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米中の行く手に待ち受ける「冷たい平和」
台頭する中国、対立は避けられるかもしれないが・・・
2015.5.5(火) Financial Times
(2015年5月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
米中対話開幕、長年の対立終結を呼び掛け
世界の2大大国は対立を回避できるのか〔AFPBB News〕
アジアは長期的なものの見方をする。筆者はかつて北京で、米国の国力の未来に関する議論に同席したことがある。中国現代国際関係研究院(CICIR)での設問は「2050年に米国はどこにいるか」というものだった。普段はエリート支配層の間で違いを示すことが少ない国で、この質問は驚くほど活発な議論を生み出した。
一方には、米国の国力を構成する要素――地理、人口動態、資源、経済的活力、技術的に優れた能力、軍事力など――は持続すると確信する人たちがいた。
他方には、米国は歴史上の大国と同じ道をたどり、政治的沈滞、文化的退廃、経済的衰退によって打ちのめされると言う人たちがいた。
採決を取る人は誰もいなかったが、第1のグループの方が議論で勝っていた。この議論は、世界金融危機や北京オリンピックの前に行われたものだ。
筆者の推測では、この議論が数年後に繰り返されていたら、悲観主義者(それとも彼らは楽観主義者だったのだろうか?)が勝利していただろう。
筆者がここ数年東アジアで何度も聞いた話は、近い将来に米国が後退するという話だった。敵対国のみならず同盟国も、米国がその地位を堅持することを疑っていた。
米国は戻って来たのか?
人生の多くのことについても、地政学についても同じことが言える。流行は変化するのだ。
年次フォーラムの表題を考え出そうとして、韓国の有力な外交政策シンクタンク、峨山政策研究院は1つの設問に落ち着いた。「米国は戻って来たのか?」というものだ。4月末にソウルに集まった政策立案者たちの反応は、暫定的な「イエス」以上のものだった。
米国の終焉に関する報告は、実際、時期尚早だった。安倍晋三首相がワシントンを訪問中に行った再改定・日米防衛協力の指針(ガイドライン)の署名を見るといい。
多くの人は、米国がアジアを去ったことは一度もないと言うだろう。それどころか米国は、過去2世紀ほどの間で最大の世界的激変に対する新たなアプローチを見つけ出すことに没頭しているという。
同様に、ムードが変わったのは、バラク・オバマ米大統領のアジアへのピボットに由来する何らかの新しいイニシアチブというよりも、むしろ米国の基本的な強さの再評価を反映していると考えた人もいた。
最近まで、米国は景気後退、赤字の増加、政治的な行き詰まりによって表されていた。
今では成長が戻り、赤字が減少し、驚いたことに、民主党と共和党が米国議会で協力し合っている。米国を優位に立たせているその他諸々の材料に、シェールガスとシェールオイルを加えることもできる。
米国が戻って来たのだとすれば、中国は地域に到来した。自信のない期間が長く続いた後、中国は経済力を地政学的な野心と結びつけようとしている。
南シナ海の係争中の島での空軍基地を通してであれ、パキスタンとの援助協定や中央アジアを横切る新シルクロード、あるいはアジアインフラ投資銀行(AIIB)のような地域の金融機関の創設を通してであれ、習近平国家主席は中国の権利を主張することについて、残っていた抑制を一切捨て去った。
AIIBに関する中国と米国の仲たがいは間違いなく、多くの対立の第1弾だろう。そう言うのは酷だが、中東の混乱は、アジアの大国関係の再編に比べれば、地政学的な余興だ。
米中関係の「3つのC」
21世紀の国際秩序の条件は何よりも、米中関係の3つの「C」によって定められる。これまでのところ「cooperation(協力)」と「competition(競争)」が居心地悪そうに隣り合ってきたが、3つ目のCである「conflict(対立)」が目と鼻の先にある。
中国政府は、自国の新たな世界観について攻撃的なところは何もないと言う。大国の役割の1つは、近隣地域の安全保障を引き受けることだ。中国は今年か来年に米国を東アジアから追い出すつもりはないが、米国の2国間同盟のネットワークは冷戦の遺物だ。
アジアが、恐らく中国のリーダーシップによって地域の地政学的問題の主導権を握る時がやって来るだろう。西側は「古い考え」を捨て去る時だ、とある中国高官が言うのを筆者は聞いたことがある。
米国政府としては、台頭した中国を現在の国際秩序のステークホルダー(利害関係者)として引き入れることができるという考えに見切りをつけている。ジョージ・W・ブッシュ政権の有力な高官だったロバート・ブラックウィル氏は共和党の大統領候補たちによって取り上げられる可能性の高い報告書で、かなり強固な立場を求めている。
カーネギー国際平和財団の研究員アッシュリー・テリス氏と共著し、外交問題評議会(CFR)によって発行された報告書『Revising U.S. Grand Strategy Toward China(米国の対中大戦略の見直し)』は、東アジアで米国の「優位性」を維持することを目的に、米国の国力のあらゆる要素を結集する計画の概要を説明している。
「優位性」は、中国にとってと同じくらい、米国の一部の同盟国にとっても頭の痛い言葉だ。西太平洋における米国のプレゼンスの正当性は、他の多くの政府が中国への対抗勢力として米国にとどまってほしいと思っているという単純な事実に基づいている。
だが、中国の重みと釣り合いを取ることは、それでいいにせよ、中国の近隣諸国はどれほど不安でも、中国と仲良くやることに強い経済的利益を持っている。永続的な優位性を求めようとする米国は、衝突を招くだろう。止めることのできない力と動かすことのできないモノという言葉が頭に浮かぶ。
どちらも冷戦は望んでいないが・・・
トゥキディデスが生きていたら、恐らくこれらの状況は否応なく対立につながると言うだろう。我々は、ペロポネソス戦争以降、歴史が進歩したことを願うかもしれない。
どちらの側も冷戦は望んでいないし、ましてや軍事的対立など望んでいない。だが、状況は荒れようとしている。考えられる最善の状況は、明らかに冷たい平和なのかもしれない。
By Philip Stephens
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43697
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