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[ウォール街ラウンドアップ]テロの脅威が映す米軍需株
チュニジアの首都チュニスで18日、観光客が乱射される悲惨な襲撃事件が起きた。死傷者には日本人6人も含まれる。チュニジアのカイドセブシ大統領はイスラム過激派の犯行と断定。米国の敵である「イスラム国」が犯行声明を出したという。またしてもテロの脅威を思い知らされた。
19日の米ダウ工業株30種平均は小幅反落。ドル高・原油安懸念が広がり、利益確定売りに押された。昨年末比でほぼ横ばい圏にあるダウ平均に対し、じわり上昇機運を高めている株がある。ロッキード・マーチンやレイセオンなどの軍需関連銘柄だ。
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話は2年前にさかのぼる。国境をまたぐ通常兵器の取引を規制する初めての国際ルール「武器貿易条約(ATT)」の枠組み作りがニューヨークの国連でヤマ場に入っていた。武器の出入りを管理し、テロリストらの手に武器が渡るのを未然に防ぐ。テロとの戦いの有効打として国際規制への期待は高かった。
外交筋によればシリアやイラン、北朝鮮など一部の国を除いて大多数の国は表向きは賛成してくれたという。意外と消極的だったのが米国だった。武器の国際規制は米軍需産業にとって商売の足かせでしかないからだ。
規制の対象には人が持ち歩けるような小銃も含まれる。当時、米外交関係者は「小銃の所在を管理するだけでも膨大な作業になる」との論陣を張っていた。真っ向から反対はしないが、緩い規制に着地させたいとの思惑が垣間見えた。
それもそのはず。ストックホルム国際平和研究所によると、2008〜12年の世界武器輸出のうち米国は30%を占めた。この間に中国が躍進したが、世界最大の武器供給国としての米国の地位は揺るがない。
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01年に国内で同時多発テロを経験し、米国にとってテロとの戦いは国防政策の柱となった。一方で軍需産業への配慮も欠かさない。ATTは14年末に批准国が50を超えて発効したが、米国はいまだ参加していない。
ATT発効の少し前から、米軍需株が本格的に上昇し始めた。12年末から18日までにロッキード・マーチン株は2.2倍、レイセオン株は92%上昇した。当時、米国は国防予算を削減していた。両社の主力製品は小銃ではなく軍用機やミサイルだが、規制の影響を懸念する声もあったが株価は上がり続けた。輸出が国内受注の落ち込みを埋めたからだ。
軍需産業にとっての追い風は米政府の方針転換だ。政府は16年会計年度(15年10月〜16年9月)の国防予算案(戦費除く)を前年度比で8%増やした。予算増の根拠はテロとの戦いへの備えだ。
テロの脅威の影で、ひそやかに再び脚光を浴びる米軍需産業。長期的には米産業の競争力を高めるかもしれない。平和を求める市民の一人としては微妙なところではあるが……。
(ニューヨーク=杉本貴司)
[日経新聞3月20日夕刊P.4]
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