http://www.asyura2.com/15/kokusai10/msg/181.html
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「NATO(EU)支配層+ロシア支配層+ウクライナ支配層」が“欧州の銀行救済←→ロシアクリミア半島再領有の取り引き”を目的に続けられてきた「合作ウクライナ危機」は、ほとんどが一般住民で6千人を超えるほどの犠牲者を出しながら今なおきちんとした停戦には至っていない。
昨年9月の第一次ミンスク合意時点では3千人ほどの犠牲者だったから、ほぼ同じ内容の第二次ミンスク合意に達するまでの5ヶ月間の戦闘行為でまったく無駄な犠牲者を生み出し続けたことになる。
(最大の問題であった露によるクリミア半島併合も、転載する文中に「アメリカを含めて欧米にもクリミアをウクライナに戻す意志も力もなく」とあるように“もう終わったこと”なのである)
このような状況に対する責任は、ひとえに、合作でウクライナ危機を推し進めてきた「NATO(EU)支配層+ロシア支配層+ウクライナ支配層」にある。
分析力などはそれほど悪くないと思っているNHKの石川一洋 解説委員が、「一年前、誰が現在のウクライナの苦境を予想したでしょうか。」と語っているのには驚いた。
1年前どころか、一昨年(13年)秋にマイダン広場で反ヤヌコービッチ運動が高まりを見せた頃から今に至る道筋はそれなりに展望できたし、ヤヌコービッチ政権崩壊(実際は事前に逃げ出した)のきっかけになった1年前の“不可解な虐殺事件”を見聞きした“有識者”なら、間違いなく、現在のウクライナの姿がイメージできたはずである。
「ウクライナ危機」の終結は、それが小なりと言えど原油価格の下支えになっている(ウクライナ危機が解消すれば原油価格はある程度下落)ことから、ロシア・プーチン政権にも少しは打撃になるが、何より大きな痛手を被るのはポロシェンコ政権である。
先の大戦時の日本もそうだったが、戦時は、愛国心が燃え上がり、死をも厭わないほど気分の高揚がみられものだから、生活レベル低下などの苦難も我慢し政権の元に結集するが、戦争が終われば、経済問題が大きな政権批判につながっていく。
ウクライナも、停戦が確固たるものになれば、生活の改善を求める国民の声が沸き上がり、それに応えられなければポロシェンコ政権は崩壊することになるだろう。
EUやIMFは、ウクライナ支援と称してウクライナへの金融支援を行っているが、それは、ギリシャと同じで、欧州の銀行を中心とした債権者に対するウクライナの債務履行や武器購入を支えるものではあっても、ウクライナの国民生活の維持・向上に資するものではない。
転載するNHKの記事にも「瀕死のウクライナ経済」とあるように、GDPは15%のマイナス、通貨グリズナ対ドルレート半減、停電は日常茶飯事という経済状況で、ウクライナの最低賃金はアフリカのチャドと変わらない45ドル/月まで低落したと言われる。
石川解説委員は、
「 ヨーロッパは人口4500万人のウクライナをロシア抜きで支える覚悟はあるのでしょうか。はるかに小さいギリシャでさえも支えきれないヨーロッパに破たんに瀕したウクライナを独力で支える力も覚悟もありません。遠い将来のEU加盟は目指すとしても、EUも甘い夢を与えるのではなく、現実を見つめることが必要となるでしょう。
ロシアの協力なくしてはウクライナ経済の再建はあり得ません。またロシアも債務支払いの繰り延べなどウクライナ経済の再建に建設的な役割を果たすべきでしょう。」
と訴えているが、基本的に同意する。
ロシアは、名目は違うものでいいが、クリミア半島の併合(再領有)の対価として、これまでの債務から10億ユーロ分を帳消しにすべきだと思う。どのみち新たなガス代金として戻ってくる。そして、最恵国待遇の安い料金でガスを供給すべきだろう。
※ 関連参照投稿
「デフォルトを嫌う金融家のため、危機を頼りにする軍需産業のため、「東西」の合作で分断と対立を煽られたウクライナ」
http://www.asyura2.com/14/senkyo162/msg/467.html
「ウクライナ情勢の今後:軍事的対応はハナからなしだが、実質的経済制裁も避けたい欧米先進国:焦点はウクライナ東南部地域の“地」
http://www.asyura2.com/14/kokusai8/msg/169.html
