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[多面鏡]米の原油増産いつ鈍化? 「リグ」稼働減でも、なお時間
供給不安から供給過剰へと局面が転換すれば、市場が注目する材料も変わる。原油市場で在庫量とともに関心を集めるのが米国のリグ・カウント(掘削設備の稼働数)だ。
この統計は米国の資源調査会社、ベーカー・ヒューズが毎週発表している。世界全体の統計もあるが、市場関係者は米国の原油リグ稼働数に注目する。
原油市場では昨年秋から供給過剰(需要不足)が鮮明になった。中国を中心に需要の伸びが鈍る一方で、1バレル100ドル時代に開発された油田から供給が急増したためだ。
その中心が米国の硬い岩盤層から採掘するシェール油田だ。世界で稼働するリグは原油以外を含め約3300あり、その半数は米国に集中している。
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リグ稼働数の変化と相場との関係は単純明快だ。相場高騰とともに掘削数(新規開発)は急増し、相場が下落すれば減る。原油より先に高騰した天然ガスの掘削数は2008年夏に1600台に達し、直近では300を下回った。天然ガス相場の急落でリグは原油開発に移動し、昨年9〜10月に1600を超えた。
原油の掘削数も2月27日の発表数値で1000を下回り、減少率は4割近い。2月から、原油相場が反発した材料だ。
ただ、リグ稼働数の減少はあくまで増産の勢いが衰える兆しにすぎない。「米国の原油生産が減少に転じることは現状で考えにくく、原油の過剰解消は増産ペースの鈍化と需要持ち直しにかかる」(マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘代表取締役)
米エネルギー省の統計で米国の原油生産は日量920万バレルに達した。500万バレル前後で推移していた05〜08年から8割増え、1970年10月に記録した月間最高記録3億1千万バレル(日量換算で千万バレル)に迫る。
カナダ向けの原油や製品の輸出は増えているが、米国の原油在庫は4億バレルを超えてなお積み上がる。
住友商事グローバルリサーチの高井裕之社長は「原油安を容認するサウジアラビアの狙いが米国の生産抑制にあるとしても、米国の安値耐久力は想定以上に強い」と指摘する。
米国の開発会社は生産量の一定割合を先物市場で売りヘッジし、販売価格を確定している。さらに資材の調達先に値下げを求め、「損益分岐点は1バレル7〜12ドルほど下がっている」(高井社長)。しかも相場下落とともに生産は効率の高い優良油田にシフトした。いずれも米国の増産がすぐに止まらない理由だ。
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シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループが上場する米原油先物は現在、23年12月に決済する長期先物まで取引している。足元の需給を映して変動が激しい期近取引に比べ、長期先物の水準は「相場のへそ」といわれる。
「いずれそのあたりで落ち着くだろう」という市場参加者の相場観が集約されるからだ。
23年物の直近の相場は1バレル72ドル前後。ただし、60ドル台に乗せるのは来年以降の取引からで、20年取引でようやく70ドルを超える。先物市場が描くその曲線も、増産鈍化が確認できない現状での相場観だ。
(編集委員 志田富雄)
[日経新聞3月4日朝刊P.22]
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