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シンガポールのリー・クアンユー元首相が死去−建国の父 (Bloomberg)
http://www.asyura2.com/15/kokusai10/msg/316.html
投稿者 五月晴郎 日時 2015 年 3 月 23 日 11:15:59: ulZUCBWYQe7Lk
 

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NLMSXQ6JTSE901.html

(ブルームバーグ):シンガポール首相府は23日、初代首相のリー・クアンユー氏が同国内の病院で死去したと発表した。91歳だった。初代首相として31年間の在任中、英領だった小さな島をアジア有数の裕福な国家に変貌させた建国の父だった。

首相府の声明によると、リー元首相はシンガポール総合病院で23日午前3時18分(日本時間同日午前4時18分)に息を引き取った。2月5日から肺炎で入院していた。

1959−90年に首相を務めたリー・クアンユー氏のリーダーシップの下で、漁村の島はコンテナ 貨物取扱量や石油掘削装置製造で世界トップに躍進した。同氏はまた、隣国のインドネシアやマレーシアとの軋轢(あつれき)を切り抜け、国内の不安定要素を抑え込みながら、シンガポールを米国の強力な同盟国に育て上げた。2004年以来首相を務めている長男のリー・シェンロン氏は、声明で「沈痛な思いだ」とコメントした。

13年4月に死去したサッチャー元英首相は02年の著書で、「リー氏はほぼ独力で、シンガポールという現代世界随一の経済成功物語の1つを成し遂げた」とたたえた。

リー氏は民間企業をベースに厳格管理された国家運営を推進。外国からの投資を促進し、規律、効率性、クリーンさ、市民道徳などに重点を置いた。シンガポールはムーディーズ・インベスターズ・サービス、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、フィッチ・レーティングスのいずれからも最上位の格付けを得ているアジア唯一の国だ。

厳罰

軽犯罪には即刻罰金、重罪には死刑という厳しい法律を整備した元首相には権威主義の批判もつきまとう。

23年にシンガポールで生まれたリー元首相は、祖父の代にマレー海峡を渡って移り住んだ「海峡チャイニーズ」3世。マレー語、中国語、英語などシンガポールの公用語すべてを操るほか、日本語もたしなむ。

英ケンブリッジ大学で法律を学び、妻と共に弁護士事務所を開いた元首相は、最初から政治を志したのではなかった。アレックス・ジョージー氏の筆になる伝記によれば、元首相は政治を選んだのではなく、40年代の日本による占領にショックを受け、政治の世界に放り込まれたという。元首相は同著で「日本人が私に政治をもたらした」と述懐している。

リー氏は旧宗主国の英国がシンガポールに部分的自治を認めた4年後の1959年に、人民行動党を率いて初めて首相に選出された。シンガポールは63年のマレーシア独立とともにその一部となったが、シンガポールで多数派の中国系住民とマレーシアで主流のマレー系住民との緊張が絶えず、64年の一連の人種暴動を経て、65年にマレー連邦を追放される形で分離独立した。元首相にしては珍しく感情をあらわにし、テレビ放映された演説で涙を流して独立を宣言した。

少なくとも独立後の10年間は、その規模の小ささと近隣諸国の不安定から、独立国としての存続は危ぶまれた。危機感に駆られた元首相は、国軍と産業の育成に力を注いだ。74年に設立した政府の投資会社テマセク・ホールディングスはシンガポール航空や銀行のDBSグループ・ホールディングスなどに出資して重要産業を育成、経済成長を推進した。

原題:Lee Kuan Yew, Singapore’s Founding Prime Minister, Dies at 91(抜粋)

記事に関する記者への問い合わせ先:シンガポール Sharon Chen schen462@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: Rosalind Mathieson rmathieson3@bloomberg.net
Lars Klemming 更新日時: 2015/03/23 07:24 JST  

