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『ニューズウィーク日本版』2015−4・21
P.37
「キッシンジャー流外交は中国に連用しない
南シナ海:着々と実効支配を固める中国を前に棚上げや「待ち」の戦略は理想的でない
南シナ海における領有権問題への対応について、アメリカと中国はケ小平のやり方を見習うべきだ―。そう提案したのはヘンリー・キッシンジャー。ニクソン政権時代の国務長官で、米中国交回復の功労者でもある。
「ケ小平は当時、今の世代で問題をすべて解決する必要はない、という姿勢で臨んだ」とキッシンジャーは先月、訪問先のシンガポールで語った。「次の世代まで待とう。ただし事態を悪化させないようにしよう」。ケに倣って南シナ海でも領有権問題をひとまず棚上げしよう、できれば共同開発に集中しよう、というわけだ。
同様の提案はこれまでにもあった。13年まで米国務省の東アジア・太平洋担当次官補を務めていたカート・キャンベルも先月、ワシントンのシンクタンクで講演し、「問題を先送り」して「現状か、現状を微調整した状態が誰にとっても得策だという一定の理解を確立するのが今のところベストではないか」との考えを示した。
理屈の上では理想的なやり方だが、キャンベル自身も認めるとおり「南シナ海でもどこでも、これが正しいやり方だと、中国はおろか他の国々さえ十分に説得できていない」。
なぜ説得できないのか。中国が自己主張をじわじわと拡大して南シナ海の現状を変え、自ら南シナ海の地図上に引いた領海線「九段線」に基づく支配を実現できると踏んでいるからだ。自国の主張を適すまでは、領有権問題を棚上げする気はないだろう。
こうした現実を受けて、南シナ海における領有権を主張する他の国々は警戒態勢を強化している。中国は最近、同海域での埋め立て作業を加速。他の国が傍観していたら、数年で南シナ海は中国領内の湖も同紙になるだろう。次世代まで待っていたら、さらに軍事力を増した中国がどんな強硬策に出るか分かったものではない。
断固とした対抗措置を
アメリカにとっても、待つという選択肢はない。南シナ海の問題より米中開係のほうが大事だという声もあるが、良好な関係を維持するには双方の協力が必要だ。中国が今後も南シナ海で強硬路線を取り、アジアにおけるアメリカの同盟国やパートナーの利益と、国際法に定められた原則と、アジア全体の平和と安定を損なうなら、アメリカは対抗措置を取るべきだ。そして実際にそう行動している。
秩序と安定を脅かす中国の言動を看過してはならない。見て見ぬふりをする、中国が問邁を先送りにするのを当てにする、といった選択肢はあり得ない。
キッシンジャーもそれは承知の上で理想を述べただけだろう。アメリカと中国が近い将来、先送りを選択するとは思えない。
南シナ海の紛争回避のため、法的拘束力を持つ行動規範の策定に向けた取り組みが始まったものの、交渉は難航。そんななかでアメリカは昨年、南シナ海での挑発的行為の「凍結」を提案した。南シナ海の問題をすべて先送りにするものではないが、問題解決は急がず緊張を一部緩和しょうという意図はキッシンジャーの提案に通じるものがあつた。しかし中国は、中国を不当に標的にした干渉であり、行動規範をめぐる交渉に支障をきたすと猛反発した。
もちろん、中国が目的を達成したら南シナ海での強硬姿勢を緩める可能性や、挑発行為のツケが大きくなつて路線変更を余儀なくされる可能性はある。だが今のところ、中国は南シナ海で自己主張を強めていく能力と意志をみせつけ、アメリカの関与をことごとく干渉呼ばわりしている。
キッシンジャーの理想が現実になる日はまだ遠いようだ。
ブラシャント・パラメスワラン」
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