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コラム:ロシア野党指導者暗殺から得る「教訓」
2015年 03月 2日 15:50 JST
John Lloyd
[28日 ロイター] - 1924年の初夏。イタリアの首都ローマを流れるテベレ川のほとりで、社会主義者の若い政治家が殺害されているのが見つかった。遺体には殴打され鋭利な刃物で繰り返し刺された痕があったという。
刺殺された政治家はジャコモ・マッテオッティ氏。同氏は殺害される少し前に議会で当時の指導者ベニート・ムッソリーニ氏と彼が率いる国家ファシスト党を批判する演説を行っていた。
マッテオッティ氏は殺害予告を受けていたかもしれないが、ムッソリーニ氏は同氏の殺害を命じてはいなかっただろう。複数の容疑者が逮捕されたが、判事は政権派に代えられ、有罪判決を受けた者たちには恩赦が与えられた。国王がムッソリーニ政権を支持したことで、すでに弱体化していた野党による反発は後退を余儀なくされた。ムッソリーニ氏は演説のなかで、彼の名のもとに行われたすべての責任は自分にあると述べ称賛された。ファシズム政権は盤石の地位を固め、その後20年にわたって同国を支配した。
不可能かもしれないが、ロシアのプーチン政権を批判してきた野党指導者ボリス・ネムツォフ元第1副首相が27日に射殺された経緯が、同国政府の上層部につながるかを調べることは重要だ。91年前のローマのように、著名なロシア政府の批判者の1人がウクライナでの戦闘に抗議するデモを率いる予定だった前日に、一部の「愛国者」が今こそ国家をその批判者から解放する時が来たと考えたに違いない。当局は、いくつかの捜査を進めているとしている。
当時のローマ同様、ロシア国民の大半はネムツォフ氏のメッセージに耳を傾けなかった。傾けたとしても反感を抱いていた。実際のところ、現在のモスクワはローマよりも民主的にひどい状態にある。モスクワにはローマと同等な規模の野党勢力は存在せず、上層部の命令に背いても構わないという大胆な判事もいない。そして、プーチン大統領を超える人物はロシアに存在しない。
ローマでの事件とモスクワでのネムツォフ氏殺害は同じメッセージを発している。つまりそれは、プーチン大統領が「第5列」と呼ぶ国内の反政権派には、抵抗する力がないということだ。
だが、最後の望みはある。今回の事件でプーチン大統領は実に困惑しているに違いない。殺人犯たちはプーチン氏の名のもとに行ったと考えていたに違いないが、同氏の名において行われたわけではない。ロシア経済が急速に悪化するだけでなく、旧ソ連構成国であるベラルーシやカザフスタンといった同盟国も、プーチン大統領が取る方向性に不安を隠していない。そんな折、プーチン大統領は西側との対話を再開する可能性を閉ざしたくはないはずだ。
英国の諜報機関、情報局秘密情報部(MI6)のジョン・サワーズ前長官はBBCとのインタビューで、「ロシアが民主主義への道を歩んでいるという都合の良い考えは捨てるべきだ」としたうえで、「核戦争の寸前までいった1962年のキューバ危機を繰り返してはならない。対話を重ねることを通じて対処しなくてはいけない」と述べている。
権力の中枢に近い位置にいたサワーズ氏のような高官にとって、核戦争の恐怖が西側指導者の思考のいかに大きな部分を占めているかを示している。そして、たとえロシアが民主主義国家になるとの考えが錯覚であったとしても、圧力を和らげ、少なくともウクライナでの戦闘を凍結させたり、友好的とはいかないまでも安定した関係の土台を見いだしたりするための対話に向けた希望は見て取れる。現在、それはわずかな望みで不可能に見えるかもしれない。しかしこれしかもう残されていないのだ。
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0LY0GH20150302?sp=true
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