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アメリカ人はもう「世界の警察」を続ける気がない
中国が暴走したとき、アメリカは日本を守るのか?
オバマが「われわれは世界の警察官であるべきではない」と語り、アメリカ人の半数が「よその国のことには口出しするべきではない」と考え始めている。『撤退するアメリカと「無秩序」の世紀』の著者でもあり、ピューリッツァー賞受賞・WSJコラムニストが予測する、世界が無秩序に陥るシナリオとは。
アメリカ国民は
もう世界の平和に関心がない
アメリカ人が世界指向だった時代は終わり、世界に無関心な時代に急速に代わりつつある。
ピュー・リサーチセンターが二〇一三年秋に行った世論調査によると、アメリカ人の五二%が、アメリカは「よその国のことには口出しするべきではない」と考えていた。一九六四年に初めて同様の調査をしたとき、この割合は二〇%、二〇〇二年は三〇%で、過半数を超えたのは二〇一三年が初めてだった。
この傾向は支持政党の違いを問わず幅広く見られる。別のピューの調査によると、「国際問題に積極的に取り組むことがアメリカにとって最善である」と考える共和党保守派は、二〇〇四年は五八%いたのに、二〇一一年は三九%まで減った。また支持政党を問わず五八%が「外国の問題への関心を縮小」し、六五%が「外国での軍事的関与を縮小」することを支持した。
ロシアのクリミア侵攻後にピューが行った調査では、五六%(共和党支持者に限ると五〇%)が、「クリミア問題に深入りしすぎない」ことが重要だと考えていた。「ロシアに厳しい姿勢」で臨むべきだと答えたのはたった二九%だった。
では、外交政策に関して、アメリカ国民はオバマ政権にどんなメッセージを送ってきたのか。
それは基本的に、「外交政策について、国民は多くを聞く気も、知る気もない」というものだ。これもホワイトハウスの態度とそっくりだ。「(シリアの)反政府派に武器を供与するか否かをめぐる議論が再燃したとき、オバマが高官級会議で強力な意見を口にすることはめったになかった」と、ニューヨーク・タイムズ紙は報じている。
オバマもアメリカ人も、なぜそんなに無関心を決め込んでいるのか。その理由は「イラク」と「不況」の二つに集約できる。
「中東」と「不況」が
アメリカを孤立主義に傾けた
イラク戦争という破滅的な冒険を強行したために、アメリカの財政は破綻し、経済難に陥った。
「過去一〇年以上にわたり、わが国は一兆ドル以上を戦争に費やし、赤字を爆発的に増やし、国内の国家建設を進める能力を削がれてきた」と、オバマは二〇一三年五月に語っている。しかし二〇〇九年二月一八日、オバマは景気対策法案に署名することで、国防総省が過去一〇年間にイラクで費やした金額(七七〇〇億ドル)を上回る金額(七八七〇億ドル)を一日で支出した。
またアメリカの「赤字が爆発的に増えた」のには多くの理由がある。二〇〇一年以降、毎年三三兆ドルを超える歳出もその一部だ。それに比べればイラクとアフガニスタンで費やした約一兆五〇〇〇億ドルなど微々たるものだ。
アメリカが世界に無関心なのは、イラクとアフガニスタンで苦い経験をした結果、世界の警察官の役割は割に合わない場合があると気づいたせいでもある。第二次世界大戦後の日本やドイツなら、あるいは冷戦後のポーランドなら、「国家建設」にアメリカの富とエネルギーを費やす価値はあったかもしれない。だが、バグダッドやカブールで国家建設を進めても、まともな成果が期待できるはずはなかった。
そもそもイラクやアフガニスタンが、イスラム世界全体の手本となる民主主義国になる可能性などあったのか。これは当然の疑問だ。アメリカ人がいま、外国に介入することを嫌がっているのは、アメリカの中核的利益と周縁的利益の間にはっきりと一線を引き、周縁的利益のためにエネルギーを浪費したくないと思っているからだ。
アメリカ経済の低成長が六年目に入ったことを考えると、アメリカ人がシリア内戦やフィリピン近海の領有権争いよりも、自分の給料や次の仕事を心配するのは無理もない。国際環境がアメリカにとってさほど大きな脅威ではないのだから、アメリカ人が世界に無関心なのも当然だと指摘する声もある。
中国、ロシア、イランの暴走を
止める力はもうアメリカにはない
冷戦時代は、アメリカのどの都市にもソ連のICBMが三〇分で到達する可能性があったから、一般市民にとっても外交は非常に身近な問題だった。だが冷戦は終わった。アメリカ人はいまほかに心配するべきことがある。まずは自分自身だ。
だとすれば、アメリカが総じて世界に背を向ける時代に突入したのも驚きではない。その論理は表面的だが説得力があり、政治的に強烈なアピール力がある。だから少なくとも一期目のオバマは、外交政策で高い支持を得ていた。
また草の根保守派運動ティーパーティーや、ランド・ポール上院議員など自由主義的な考えを持つ共和党議員は、一九七〇年代にジョージ・マクガバンがベトナムからの撤退を訴えて、「アメリカよ、帰ってこい」と唱えたのと似たスローガンを訴えている。
これまでの経過を見る限り、何をやってもアメリカは黙認するだけだと見込んで、世界秩序に挑戦する行為は増える一方だ。
バシャル・アサドは今後もシリアの独裁者として君臨し続けるのか。だとすれば、それはレバノンやイラク、ヨルダン、イスラエルにどんな影響を与えるのか。
中国政府は、世界の海上輸送の三分の一が通過し、世界屈指のエネルギー資源が眠る南シナ海を中国の湖にしてしまうのか。
イランは核兵器を獲得するか、獲得に限りなく近づき、危機感を覚えたサウジアラビアまでが独自の核開発に乗り出すのか。プーチンはNATOの弱腰に乗じて、旧ソ連諸国への影響力をいっそう強めるのか。
中国経済のバブルが崩壊したら、あるいはユーロ圏が再び激しい不況に見舞われたら、あるいはアベノミクスが抵抗勢力によって本格的な構造改革を阻まれて失敗に終わったら、アメリカ経済は世界経済を牽引できるのか。
アメリカが世界秩序を維持する役割を拒否するなか、悪夢のシナリオの現実味は高まっている。
http://diamond.jp/articles/-/70618
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