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ロシアと欧米:強さにこだわるプーチン大統領
2015.4.21(火) The Economist
(英エコノミスト誌 2015年4月18日号)
ロシアのプーチン大統領は、自らの執拗な反欧米的発言に足を取られている。
クリミア編入1年、モスクワで「プーチン展」
今年3月、クリミアのロシア編入から1年を記念した屋外展覧会でウラジーミル・プーチン大統領の絵を見る人たち〔AFPBB News〕
ウクライナ東部の戦闘が(少なくとも4月半ばまでは)比較的落ち着き、ロシア経済が比較的安定化していることで、2つの疑問が生まれている。この戦闘は最悪の状況を脱し、経済状況の改善がロシア政府を落ち着かせると考えてもいいのか? それともこれは、新たな嵐の前の静けさなのか?
ロシアの経済状況は、4カ月前に多くの者が予想していたほど悪くない。
価値の半分を失ったルーブルの相場は安定し、最近の原油価格上昇のおかげもあって、上昇する兆しさえ見えている。
インフレ率は17%だが、その上昇ペースは多くの人が恐れていたよりも緩やかだ。マイナス5%と見られていた今年の経済成長率は、マイナス3%にとどまるかもしれない。
この現況について、ロシアのある銀行幹部は「状況は多くの人が考えていたほど壊滅的ではない」と総括している。
ロシアの敵に強硬姿勢を取る指導者
だが、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、こうした危うい経済バランスを、平和と繁栄を回復すべきとする論拠としてではなく、自身がロシアの敵に強硬姿勢を取っている証拠として利用している。
ロシア国営メディアは、ドルやユーロに対するルーブル高の傾向を、ロシアの壊滅を目指す米国や欧州の敵に対する勝利であると喧伝している。
ロシア政府の語る戦争は、とうの昔にウクライナを越え、西側全体を相手にしたものに移行している。
自国が戦争中だという主張は、米国民にとっては初耳かもしれないが、多くの一般のロシア国民の意識にはすでに叩きこまれている。欧米との戦争の可能性は、いまや世論の大きな関心事となっている。米国を脅威と捉えるロシア国民は81%にも上る。この割合は、ソビエト連邦崩壊以降では最も高い。
ロシア政府が語る物語によれば、ロシアはあらゆる側面――経済、イデオロギー、中東、欧州――で攻撃を受けており、相応の対応をしなければならないという。
イランに対するS-300ミサイルの禁輸を解除するという先日の決定は、その対応の一環だ。
欧州連合(EU)による脅威とされているものについては、ロシアの国営テレビ「チャンネル1」が先ごろ、次のように視聴者に説いた。
「露骨に言うならば、EUはソ連と旧共産圏崩壊後の利権の再分配メカニズムとして生まれ、繁栄してきたものだ。だがある時点で、手中に収めた市場から得られる資源の流れが枯渇し始め、東への拡大が残された唯一の選択肢となった」
さらに、その東方拡大をロシアが食い止めたことから、繁栄のための新たな資源を奪われたEUは、遠からず崩壊する可能性がある、というのがチャンネル1の説明だ。
ロシア自身の行動を米国に投影
この鏡に映したような世界観では、米国はロシアの鏡像であり、分身でもある。キエフでの暴力の扇動、ウクライナ東部での過激なナショナリズムへの支援、紛争への武力干渉といったロシア自身の行動が、米国に投影されているのだ。
ロシア連邦議会のセルゲイ・ナルイシキン下院議長は、最近の寄稿の中で、ウクライナで「軍事・政治的な無謀行為」を引き起こし、平和的解決を行き詰まらせているとして米国を非難した。
「米国は、自国にとって重要なものを手に入れるために、(ウクライナ東部の)ドンバス地方で流血の事態が続くことを必要としている」とナルイシキン議長は書いている。同議長によれば、ロシアに対する制裁と欧米メディアが流すヒステリックな情報は、米国の経済的な「ギャング行為」を覆い隠すためのものだという。
このような対決姿勢を取るロシアの動機と目的は、どこにあるのだろうか? そして、ロシアはいまや、攻撃の連鎖にはまってしまっているのだろうか?
