http://www.asyura2.com/15/kokusai10/msg/208.html
Tweet |
安全策を取り、将来を危険にさらす欧州
このままではウクライナとギリシャが破綻国家と化す恐れ
2015年03月03日(Tue) Financial Times
(2015年3月2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ユーロ圏財務相会合、ギリシャ改革案を承認 支援延長に近づく
ギリシャは支援策の4カ月間の延長に合意したばかり〔AFPBB News〕
経済の世界で停戦合意に相当するものは、支払い能力のない国の債務の繰り延べだ。欧州では、過去3週間でその両方が行われた。
欧州の政治的、経済的外交はもっぱら、戦略的な目的を持たずに、差し迫った大惨事を避けることばかりに集中している。危険なのは、ウクライナとギリシャが破綻国家と化してしまうことだ。
5年間の危機対策の末にギリシャがどうなったか見るといい。ギリシャは経済史上最悪の部類に入るパフォーマンスを見せてきた。にもかかわらず、我々はつい先日、同じ政策の延長を決めたところだ。
ギリシャとウクライナを巡る議論
これは果たして持続可能なのか? 欧州諸国の財務省の実利主義者は、非常に低い金利で融資を際限なく繰り延べできると話している。経済的には、これは債務減免に相当する。だが、政治的には、損失を認識する必要がないために実行するのが比較的容易だ。
軍事紛争において、これに相当する声明は「停戦を十分な頻度で更新すれば和平に至る」というものになるだろう。
この種の議論は、不道徳にして不正直なだけではなく、うまくいかない。融資を繰り延べして、問題がないふりをする「extend–and-pretend」のゲームをプレーしているうちに、実体経済が内部崩壊するのだ。緊縮は所得と雇用の崩壊をもたらした。
金融政策のミスはユーロ圏全域のインフレ率低下を招き、そのために、ギリシャと他の周縁国が通貨同盟の初期に失った競争力を向上させるのが不可能になった。
もし欧州連合(EU)がギリシャに対処したようなやり方でウクライナと対処したら、今後数年で似たような展開を目にすることになると思った方がいい。
湾岸都市周辺で親露派が攻勢、ウクライナ軍「重火器撤収できず」
2月23日、ウクライナ東部ドネツク州ゴルロフカ近郊の検問所を通過する政府軍の戦車〔AFPBB News〕
ロシア、ウクライナ、フランス、ドイツの首脳が交渉したミンスク停戦合意は、多かれ少なかれ、しばらくは有効かもしれない。
欧州諸国はこれを、制裁を延長しない口実、また、新たな制裁を科さない口実として利用するかもしれない。
そして、ひとたび停戦が破綻したら――実際するだろう――、欧州の政策立案を手掛けるエスタブリッシュメントは驚いて愕然としたふりをし、ウクライナは破綻国家、そしてEUとロシアの緩衝地帯となってしまうのだ。
また欧州のエスタブリッシュメントは、東欧のその他地域におけるロシアのウラジーミル・プーチン大統領の領土的野心を抑制することにも失敗したことになるだろう。EUは問題が手に負えなくなることを許してしまわず、早い段階でギリシャの債務とプーチン氏の領土的野心に立ち向かうべきだった。
目先安全策を取ることで、EUは自らの軍事的、経済的安全保障を危険にさらしている。
難しくなった同盟の擁護
筆者は成人して以来ずっと親EUで、通貨同盟の支持者だったが、このように振る舞う同盟を弁護するのは次第に難しくなっている。筆者は昔から、EU懐疑主義は不合理な本能的直感だと思っていた。ところが今、ユーロ圏とEUそのものへの加盟に反対する完璧に合理的な理由が存在する。
過去のいくつかのEUの功績でさえ、損なわれつつある。最も重要なのは、今日の我々の法制度の一部を成す、遠い昔に合意された根本的な権利だ。ここには、人と資本とモノ、そして程度の差はあるがサービスの移動の自由が含まれる。EU域内のどこにでも居住できる権利も含まれる。
現在の金融の単一市場は、金融危機以前のそれほど単一ではなくなっている。英国政府は居住の権利に異議を唱えようとしている。15年前、ユーロは経済統合に向けたプロセスとして始まった。それが今では、出口のない近代版金本位制に成り下がってしまっている。
ここで、次のように自問してみてほしい。ギリシャがいつか、ユーロ圏からの離脱を模索する合理的な経済的利益を持つことはあるだろうか? ここで強調されるのは、「合理的な経済的」と「模索」という言葉だ。
筆者の答えはイエスだ。筆者にとっては、特にひどい政策――景気循環増幅的な緊縮とデフレ的な金融政策――から自らを解き放つ能力が一義的な論拠となる。ユーロ圏から離脱する合理的な理由は、今ほど愚かでなくなるチャンスなのだ。
EUは道義的、政治的な威信を取り戻せるか
EUの政策がシニカルで機能不全なものになるに従い、親欧州か反欧州かというこうした議論において善人と悪人の区別をつけるのが次第に困難になっていく。今から20年前、筆者はEU懐疑派を外国人嫌い、あるいは、それ以上にひどい存在と見なすことをためらわなかった。今では、そうではない。
EUが道義的、政治的な威信を少しでも取り戻すためには、ギリシャの債務危機を解決し、ウクライナのために立ち上がり、自由に使える経済、金融手段を利用してEU自身の地政学的利益を確保する必要がある。EUは現在、どちらの点においても失敗している。
By Wolfgang Münchau
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43073
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。