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コメント
 
01. 2015年3月23日 17:59:16 : nJF6kGWndY

小国を生かし、独裁色の強い優秀な指導者のおかげで、短期間で欧米トップレベルまで経済で成功した国ではあるが

いろいろな問題を抱えており、なかなか楽観はできないな

http://ecodb.net/ranking/imf_ngdpdpc.html
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0MJ0BU20150323
コラム:シンガポール建国の父死去、試される「富と幸福」の両立
2015年 03月 23日 14:25 JST
Andy Mukherjee

[シンガポール 23日 ロイター] - シンガポールのリー・クアンユー元首相(91)が23日、入院先の病院で死去した。建国の父とされるリー氏は、資源の限られた島国を、金融や貿易の一大拠点に発展させた。しかし、こうした疑いようのない功績をもってしても、同氏が遺したシンガポールは幸福とはほど遠いと言える。

リー氏の最大の功績は、シンガポールを豊かな国にしたことだ。独立国家となった1965年から、同氏が政治の表舞台から引退した2011年までの間に、シンガポールの国民1人当たりの所得は米ドル換算で90倍にも跳ね上がった。同期間にこれほど所得を伸ばしたアジアの国はほかにない。香港さえも上回っている。

建国50年をまもなく迎えるシンガポールだが、国民の足並みがそろっているとは言い難い。シンガポール国籍保有者は現在330万人で、その多くはマレー系先住民や中国やインドからの移民の子孫。彼らはリー氏が体現した繁栄をひたすら追求する社会にますます懐疑的になっている。

リー氏の長男であるリー・シェンロン首相が率いる現政権は、野党などへの厳しい統制を緩めた一方、成長至上主義の副産物に頭を悩ませるようになった。それには、所得格差の拡大、外国人労働者と現地雇用者の賃金格差、人口過密化、不動産価格の高騰などが含まれる。

高等教育を受け裕福になったシンガポール人たちは、政府に支出を増やすよう求めるとともに、かつてリー氏が主張していた「国家は国民にとって何が有益かを一番よく分かっている」と主張するのをやめてもらいたいと思っている。リー氏が結成した与党・人民行動党(PAP)の力はもはや盤石ではなく、同党の議員たちですら、有権者の不満を鎮めるため、より穏やかな資本主義を求めている。

振り子が違う方向に行き過ぎてしまうリスクはある。高齢化が進み、労働人口は2020年までに縮小し始める。リー氏が残した遺産の真の評価は、競争力ある国際都市と福祉国家をうまく両立できるかにかかっていると言えるだろう。

*関連記事は(here)
リー・クアンユー元首相が死去、シンガポール建国の父
2015年 03月 23日 07:08 JST
[シンガポール 23日 ロイター] - シンガポール首相府は、入院中のリー・クアンユー同国元首相(91)が現地時間23日午前3時18分、シンガポール総合病院で死去したと発表した。

リー氏は重い肺炎のため2月5日から入院していたが、感染症にかかり容体が悪化。人工呼吸器を装着され、集中治療室(ICU)で手当てを受けていた。

リー氏はシンガポールが英連邦自治州になった1959年に首相に就任してから31年にわたり政権を担当。建国の父とされる。数年前に政治の表舞台からは退いていたが、2011年まで閣内にとどまり、影響力を持ち続けた。リー・シェンロン現首相は長男に当たる。

報道や言論の自由、政敵らに対しては厳しい統制を加える一方、マーケットに対しては実態に則した政策を取った。明確なビジョンを持っていると評価された一方、独裁的との批判もあった。

リー・クアンユー氏の死去と、数年後とみられる現首相の退任で、シンガポールは一時代が終わりを迎えることになる。ただ、産業への影響は少ないとの見方が多い。


02. 2015年3月24日 00:00:54 : dQkfubUk3E
建国の父悼むシンガポール−残したのは繁栄、捧げたのは人生 (Bloomberg)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NLNKQ96K50XZ01.html

