「(出口調査が)正しければ、保守党がこの選挙に勝利したのは明らか」と述べた。
開票速報でも、労働党への支持が予想をはるかに下回ったことが示されている。出口調査の専門家は保守党が過半数を獲得する可能性を否定していない。
出口調査の結果に基づけば、キャメロン首相は政権発足にあたり、自由民主党あるいは北アイルランド同盟党との2党連立、あるいは両党との3党連立という複数の選択肢が考えられるほか、保守党単独での政権運営も可能だ。
下院の定数は650議席だが実効過半数は323議席であるため、保守党は実質的に過半数を握るのに非常に近い議席を獲得する見通し。
今回のSNPの躍進を受け、スコットランド独立をめぐる住民投票を求める機運が再び高まる可能性がある。
SNP元党首のアレックス・サモンド氏は「SNPは無視できず、止めにくい存在になる」と発言。SNPの躍進により、保守党が議席を獲得しないとみられるスコットランドにおけるキャメロン首相の正当性は失われるとの見方を示した。
スコットランドでは、労働党の選挙戦略主任を務める現職のダグラス・アレクサンダー氏がSNPから立候補した20歳の学生に敗北。労働党に打撃となった。
保守党の勝利が確定すれば、選挙前に不安定だったキャメロン首相の党首としての地位は確実なものとなる。予想以上の結果で党内の不満は抑えられるとみられる。
一方、惨敗が予想される労働党のミリバンド党首は辞任を迫られる可能性が高い。出口調査によると、労働党がSNP、緑の党と連立を組んだ場合でも過半数議席には届かない見通し。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0NS2IA20150508
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