http://www.asyura2.com/15/kokusai10/msg/458.html
Tweet |
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20150408/279708
「The Economist」
核交渉で合意しても、一筋縄では回復しないイランの原油輸出
2015年4月10日(金) The Economist
イランは、1974年の絶頂期には日量600万バレルの原油を生産していた。だがその後に起きた革命や戦争、政情不安、油田の放置、経済制裁などの影響で、今や原油の生産量は同280万バレルまで減少している。今月2日にイラン核問題の解決に向けた枠組みが合意された。
最終的な合意が成立すれば、イランにとってネガティブだったこれまでの傾向が反転すると期待される。原油の輸出が可能になり、世界第4位の埋蔵量を持つ原油生産に外資が導入される。石油消費国で構成される国際エネルギー機関(IEA)は、早い段階で日量80万バレルの増産が可能になると予想している。原油の供給が増加するとの見通しを受けて、4月の第1週、世界中で原油価格が下落した。
だが、イラン産原油が急増すると期待するのは楽観的過ぎるかもしれない。イランは立地に恵まれているうえ、生産コストも低い。だがそれでも課題が山積している。石油需要は世界的に冷え込んでいるし、様々な地域から豊富に供給されている。一方、イランの石油産業は惨状を呈している。投資環境も外国企業にやさしいとは言い難い。
経済制裁は2013年11月以降、段階的に緩められおり、現在は幾分綻びも目立つ。イランは日量100万バレルを超える原油を、経済制裁の締め付けが及ばない20カ国に輸出している。これらの国にはトルコ、インド、日本、韓国、中国などが含まれる。恩恵を享受しているのはこうした国々だけではない。船名を頻繁に変える、便宜置籍船(実際の船主の国籍とは別の国の船として登録されたもの)として操業する、などの手段を講じることで、抜け目ないブローカーはずっと前から制裁を回避する手立てを見つけてきた。
さらに、制裁の解除は一般に、制裁を発動するより時間がかかる。バラク・オバマ米大統領はイランに対する金融・輸出制限を一時的に解除できるものの、制裁を恒久的に終わらせるには極めて猜疑心の強い議会の承認を得ることが必要だ。これに対して、EUの経済制裁解除はもっと簡単だろう。原油の禁輸(2012年以前は日量70万バレルの原油を輸入していた)を停止、出荷保険に関わる制限を緩和し、イランの銀行にSWIFT金融取引システムの使用を認めればいいだけだ。
原油価格下落やインドでの需要の落ち込みを考えると、イランは恐らく浮体式貯蔵施設に3000万バレルの在庫を抱えている。この在庫を取り崩せば、すぐにも輸出を日量30万バレル程度増やすことが可能だろう。だがそれ以上の大幅な輸出拡大は年末まで困難だと、コンサルティング会社、エネルギー・アスペクツのアムリタ・セン氏は指摘する。
イランの石油産業が抱える課題
出所:The Economist/IEA、Energy Aspects
イランは制裁の解除を見越して、油田の整備を熱心に進めてきた。最近、生産能力が上向いているのはこのためだ(図表参照)。だが、1970年代の水準近くまで生産量を引き上げるには長い時間がかかる。セン氏によれば、同国の老朽化した油田の一部は年率15%で生産性が低下している。これらの油田では、増産はおろか生産性の低下に歯止めをかけるためだけでも、年間300億ドル(約3兆6000億円)程度の投資を何年も続ける必要があるだろう。
中国とロシアがイランの原油開発に触手を伸ばしているが、それだけでは西欧企業の穴を埋め切れない。そして西欧企業は設備投資を増やすどころか、必死に削減する手立てを模索しているのが現状だ。
さらに、制裁が解除されるだけでは、西欧企業を呼び戻すことはできない。原油・天然ガスに関わるイランの法律を大胆に変更する必要がある。イランの法律は現在、外国企業が石油開発施設を所有することを認めていない。投資に対する報酬として、販売収入の一部を分け与えるだけだ。この方式は「バイバック」契約として知られる。
イラン当局は、この制度はすでに十分なインセンティブとして働いていると主張する。条件はこれからもっと良くなるらしい。だが外国企業のほとんどは、さらなる詳細が明らかにならない限り、投資には踏み切らないだろう。当局が信頼に足ることを示す一段の根拠も必要だ。
もう一つの障害は、国内の政情である。石油産業のコントロールを巡って、イランの技術系官僚は過激なイスラム革命防衛隊と長いこと争いを繰り広げてきた。これは単なるイデオロギーの問題にとどまらない。革命防衛隊はエンジニアリングサービスを提供する企業を掌握しているからだ。彼らは外国企業を歓迎すべからざる競争相手と見なしている。
最後の関門が、石油輸出国のカルテルであるOPEC(石油輸出国機構)だ。OPECを支配しているのはイランの最大のライバル、サウジアラビアと、スンニ派が優勢な隣国たちである。彼らは、憎むべきシーア派が権力を握るイランが、国際原油市場においてシェアを拡大させることを阻む方法を見つけ出そうとするかもしれない。
したがって、長期的に最も見通しが明るいのは原油ではなく、他の化石燃料である。イランは原油以上に豊富な天然ガスの埋蔵量を誇っている。ガス田は油田ほど荒れ果てていない。EUはロシアから輸入する天然ガスへの依存度を減らしたいと苦闘している。ようやくイランの天然ガスにアクセスできるようになるなら、そうしない理由はないだろう。
©2015 The Economist Newspaper Limited.
Apr 4th 2015 All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。