 (ブルームバーグ):シンガポールの初代首相で事実上の建国の父、リー・クアンユー氏を悼んでシンガポールは国を挙げて1週間の喪に服する。国内では半旗が掲げられ、ラジオは元首相が残した名言を放送している。

23日早朝に死去した元首相の遺体は23、24日の家族だけの通夜の後25日から国会議事堂に安置される。国葬は29日、その後家族のみに見守られ荼毘(だび)に付されると、首相府が発表した。

長男のリー・シェンロン現首相は父の死の数時間後にテレビ演説し、「多くのシンガポール人にとって、そして実際その他多くの人にとっても、リー・クアンユーはシンガポールそのものだった。父のような人物は二度と出ないだろう」と語った。

政府系投資会社テマセク ・ホールディングス傘下のメディアコープは向こう1週間、通常の番組編成に代えて特別番組を放映する。最大部数を誇る日刊紙ストレーツ・タイムズはウェブサイトのメニューを灰色に変更した。

元首相は晩年、「私は人生の本当に多くの部分をこの国を作ることに費やした。私がしなければならないことはもう何もない」と語ったと、現首相が述べていた。「結局、私は何を成し遂げたのか、シンガポールの繁栄だ。私は何を捧げたのか、私の人生だ」と元首相は述懐したという。

原題:Singapore Enters Week-Long Mourning as Former Leader Lee Dies(抜粋)

記事に関する記者への問い合わせ先:シンガポール Shamim Adam sadam2@bloomberg.net;シンガポール Sharon Chen schen462@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: Rosalind Mathieson rmathieson3@bloomberg.net; Stephanie Phang sphang@bloomberg.net Linus Chua, Yee Kai Pin
更新日時: 2015/03/23 16:20 JST


03. 2015年3月24日 01:34:36 : jXbiWWJBCA


リー・クアンユー氏の輝き失わぬ言葉たち シンガポール建国の父が語った「日本への警鐘」
2015年3月24日(火)  日経ビジネス編集部

「建国の父」とも呼ばれるシンガポールのリー・クアンユー元首相が3月23日、91歳で死去した。独立以来、国家をゼロから築き上げ、東南アジア随一の豊かさを育んだ稀代のリーダーは、かつて日経ビジネスのインタビューに応じている。そこで語られた日本への「警鐘」は、今なお、色あせることがない。
(1999年7月12日号より転載)
日本の誤りは、市場原理に基づいた資源配分に失敗したからと指摘。英語がベースのインターネット普及で米国の優位はさらに続くとも。一方で、アジア的価値観の崩壊については強く否定。貯蓄に励み人間関係を重視する儒教的価値観への信頼は崩さない。
(聞き手は本誌編集長、小林 収)
国際市場に開かれていなかった日本

リー・クアンユー(lee kwan yew、李 光耀)氏
1923年9月 シンガポール生まれ、75歳、49年 ケンブリッジ大学大学院卒業
54年 人民行動党を設立し書記長に就任
65年 マレーシアからのシンガポール独立でシンガポール首相に就任
90年 首相を辞任し上級相に就任