ロシア政府関係者は異常なまでに地政学を口にするが、これらの問いへの答えは、欧米の行動ではなく、ロシア政府が国内でのリスクをどう計算しているかによって決まってくる。
というのも、権力の維持こそが、クレムリンの主たる目的であるからだ。
ロシアのアレクセイ・クドリン前財務相が委託し、シンクタンク「ニュー・エコノミック・グロース」のミハイル・ドミトリエフ氏が率いるロシアの社会学者グループが実施した調査によれば、ウクライナでのプーチン大統領の行動は、国内での不満が増大し、2011年から2012年にかけての冬に街頭での抗議運動が勃発した後、政権の正当性を固める必要が生じたことに根差しているという。
反プーチンデモの苦い記憶
ロシア各地で反プーチンデモ、モスクワでは5万人
2011年から2012年にかけての冬に、ロシア各地で反プーチンデモが繰り広げられた〔AFPBB News〕
当時の抗議運動は、将来性のなさに不満を抱えるロシアの中間層が中心となっていた。
10年間で所得が急速に増大し、生活水準が高まったことで、国民の優先事項は、司法や教育、医療の改善といった望みに移った。そうした望みは、プーチン政権の縁故主義的な国家資本主義では実現できないものだった。
中間層の目には、プーチン大統領は安定ではなく停滞の象徴と映るようになっていた。その結果、プーチン大統領の支持率が低下し始めた。国営メディアへの信頼も揺らいだ。
観測筋の間では、そうした状況が1980年代の半ばになぞらえられるようになった。当時も、不満を抱く知識階級が、ミハイル・ゴルバチョフ氏のペレストロイカを進める原動力となった。ロシアの大都市で起きた抗議運動は、より貧しい地域の経済的・社会的不満と共鳴し始め、表立った社会的衝突に発展する恐れが生じていた。
そうした流れを止めたのが、ロシアによるクリミア併合だ。2011〜12年の抗議運動のリーダーで、プーチン大統領率いる政党「統一ロシア」を「詐欺師と泥棒の政党」と呼んだことが記憶されているアレクセイ・ナワルニー氏によれば、プーチン大統領は、現代的国家の建設の代わりに帝国主義的ナショナリズムを置くことでロシアの政治的将来計画を乗っ取ったのだという。
クリミアの併合により地方は政権の味方となり、2年前に抗議運動に参加していた人の目にさえ、プーチン大統領の支配は正当なものと映るようになった。
ドミトリエフ氏の見るところ、個人的充足という望みが満たされない不満が、国家の象徴的な勝利により和らげられたという。
クリミア併合がもたらした高揚感は、ウクライナ東部での戦闘と経済危機により、欧米に対する被害妄想と防衛的な愛国心に変わり、プーチン大統領の支持率を90%近くにまで押し上げた。
ロシア政府には、欧米を相手に本格的な軍事衝突を起こす余裕はないが、欧米が少しでも弱さの気配を見せれば、それを自らの勝利として主張するだろう。
危機が終われば支持率は低下
ロシアは強さを示すために、核兵器の脅しを振りかざし、北大西洋条約機構(NATO)加盟国との国境の至るところで力を誇示している。
シンクタンク「カーネギー国際平和財団モスクワセンター」のドミトリー・トレーニン氏によれば、プーチン大統領の望みは、核の脅しを本気だと思わせることにあるという。さらにトレーニン氏は、核戦争勃発の危険性は1962年のキューバ危機以来最も大きくなっているとも述べている。
とはいえ当面のところ、そうした脅しの狙いは、欧米に制裁を撤回させることにある。それが実現すれば、ロシア国内では大きな勝利として伝えられるだろう。
こうした背景を踏まえると、ウクライナ危機が解消され、欧米との緊張が緩和されれば、2008年のグルジア戦争後もそうだったように、ロシア国民の目が経済問題と社会問題に戻り、大統領の支持率は下がるはずだ。
ウクライナでの戦闘と欧米との膠着状態が続けば、さらに長期にわたり高い支持率が維持されることになる。
それはプーチン大統領にとってはありがたいかもしれないが、ロシアを孤立させ、経済的に停滞させる危険性もはらんでいる。
ロシアの予算削減の様子は、プーチン大統領の優先順位を知るための良い手引きとなる。政府の維持費と軍事および治安維持関連の支出は、予算全体の40%を占める。その一方で、医療およびインフラ関連の支出は、防衛費の2倍も削減されている。特に手厚い予算を割り当てられているのが、憎悪と攻撃を吐き出す国営メディアだ。
怒りの矛先が変わる日
メディアの攻撃対象は、そのときどきによって変わる。2年前は、移民と腐敗した役人だった。現在では、欧米や「国家の裏切り者」、そして「第5列(集団の中で敵方に味方する者)」が対象になっている。2月にモスクワで暗殺されたリベラル派の政治家、ボリス・ネムツォフ氏もその1人とされていた。
クレムリンの攻撃性は、このように国民への麻酔薬として働くようになったが、麻酔薬が過剰摂取につながり、制御を失う恐れもある。
実際、怒りの矛先がいつの日か、外国の敵からプーチン大統領自身に戻ることも考えられる。ロシア政府のプロパガンダで描かれた米国像がロシアの現実にこれほど似ていることを思えば、なおさらその可能性は高い。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43579
2015.4.20視聴時間 02:04
ギリシャとロシアの接近はEU分断につながる?
ギリシャとロシアは、共に正教会を信仰するというつながりだけでなく、欧州連合(EU)との関係がこじれているという意味でもつながり、連携するかもしれない。そうなった場合にロシアとEUの関係はさらに厄介なものになると懸念されています。 クリス・モリス記者のリポートです。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43586
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