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コラム:識者5人が予想する「25年後の世界」
2015年 05月 1日 15:31 JST
John Stackhouse
[28日 ロイター] - 地中海では移民船の難破事故が相次ぎ、中東・アフリカでは過激派組織との戦いが、そしてウクライナでは親ロシア派との武力衝突が続くなか、世界は今にも爆発しそうに見えるかもしれない。
しかし不安定さを増しているとはいえ、世界が以前より危険かと言えばそうとも言えない。
日々進歩する世界が史上最悪の危機的状況にあるように見えるのは、そうした「心配の種」が大々的に扱われるからだ。これまでになく多種多様な意見が世にあふれるようになった結果、世界はより騒がしく、心配の種に対する懸念も増幅した。だが、必ずしも深刻な危機がそのなかに潜んでいるとは限らない。
「金融市場やISISのようなイスラム過激派の台頭に見られるように、インターネットでつながるグローバル化した世界は不安定化しやすい」。こう語るのは、テロリズムに関する著書のあるコロンビア大学ジャーナリズム大学院のスティーブ・コール院長だ。「世界は突発的な衝撃の影響を受けやすくなっている」
コール氏は優れた外交問題の英文書籍に贈られるライオネル・ゲルバー賞の受賞者。同氏のほか、経済学者のポール・コリアー氏、中国史が専門のジョナサン・スペンス氏、政治学者ウォルター・ラッセル・ミード氏、ジャーナリストのアダム・ホックシールド氏ら歴代の受賞者4人が同賞の設立25周年を記念したビデオプロジェクトに参加し、インタビューを受けている。
インタビューのなかで5人は、同賞の設立年である1990年と比べて、今の世界は良くなったかどうか、それぞれ問われている。当時は共産主義が臨終の際にあり、インターネット草創期でもあった。
彼らによれば、貧困と子供の死亡は著しく減少。貿易と投資は世界中で急速に拡大し、断続的にではあるが民主主義と人権意識が普及した。崩壊した国家からの核兵器流出の脅威、中南米や東南アジアなどの債務危機、世界的流行病の頻発なども回避できている。
向こう四半世紀について、5人はそれぞれ異なる理由から楽観的な見方をしていると話す。ただ同時に、世界がテロやサイバー攻撃といった新たな脅威に対処できるか、懸念も示している。
騒がれていたわりに、過去四半世紀を支配してきた5つのテーマ──テロ、中国の台頭、人権問題、貧困、米国の覇権──は、かなりうまく対処されてきた。コール氏が主張するように、西側で大規模な市民への無差別攻撃に対する恐怖が薄れるなか、テロによる被害はもっとひどかった可能性もあっただろう。
向こう四半世紀にこうしたテーマがどう展開するかは、前にも増して予測困難かもしれない。
<中国>
著名な中国専門家の1人であるスペンス氏は、過去60年にわたり中国を自分の目でみてきた。同氏はいまだに、急速な変化に対する中国の適応能力に衝撃を受けるという。「中国がこれほど早く国際社会に溶け込むとは全く予想していなかった」と語る。
スペンス氏によると、中国は習近平国家主席の下、巧みに賞罰制度を用いて反対勢力に一段とうまく対処している。それは共産党内においても例外ではないという。
中国は自国権益の保護と拡大のため、軍事力というハードパワーと外交・経済力のソフトパワーの両方を駆使して海外に進出するなか、共産党の一党支配体制の維持という課題に直面するだろう。同国はアフリカの鉱山や北極圏の石油探査に進出し、中国語や自国メディアの普及に努めている。他の世界にとって、向こう10年の大きな課題の1つは拡大を続ける中国との共生の仕方を、中国にとっては世界的な責任に順応することを学ぶことだと、スペンス氏は指摘する。
<貧困>
過去四半世紀で最も明るい話は、貧困層の減少だろう。特にこれはアフリカで顕著に見られた。今後の課題は、経済成長を社会発展と中間層強化に転化することだ。
コモディティー価格の崩壊で、アフリカの希望の一部には疑問が呈されているものの、石油と鉱物の価格が再び回復するとみている人たちにとっては、アフリカは依然として成長が非常に期待できる新たなフロンティアなのだ。同地域の都市人口は2050年までに3倍になると見込まれている。
経済学者のコリアー氏は「われわれは今、天然資源が好機となるのか、それとも再び過ちとなるのかをめぐって大きな岐路に立っている」と指摘。20世紀の一次産品ブームのときのように、鉱物と石油で得られる富は、独裁者とその取り巻きたちを潤すことになるのだろうか。それとも競争力のある民間企業や高価値の雇用を生み出し、正しく機能する政府と公的機関の維持に寄与するのだろうか。
<民主主義と人権>
共産主義の崩壊により、民主主義の原則と人権はせきを切ったように拡大した。しかし再び、中国のほか、ウクライナやロシア、中東や北アフリカで危機にさらされている。
とはいえ、アフリカなどの人権問題を取材してきたジャーナリストのホックシールド氏は、民主主義と人権拡大の動きは逆行していないとみる。その好例として、ナイジェリア、スリランカ、インドネシア政府の平和的な民主主義への移行を挙げた。
デジタル技術や衛星技術は、政府を調査したり、批判したりするうえで不可欠なツールを人々に提供する。インターネットは民主主義の特使として、米国の権利章典よりも重要な意味を持っているかもしれない。
<テロリズム>
武装勢力はもはや権力の座に就く必要がない。テクノロジーを使って世界中の社会に潜入し、目的を実行することが可能だからだ。
コール氏が指摘するように、「イスラム国(ISIS)」のような過激派組織は「テクノロジーによって自己強化が可能になるため、従来の国家が必要とする方法を経ずに、独自のメディアを運営し、ブランド戦略や人材採用戦略を策定することができる」。
コール氏はまた、国家などによるサイバー戦争がより深刻な問題だと指摘。「サイバーは恐らく向こう20年、あるいは40年で最も重要な新しい戦争の形態となるだろう」と語った。
同氏は中国とロシアを最も懸念している。中国は米国の軍事的優位に対抗するためにそうした技術を使いたがり、ロシアの場合は自国の衰退する従来の力を補うために必要としているという。
<米国の覇権>
米国は1990年当時と変わらず、軍事的にも外交的にも、また教育、メディア、エネルギー、そしてデジタル技術の分野においても超大国であり続けている。
イラクやアフガニスタンでの戦争の結果は今なお不透明なままだが、米国が世界の警察であることに変わりはない。また、ハイチやエボラ熱感染地域での人道支援においても主導的な役割を担っている。
だが、こうした米国の力は無害だと過信してはいけない。とりわけ、米国とは異なるモデルに従う国々にとっては注意が必要だという。政治学者のミード氏は「米国の力は本質的に世界に平穏をもたらすようなものではない」との見方を示した。
しかしながら、もし世界が爆発寸前だと思われるなら、犠牲者とされる側は今後も米国に頼る可能性が高いだろう。
*筆者は加紙「グローブ・アンド・メール」の元編集主幹。今秋に自著3冊目となる「Mass Disruption: How the Digital Revolution is Changing What You Read」を出版予定。
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0NM36T20150501
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