欧米とは一線を画す「アジア的価値観」を重視する東南アジアのオピニオンリーダー。首相辞任後も事実上の「国父」として指導力を発揮している。(写真:清水 盟貴、以下同)
問 アジアには日本を経済発展のモデルにしてきた国が多かったと思います。ところが現在、日本は10年にも及ぶ深刻な不況を経験して、国民、政府とも自信喪失状態にあります。モデルとしての日本の価値は果たして残っているのでしょうか。
答 確かに日本はバブルが崩壊して以来、停滞しています。何がいけなかったのかを考えると、日本の文化というより日本のシステムの問題だと思います。つまり、日本が国際市場に向かって十分に開かれていなかったということです。
 部分的には市場開放しましたが、一方で特定の製品に輸出ドライブをかけました。最初は繊維製品で、次に石油化学製品、船、鉄鋼そして自動車、エレクトロニクスといった具合です。その結果、日本はある分野では極めて生産性の高い国になり、大きなシェアを獲得しましたが、同時に過剰設備を抱え込むようになったわけです。国内市場が保護されており、資源配分が市場からのシグナルに従ってなされなかったために、その配分を間違えてしまったと言えます。
 日本車の品質には何の問題もありません。日本製の半導体やコンピューターの品質にも問題はないのです。問題なのは過剰投資とそれを招いた日本のシステムです。シェア一本槍で利益を無視して長期的にやっていくことは無理なのです。韓国も同じ誤りを犯しました。アジアが得た教訓は、資源の配分を間違えるな、ということです。
過剰投資とシステムに問題。
重要なのは市場からのシグナルを見逃さないこと
問 日本の場合、官主導が長く続きすぎたということですか。
答 そうです。日本人はたくさん貯蓄し、そのお金を通産省や大蔵省が「日本の得意分野」だと見なすセクターの輸出企業に優先的に回しました。追いつき追い越せの時期には、この日本のモデルは良かった。しかし、いったん追いついた後は、市場のシグナルに従って決めなければならない。役所が未来を予測して、それによって決めてはいけないのです。
 この点、市場に聞けという米国流のやり方はとてもうまくいきました。マイクロソフト、シスコ・システムズ、アメリカ・オンライン(aol)、アマゾン・ドット・コム…。こうした米国のベンチャー企業のほとんどはゼロから出発しました。1人のアイデア、せいぜい数人のアイデアから出発して、何千億ドルも稼ぐ企業を作り上げたのです。マイクロソフトの時価総額は3500億ドル、シスコは確か、1000億ドル以上だったと思います。
問 日本には米国株をバブルとみる向きも多いのですが。
答 もちろん利益に対する期待の方が大きいため実態以上に膨らんだ数字でしょう。しかし同時に、アメリカ人が、いかに市場や市場参加者の認識に企業の価値を決めさせてきたかの証でもあります。
 重要なのは、市場からのシグナルを見逃さないことです。例えば、日本企業でもソニーのような企業は、すでにそのことをよく知っているようです。ソニーは組織のリストラを決めましたが、それはただ単に気の利いた新製品を作ることに専念するためではないでしょう。すべての製品がデジタル化されるという流れを読み、それによって、テレビだろうが、電話だろうが、電子レンジだろうが、冷蔵庫だろうが、あらゆる製品にコンピューターを装備して、1つのセンターから集中的に管理できるようにするためなのです。
 ソニーにそうした改革ができるのは、米国で業務を幅広く展開し、米国人と常に交流を行ってきたからだと思います。どこかで読んだ話ですが、1995年に米コンサルタントが、(現社長の)出井(伸之)さんや(現会長の)大賀(典雄)さんなど首脳陣に、その年のアメリカのパソコンの販売台数がテレビを抜いたと話をした時、出井さんは、「ちょっと待った。もう一度言ってくれ」と言ったそうです。
 パソコンがテレビより売れているとしたら、パソコンを動かす「デジタル」の世界はテレビより重要だということになります。それで彼は4年間ソニーの置かれた位置を考えて、リストラ計画を発表したのでしょう。東芝や松下電器産業もソニーの後に続いているようですから、日本企業も教訓に学びつつあるように思えます。
 日本企業にとって難しいのは、ダウンサイジングの速度を速めることでしょうか。だから日本の企業は赤字続きなんだろうと思います。しかし、これから先、技術がますます速く変化するようになると、労働力を素早く、より重要な分野に移動させなければなりません。(国全体での)労働力の流動化はグローバル化に素早く適応するためには不可欠です。
あらゆる面でトップの座にある米国
問 先ほど米国のシステムに言及されましたが、米国は会計、銀行、企業統治(コーポレート・ガバナンス)など様々な分野で世界標準(グローバルスタンダード)を作り上げています。最近では、インターネット技術と英語も加わりつつあります。こうした流れは不可避でしょうか。そして望ましいことでしょうか。
シンガポールはアジアで随一の国際競争力を獲得した

