http://www.asyura2.com/15/kokusai10/msg/620.html
Tweet |
※関連投稿
「オバマは中東をどうしたい:対立と混迷でぐちゃぐちゃになった中東・北アフリカ地域を高見から操りたい欧米支配層」
http://www.asyura2.com/15/kokusai10/msg/589.html
============================================================================================================
[核心]複雑さ増す中東の相関図
米大統領発言、新たな波紋 本社コラムニスト 脇祐三
「アラブの春」以降の中東情勢の流動化は、米国の影響力低下の中で進んだ。米国が外からタガをはめる要であるサウジアラビア、エジプト、イスラエル、トルコとの個別の同盟関係は、いずれも不協和音が目立つ。過激派「イスラム国」(IS=Islamic State)への対応に手間取る一因は、ここにある。
核開発問題をめぐって米政権とイランは歩み寄り、外交解決に向けた枠組み合意に至った。イスラエルやサウジはこれを警戒する。そうした状況下でオバマ米大統領はイランとの関係見直しの意義を説き、同盟国に辛口のコメントをして、新たな波紋を広げている。
米国の大統領は、2期目に外交の成果で歴史に名を残そうとする。キューバとの国交正常化をめざし「過去にとらわれず、新しい関係を構築したい」と語るオバマ大統領は、イランについても同様な考えを示す。
4月5日にニューヨーク・タイムズ電子版に掲載されたコラムニスト、トーマス・フリードマン氏との会見で、相手国への戦略的な関与は際限のない制裁や孤立化政策よりも国益に資すると大統領は説明した。
対立を続けてきた国との関係を見直す際の原則「オバマ・ドクトリン」は何か。その問いに大統領は、関与すると同時に軍事面も含めたすべての能力を保つことだと答えている。
イランは変わるかもしれない。そうならなくても米国の軍事的な優位は続くから、新たな発想の外交を試みるべきだ。外交で合意できれば、米・イランの新時代が始まり、イランと近隣諸国の新時代も導く――。大統領はそう力説した。
米国とイランが歩み寄れば、中東を覆う緊張の1つが緩む。だが、現在の中東の緊張の多くは、イスラム教シーア派の地域大国イランの影響力拡大と、これに対抗するサウジなどスンニ派諸国の巻き返しの動きに伴って生じたものだ。
シリア内戦では、イランと同盟を結ぶアサド政権にレバノンのシーア派組織などが加勢し、反体制勢力をスンニ派のサウジやトルコなどが支援してきた。内戦が国際的な宗派戦争に変質した結果、ISのようなスンニ派の過激な勢力が流入した。イラクでもシーア派主導の政権に対するスンニ派の反発という構図の中でISが支配地域を広げた。
今そこにある危機は、宗派対立と重なり合う。しかも、大きな脅威になったISを米国やサウジなどの有志連合がシリア上空から攻撃する一方、イラクの地上ではイラン革命防衛隊の幹部も加わったシーア派の民兵が主にISと戦っているというややこしさだ。
米国とイランはそれぞれ個別にイラクの政権を支援しているが、サウジはイラク政権に距離を置く。宗派間のゼロサム意識が、IS排除で広範な連携を阻む。
シリア内戦収拾に向けた協議が進展しないのも、サウジやトルコが「アサド政権退陣が先」という姿勢を変えないからだ。ケリー米国務長官が3月中旬、「最終的にはアサド政権と交渉する必要がある」と本音をもらすと、何を今さらという反応が広がり、米国務省は火消しに追われた。
オバマ政権は2011年に、サウジと共通の戦略的利益を確認した。重要な柱は、イランとそれに追随する勢力が中東で影響力を拡大するのを抑えることだった。4月に大統領がニューヨーク・タイムズに語った内容は、4年前とは違う。中東での米国の中核的な利益は石油ではなく、すべての人が平和に暮らして秩序を保つことであり、イランとの合意がその出発点になるというロジックだ。
大統領はスンニ派の湾岸諸国が直面する脅威について「イランの侵略ではなく国内の不満から来る」とも語った。イラン重視がにじみ出た発言は、アラブのスンニ派を刺激する。
サウジ系の民間シンクタンク、ガルフ・リサーチ・センターのアブドルアジーズ・サゲル会長は「オバマ・ドクトリンは状況をほとんど変えられず、さらに悪化させるかもしれない」「今の米国は原則と実際の行動が矛盾しており、安心できない」と語る。
中東の混迷が深まったのは、オバマ政権が関与を嫌い、包括的な戦略を持たなくなったからでもあった。イランとの歩み寄りで関与を強調しても、他のさまざまな危機に米国がどう関与するのかが見えない。
混乱が続くイエメンに、サウジなどが3月下旬から軍事介入した。攻撃対象は首都を占拠するシーア派の武装組織だ。アラブ連盟では合同軍創設の協議も始まった。アラブ諸国が自らの手で問題に取り組む決意を示したとサゲル氏は言うが、スンニ派による軍事同盟結成の動きにも見える。
イエメン軍事介入には、何を達成しようとするのかよくわからない面もある。
サルマン・サウジ国王は先週、同国の指導層の人事を一新した。ムクリン皇太子更迭の背景には、イエメンめぐる意見対立があったとの見方も流れている。退任する高齢のサウド外相の後任には、ジュベイル駐米大使が就く。ワシントン駐在が長く、民主、共和の両党にパイプを持つ人物だ。
オバマ外交への不信は根強いものの、サウジの安全保障に米国の後ろ盾は欠かせない。米国をもう一度、自分たちの側に引き寄せる。そういう狙いを込めた外相人事かもしれない。
[日経新聞5月4日朝刊P.5]
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。