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http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0ND02J20150422
コラム:目先の利益にとらわれるEUの移民政策
2015年 04月 22日 10:06 JST
Edward Hadas
[20日 ロイターBREAKINGVIEWS] - 欧州では、移民政策が政治的圧力によって経済的に非現実的な方向に導かれている。移民希望者と移民先の住民を隔てる無分別で人工的な障壁が、リビア沖で19日発生した移民船転覆事故が起きる状況をつくり出したとも言えるだろう。同事故では700人以上が死亡したとみられている。
欧州は労働市場が危機的状況にあるため、ある意味、移住先としては奇妙に見えるかもしれない。欧州連合(EU)の失業率9.8%というのは、雇用不足を明らかに示している。不法移民の大半を占める若者は、失業している25歳未満の合法居住者485万人と仕事を取り合わなくてはならない。
しかし、移民を希望する人たちは、欧州で重苦しい停滞が待っているとは考えない。自分たちの国々の生活水準から考えれば、欧州は安定と機会を提供してくれるのだ。
不法移民の多くは、内戦や政治的迫害を逃れて欧州にやって来る。例えば、シリアからの避難民は、亡命資格があろうとなかろうと、計り知れない経済的価値、つまり安全な居住地を手に入れることになる。より良い新たな生活の機会は、旅の途中で溺死するリスクや、不法移民として生きることによるさまざまな危険に勝ると彼らは考えている。
移民のなかには、貧困に耐えかねて母国を後にした人もいるだろう。彼らの考えもまた理にかなっている。国際通貨基金(IMF)によると、海を渡って欧州にやって来る多くの移民の出身地であるサハラ以南のアフリカでは、1人当たりの国内総生産(GDP)は3720ドルだ。一方、EU統計局(ユーロスタット)によると、EUでは同2万9211ドルに上る。
このように大きな格差では、不法移民としての欧州での暮らしが過酷でも、母国でのそれよりもはるかにましである可能性が高い。欧州の最低賃金レベルでも何年か働けば、欧州に渡った際の高い渡航費用に対し十分な見返りを得ることができる。
母国と移住先の国々の格差があまりに大きいため、船が事故に遭ったときの救助活動がいかにお粗末であろうと、また、密航業者を取り締まる努力がどれほどなされていようと、多くの人が移民になろうとしている事実に変わりはない。正規の移民ルートが狭き門なのであれば、密航は横行し悲劇が生まれる。要するに、密航業者はもうかり、移民がその代償を支払っているのだ。
経済的リアリズムが移民政策の先導役である限り、欧州のうわべだけのアピールが議論の中心となるだろう。しかし、欧州の有権者の多くは、現実に移民を生み出している経済的圧力を理解していないように見える。見過ごされているのは今後起こり得る圧力だけではない。ヒトの自由な移動が先進国経済にとって繁栄をもたらすという強い論拠も無視されている。
先進国の住民たちは一般的に、主に若者や精力的な労働者である移民の到着で失う以上の利益を得ている。ほぼすべての調査が示しているのは、移民が国内賃金に与える効果は非常に小さいということだ。
だが、有権者は聞く耳を持たない。あるいは、文化や過密社会といったこと以上に経済的側面について考えていない。どちらにせよ、欧州でのこの問題をめぐる議論は行き詰まっているように思える。米国同様、開かれた国境や不法移民の合法化に対して欧州市民の強い支持が存在しない一方、移民への規制強化は広く支持されている。移民改革が長い間滞っている米国の前例から勇気づけられることは何もないが、移民船の悲劇が欧州の態度を軟化させる可能性はあるだろう。
あまり多くの票を失わない程度に人道主義者であろうとする政治家は、現行法の実施強化をしばしば約束する。欧州の警察による努力は、独裁政権が崩壊し機能不全に陥っているリビアによって水泡に帰している。同国は密航の温床となっている。
解決策の1つは、移民の母国を豊かにし、移民となることの魅力を弱めることだ。しかしこれは立派な策ではあるが、すぐに大きな変化を期待できるほど現実的ではない。
多くの貧困国の発展が緩慢にしか進まないなか、欧州の生活は依然として豊かに思える。欧州の指導者は19日のような悲劇を繰り返したくないはずだ。船に詰め込まれた人たちにとって、欧州はまさに幸運の大陸だったということを認識することが、悲劇を繰り返さない第一歩となる。そして、他の先進国同様、欧州も移民から得るものが多いという事実を理解することが次のステップとなる。
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