答 望ましいかどうかは分かりません。ただはっきりしているのは米国があらゆる面でトップの座にあるということです。彼らは自分でルールを作るだけの経済力を持っており、実際にルールを作りました。
 もし米国市場に参加したければ、彼らのルールに従うしかありません。米国は世界最大の資本市場を持っているため、欧州や日本の企業がニューヨーク証券取引所に上場するには米国の会計基準や情報公開基準に従うしかなく、英語で財務諸表を作成しなければなりません。それが現実です。
 さらに米国は、ほとんど偶然にですが、インターネットという大きな武器も獲得しました。ネット上の公用語が英語のため、莫大な量の情報が母国語で入手できます。これは他の言語にはないことです。英語に堪能でない人はその分不利になってしまいます。
 インテル会長のアンドリュー・グローブ氏の話はご存じですか。彼は前立腺ガンを患っています。米フォーチュン誌に彼のことが出ていましたが、彼は自分の病気の治療法を決めるのに、まずインターネットで前立腺ガンの最新研究をダウンロードし、医者と治療法について話し合ったそうです。この医学データはすべて英語でのみ手に入るものなのです。英語ができなければ、同じ情報を手に入れるためにおそらく10倍も時間がかかるでしょう。このインターネットというまぐれ当たりのおかげで、アメリカ人は大きな優位性、競争上の優位性を獲得したのです。
どこへ行くにもパソコンを持参
問 リー上級相はインターネットやパソコンについてずいぶん詳しいですね。ご自身でも使われるのですか。
答 (かたわらのノート型パソコンを指さして)私はどこへ行くにもこのパソコンを持って行くんです。というのも、常に連絡を取っているからです。このインタビューの直前にもeメールで2つほど返事を出しました。
 もっとも使い始めたのは、ほんの5年前ですがね。当時から、若い大臣たちはお互いにeメールでメッセージのやり取りをしていたんですよ。私への連絡事項はファクスから流れて来ていたのですが、それだととても遅い。返事を出すにも手書きですしね。それで遅ればせながら若い人たちの仲間に加わったわけです。
 インターネットの最大の利点は、場所を選ばないことでしょう。実は先週、私はフランスのリヨン郊外の小さな町にいました。しかし、コミュニケーションに必要なのは電話線だけでした。それでシンガポールと連絡できるのです。米国や、世界のどこにいる友人とも連絡できます。5ポンド(約2kg)のパソコンと、きちんとした電話回線。必要なのはこれだけです。
問 インターネットが普及していく中で、シンガポールは有利ですよね。中国語とともに英語も公用語で、住民の大半は英語が堪能ですから。
答 我々は運が良かった。インターネットのことを考えて中英2つの公用語にしたわけではもちろんなかったですからね。
問 日本も公用語を2つにした方が良いと思われますか。
答 そう思います。日本はキャッチアップが非常にうまい国ですが、インターネットの世界でキャッチアップするには英語が欠かせません。中学生全員が英語を上手に使えるようになることが重要だと思います。
アジアに流れる儒教の価値は大きい
問 日本を含めたアジア的価値は、こうしたグローバル化の中で崩壊せざるを得ないのでしょうか。
答 いいえ、それは別の話です。欧米人は、アジア経済とともにアジアの価値も崩壊すると見ていますが、それは間違っています。崩壊したのはアジアのお粗末なシステムです。お粗末な銀行監督体制、融資システム、企業管理システムなのです。

