01. 2015年3月24日 01:51:53
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ギリシャvsドイツ:危険な関係 2015.3.24(火) The Economist (英エコノミスト誌 2015年3月21日号) 戦時賠償に言及し、ドイツの資産を没収すると脅しても、ギリシャの経済的苦境を解決することにはならない。 ギリシャとドイツの首相が初顔合わせ、EU首脳会議 一致点を模索 EU最強の指導者とEU最大の問題児〔AFPBB News〕 ギリシャの危機は、単なる経済的混乱ではない。ますます地政学的な混乱にもなりつつある。今年1月の総選挙後に急進左派連合(SYRIZA)が政権の座に就き、ギリシャ首相となったアレクシス・チプラス氏は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に取り入ったり、ドイツに戦時賠償を求めたりするなど、乱暴な政治的レバーを引っ張るようになった。それがどういうわけか他のユーロ圏諸国から譲歩を引き出すことになると考えてのことだ。 こうした脅迫まがいの言動は、欧州の政治家を激怒させている。チプラス氏には、ドイツのアンゲラ・メルケル首相との2度の会合で事態を落ち着かせる機会があった。 最初は先日ブリュッセルで行われた欧州連合(EU)首脳会議の傍らで行われた会合、2度目は3月23日にベルリンで行われる会合だ。 2度目の会合は、EU最強の指導者とEU最大の問題児との間の厳しい協議になる見通しだ。チプラス氏は、恨みをかき立てる代わりに、目の前の喫緊の課題に力を注ぐべきだ。すなわち、取引を成立させることだ。 ギリシャ政府は目下、むしろ扇情的な政治的愚弄という球を打ち上げることを好んでいるように見える。 ギリシャ政府が繰り返してきた脅し ギリシャの防衛相は、欧州を、ジハード主義者を含む移民であふれさせると脅かした。法相は、ドイツに1600億ユーロ(1700億ドル)の戦時賠償を支払うよう求め、賠償金が支払われなければ、ギリシャはゲーテ・インスティトゥートの建物、さらにはドイツ人の別荘をも没収するかもしれないと警告している。 そしてチプラス氏は、プーチン大統領と会うためのモスクワ訪問予定を4月上旬に繰り上げた。チプラス氏が期待するメッセージは、乱暴であると同時に明々白々だ。プーチン氏は、対ロシア制裁に反感を持つ仲間の正教会国家を喜んで助けるかもしれないというメッセージである。 明らかにギリシャは、自国の利益になるように、ロシアのように脅しを利用できると思っている。歴史には前例がある。米国がトルーマン大統領の下で第2次世界大戦直後にギリシャに支援を提供したのは、ソ連の侵略を回避するためだった。今も、ギリシャがロシアに魅了されることは、北大西洋条約機構(NATO)とEUが最も避けたいことだ。 チプラス氏は危険なゲームをしている。ギリシャ国民の膨らんだ被害者意識を煽ることで(ドイツに対する歴史的主張には一定の正当性がある)、チプラス氏は、すぐに手に負えないほど燃え上がる恐れのある炎をかき立てている。 世論調査は一貫して、過半数のギリシャ人がユーロにとどまるのを望んでいることを示しているが、EUのパートナー諸国がギリシャを不当に、かつ軽蔑をもって扱っていると国民に言うこと以上に、ギリシャ国民の考えを変える良い方法はない。 同様に、ドイツと争うことで、ギリシャ国民は最大の債権者――そしてユーロ圏から猶予を勝ち取るためにその支援を最も必要としている当の国――を遠ざけている。 3月半ばに発表された世論調査によれば、すでに大半のドイツ人がギリシャのユーロ離脱を望んでいる。たとえメルケル氏がギリシャを救いたいと思ったとしても、自国の有権者の最大の望みに抵抗することはできないだろう。 危機からドラクマを生み出すな ギリシャはチプラス氏の指揮下で、自然とゲルマン的な緊縮に反対する傾向があるフランスやイタリアといった国々を遠ざける才覚を発揮してきた。このことは、チプラス氏が万事心得て行動しているという信頼感を呼ぶものでは到底ない。双方にとって最善の結果は、今もやはり、ギリシャをユーロにとどめることだ。 ギリシャのユーロ離脱はハルマゲドンか、損失額80兆円の試算も ユーロ圏諸国との取引が成立しなければ、ギリシャのユーロ離脱が現実味を帯びてくる(写真はギリシャの旧ドラクマ硬貨とユーロ硬貨)〔AFPBB News〕 そして、過去数週間のほとんどの期間は、ギリシャのユーロ残留が最も可能性の高いシナリオに見えた。 チプラス氏は緊縮策を終わらせると約束して政権の座に就いたが、週に約20億ユーロのペースでギリシャの銀行から資金が流出し、資本規制の可能性が浮上すると、先月、態度を覆した。 激しい言葉遣いは少しの間、現実主義に取って代わられ、ギリシャ救済措置の4カ月間の延長と引き換えに改革プログラムが約束された。 ギリシャが資金の枯渇という差し迫った危険に直面する中で、早急に同じような変化が再び起きなくてはならない。ブリュッセルとベルリンでの会合が極めて重要になる。 ギリシャの指導者には魅力があり、メルケル氏とうまくやれる可能性がある――ただし、チプラス氏に脅しを控える用意があり、欧州のパートナー諸国が同氏を信頼できるということを示すことが条件となる。 チプラス氏は、多弁なヤニス・バルファキス財務相をもっと実際的な人物と交代させることで、良いスタートが切れるだろう。また、国家主義の連立パートナーである右派・独立ギリシャ人党を捨てて、より穏健なポタミを取るのも賢明だろう。 国内では、閣僚たちが戦時賠償に関して騒ぎ立てるのを許すのではなく、改革を支持し、SYRIZAの極端な選挙公約がなぜ守れないのかを有権者に説明する必要がある。 チプラス氏の政権下で、ギリシャは他の欧州諸国と取引する機会を無駄にしてきた。近々譲歩しなければ、チプラス氏はチャンスを使い果たしたことに気づく羽目になるかもしれない。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43283
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