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プーチンの生き残り策は「嘘と暴力」
2015年03月05日(Thu) Financial Times
(2015年3月3日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
「卑劣な殺人」、米大統領がネムツォフ氏射殺を非難
2月28日、ボリス・ネムツォフ氏の遺体が入れられた袋が置かれたモスクワ中心部のボリショイ・モスクボレツキー橋〔AFPBB News〕
政府が路上で反対派を殺し始める時、一線を越えて、蛮行へ踏み込んだことになる。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は好んで、ウクライナ政権をファシズムだとして非難する。
だが、1930年代のロシアとドイツの政治を本当に彷彿させるのは、プーチン氏がかき立てている攻撃的で自己憐憫的なナショナリズムだ。これが国内の反対派の迫害、そして今や殺害と関係している。
何人も殺害されてきた反対勢力
クレムリン(大統領府)から見える場所で野党指導者のボリス・ネムツォフ氏が射殺された事件については、外部の人間は、プーチン氏が殺害を命じたのかどうか知りようがない。
しかし、プーチン氏と同氏の支持者たちが、ネムツォフ氏暗殺を許容可能にした国家主義的な妄想の雰囲気を作ったのは間違いない。国営テレビは繰り返し、ウクライナにおけるロシアの戦争を批判してきたネムツォフ氏に「裏切り者」のレッテルを張った。
ネムツォフ氏は死ぬ数週間前に、ロシアの新聞に「プーチンに殺されるのではないかと思う」と語っていた。その不安は無理からぬものだ。なぜなら、プーチン大統領を声高に批判する人は死ぬ羽目になる傾向があるからだ。
そうした人の中には、2006年にモスクワで射殺された調査報道ジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤ氏や、同じ年にロンドンで毒殺された元ロシア諜報員のアレクサンドル・リトビネンコ氏が含まれる。
リトビネンコ氏の死に対する審問が現在ロンドンで行われている。勅選弁護士のベン・エマーソン氏は冒頭陳述で、リトビネンコ氏の毒殺に使われた「ポロニウムの痕跡は、ウラジーミル・プーチンの執務室のドアまで真っ直ぐたどれる」と語った。
毒物を投与した嫌疑がかけられたアンドレイ・ルゴボイ氏は、英国に身柄を引き渡されなかった。それどころか、ロシア議会の議員に選出されている。
この暗澹たる過去を考えると、ネムツォフ氏殺害事件に対するプーチン政権の捜査を真に受けることはできない。ウクライナ東部からモスクワの路上に至るまで、暴力を解き放ち、その暴力について嘘をつくことが、プーチン氏率いるクレムリンの標準的手順となっている。
プーチン大統領の嘘
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ロシアのウラジーミル・プーチン大統領〔AFPBB News〕
プーチン氏の嘘は、つじつま合わせの作り話と代替的な現実を提供するだけでなく、同氏が罪を問われないことを顕示している。
プーチン氏の嘘を受け入れることを選ぶ人は、同氏の権力を認めているか、あるいは自分自身の愚かさを証明している。クレムリンとしては、どちらの結果も受け入れられるものだ。
ネムツォフ氏の殺害は、最近の法を無視したロシアの行動パターンに当てはまる。この1年で、ロシアは隣国の一部だったクリミアを強制的に併合した。東部ウクライナの反政府勢力に武器を供与し、その後、反政府勢力が民間航空機を撃墜し、298人を死なせた。
ロシアは外交上の取り決めを破り、停戦協定に違反した。核兵器をひけらかし、英仏海峡の上空に核武装爆撃機を飛ばした。抗議するほど勇敢なロシア人は非難され、今では殺害されるようになった。
プーチン氏は自分の行動は正当な国益保護に駆られたものだということを、ロシア国民の大半と外国の一部擁護者に納得させた。だが実のところ、ネムツォフ氏のような批判派が繰り返し指摘しているように、プーチン氏の行動は国益よりはるかに狭い大義、つまり、自身の生き残りが動機になっている。
2年余り前、モスクワ市街で数千人規模のデモ隊が行進し、プーチン大統領率いる統一ロシアの不正選挙に抗議した。そのデモ行進で筆者が目にしたある横断幕には、「プーチン=カダフィ」というスローガンが書かれていた。リビアの元独裁者のおぞましい最期を考えると、挑発的な対比だ。
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プーチン大統領はウクライナのようなカラー革命がモスクワで起きることを恐れている(写真は2013年12月にキエフの独立広場で行われた反政権デモの様子)〔AFPBB News〕
権力を失うことに対するプーチン氏の不安は、昨年のウクライナの革命でさらにかき立てられた。
モスクワにおける同様の「カラー革命」を阻止し、我が身を守ろうとする決意が、プーチン氏のすべての行動を結びつける赤い糸だ。
ウクライナを巡る西側との対立は、プーチン氏の支持率を高め、反対派を弾圧する口実を与えた。
ネムツォフ氏がモスクワでデモ行進を先導する予定だった数日前に殺されたことは、恐らく偶然ではない。そしてネムツォフ氏の殺害により、プーチン氏が自発的にクレムリンを去る危険を冒す可能性はいっそう低くなった。
プーチン政権の嘘と暴力の過去は、今後、さらなる再評価を促すはずだ。プーチン氏は、ロシア国民と近隣諸国にとって同氏が脅威であることを示した。西側にとっても脅威であると考える方が賢明だ。
西側はロシアの封じ込めに専念を
プーチン氏との対話努力は、概ね無駄に終わった。西側は代わりに、かつてソ連を封じ込めたように、ロシアを封じ込めることに専念すべきだ。
ロシアの封じ込めは、ウクライナに対する経済支援の拡大を意味するはずだ。軍事費の増額とポーランドおよびバルト諸国における北大西洋条約機構(NATO)のプレゼンス拡大も意味するはずだ。さらに、ロシアに対する経済制裁、特に支配層のエリートを狙った経済制裁の強化を意味するはずである。
クレムリンはこれらすべてを「ロシア嫌い」と見なすだろう。筆者の見る限り、これ以上真実からかけ離れたことはない。この10年間で筆者が出会った人のうち、最も立派で印象的な人物の一部はロシア人だった。ネムツォフ氏もその1人だ。
「卑劣な殺人」、米大統領がネムツォフ氏射殺を非難
2012年12月、モスクワで報道陣に囲まれた野党指導者のボリス・ネムツォフ氏〔AFPBB News〕
ロシア人がプーチン氏に反対する運動で大きな役割を担うには、時に畏怖の念を抱かせるような肉体的な勇気と知的な頑強さが求められる。
英国のような安全な法治国家に住んでいる場合は、特に畏怖を感じる。
ボリス・ネムツォフ氏はその勇気の代償として命を落とした。しかし、死の直前に行われた本紙(フィナンシャル・タイムズ)のインタビューで、ネムツォフ氏は前へ進む道を描いていた。
「プーチンは嘘をつく。だが、いつまでも隠し通せるわけはない・・・我々には健全な忍耐が必要だ」
By Gideon Rachman
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43113
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