 私は「アジア的価値」とひとくくりにした議論はしたくありません。アジアにはイスラム教の価値やヒンズー教の価値、仏教の価値などが混在し、多様だからです。ただ、中国や日本、シンガポール、韓国などが共有している儒教について言えば、その価値の重要性はいささかも衰えていません。
 儒教が重視するのは人間関係です。統治者と被統治者、夫と妻、父親と息子、兄弟姉妹、そして友人同士の「5つの人間関係」です。儒教の価値では、これらの関係は欠くことのできない決定的なものです。
 これは最先端の技術をもってしても代替できるものではありません。最高のコンピューターでも子供を育てることはできない。子供は父親と母親がいて初めて、何が正しく、何が間違っているかを学ぶことができるのです。
 アジアは中南米より早く回復しました。何故でしょう。貯蓄率が高いからです。アジア人は浪費をしません。家にとどまり、家族を支えます。多いところでは国内総生産(gdp)の40%から50%が貯蓄に回っています。貯蓄が多いということは、銀行に流動性があるということです。おかげで金利は低く、したがって回復も早くなるわけです。これは誇るべきアジアの価値です。ですから、私はいつでも、どこでも、アジアの価値、正確に言えば儒教の価値を擁護します。
問 シンガポールには多くのグローバル企業が地域本部を置いています。しかし、最近、巨大企業は国家の壁、特に税制における壁を超えるような動きをしています。将来、国家と大企業または市場との関係はどうなるのでしょうか。
答 今後、国家が留意すべきなのは電子商取引の広がりでしょう。国家が課す税金を逃れる可能性があるからです。理論的にはそうです。
 例えば日本とシンガポールの間でインターネット上の商取引があったとして、それが日本からシンガポールへの輸出だった場合、日本は輸出税をかけることができ、シンガポールは輸入税をかけることができます。しかし、それが単にコンピューターをクリックしただけだった場合、誰がどうやって税金を課するのでしょうか。私には分かりません。国家間で公正な取り決めをしなければならない問題です。
市場の一時閉鎖も小国には選択肢
問 現実にマネーの世界では、ジョージ・ソロス氏のように国家の主権や外交政策に挑戦するような巨大なヘッジファンドが出ています。これも国家主権にとって大きな問題でしょうか。
答 それはその通りです。しかしソロス氏のようなヘッジファンドの場合は締め出すこともできます。ご存じのようにマレーシアのマハティール首相は為替取引を閉鎖して、ヘッジファンドが自国の通貨価値に介入できないようにしました。
 この措置は悪影響も及ぼしたかもしれませんが、マハティール首相はまだ指導者の地位にありますし、何よりも経済は破綻しませんでした。もちろんヘッジファンドは、マレーシアには外国から投資が来なくなると警告していますが、これはあくまでも特定の危機に対処するための一時的措置です。マレーシアへの投資が長期的に減るかどうかはまだ分かりませんが、こうして一発でヘッジファンドの横暴を止めることもできるのです。
 もちろん、日本のような大国がそういうことをするのは考えにくい。なぜなら日本は世界に対して大きな利害関係を持っているからです。市場閉鎖のようなことをすれば、他の先進国すべてとの関係が大きく損なわれ、貿易、投資、その他あらゆることが滅茶苦茶になります。しかし、もっと小さな国にとっては、ヘッジファンドから自分を守る1つの方法ではあるでしょう。
傍白
 生真面目な表情でインタビューに答えていたリー上級相の表情が急にほころんだのは、話題がインターネットに移ったときでした。5年前に始めたとすれば、まさに「古希からのインターネット」です。それも秘書まかせなどにせず、「私はパソコンで仕事をする」と宣言して、どこに行くにも愛用のノートパソコンを手放さないとのこと。
 いくつになっても最新のものにチャレンジする精神の若さの反映ですが、英国で教育を受け、英語とキーボードへの抵抗がないことも見逃せません。ネット社会が広がる中、改めて、上級相も指摘された日本での英語教育強化の必要性を感じました。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20150323/279057/?ST=print 


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