「ウクライナ危機で問われるNATOの意味:存在意義が自覚される契機になることでNATOを救ったロシアのクリミア併合」
http://www.asyura2.com/14/kokusai8/msg/445.html
「プーチン氏は「悪党」:しかし、西側支配層らほどの「悪党」ではないという話」
http://www.asyura2.com/14/senkyo174/msg/742.html
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時論公論 「ウクライナ革命一年 平和は訪れるか」
2015年02月26日 (木) 午前0:00〜
石川 一洋 解説委員
ウクライナで親ロシア派政権が民衆蜂起によって崩壊してから一年が経ちました。ウクライナは東部での親ロシア派との内戦で5700人が死亡し、経済は破綻の淵にあります。ようやく停戦は合意したものの、その先行きは不透明です。
今日はこの1年の動きを踏まえウクライナが危機から抜け出す道筋は見えるのか、その行方を考えてみます。
一年前、誰が現在のウクライナの苦境を予想したでしょうか。
きっかけはEUとの経済連携協定の締結延期に対する抗議行動でした。政権の打倒を目指す革命運動となり、治安部隊と衝突する中、銃撃によって100人以上が死亡し、親ロシアのヤヌコービッチ政権は崩壊しました。まさに流血の中で誕生した革命と言えます。
ヨーロッパへの統合を求める希望とともに、腐敗した、強権的な政権に対する怒りが、大規模な抗議行動の背景でした。
アメリカとヨーロッパは最初から抗議活動そして革命を明確に支援してきました。
革命の成就とともにヨーロッパへの歩みが始まるはずでした。
しかしこうした欧米の動きはロシアの強い反発を招きました。ロシア対欧米という地政学的な争いの炎がウクライナで燃え盛ってしまったのです。
まずクリミアでは、ロシアが事実上介入した住民投票を経て、プーチン大統領が三月一方的な編入を宣言しました。
そして東部二州では親ロシア派とウクライナ軍の悲惨な内戦が始まりました。ウクライナ軍は親ロシア派を武力で制圧しようとしましたが、ロシアの支援を受けた親ロシア派に幾度か手痛い敗北を喫し、ドネツク、ルガンスク二州の一部は親ロシア派の支配地域となりました。地図で見ると小さな地域と見えますが、人口ではおよそ300万人が住んでいた重要な工業地帯の支配権を失ったのです。
ウクライナはこの一年で、クリミアとこの親ロシア派の支配地域をもぎ取られ、引き裂かれたと言えるでしょう。ウクライナのこの現状をどのように見ればよいのでしょうか。
●ウクライナ国民意識の強化
皮肉なことに、領土を事実上失い、ロシアとの厳しい対立の中で、ウクライナの国民意識が形成・強化されました。ウクライナ民族主義の源である西部を除いては、ウクライナでは国民意識は強くなく、そのためウクライナに生まれ、ロシアに移り、ロシアで働くというような実例は独立後もいくらでもありました。私は不幸なことだと思いますが、ロシアを侵略者、敵とする中で、特に若い世代には、明確なウクライナ国民としての意識が根付いたように思います。ロシアはその立場をウクライナで失いました。
●腐敗したままの国家システム
革命の大きな目的は、腐敗した国家システムを立て直し、透明な同時に強い国家システムを造ることでした。1991年ソビエト連邦崩壊とともに独立した時点ではウクライナは、ソビエトを支えた重工業地帯と豊かな穀倉地帯を有し、ロシアよりも早く離陸するのではないかといわれました。
しかし国家システムに深く根付いた汚職の蔓延の中で経済は低迷しました。政治の混乱が腐敗を助長しました。ウクライナ政治の特徴は、大統領権限が弱く、首相の選任権は議会にあるなど、議会の権限が強いことです。ヨーロッパのような安定した社会であれば悪いシステムではありませんが、過渡期にあるウクライナにおいては、財閥の意を受けた政治勢力同士の内輪もめの場となり、真の国益を忘れ、政治混乱を起こしてきました。
革命から一年たってもその体質は払しょくされていません。まさにウクライナの内なる敵とも言える「国家システムの腐敗」との戦いを始めなければなりません。
●分断されたウクライナの領土は回復するのか
ポロシェンコ大統領は「クリミアを必ず取り戻す」との声明を改めて発表しました。
しかしロシアが一方的に編入したクリミアが再びウクライナに戻ることは、近い将来考えることはできません。「ロシアによるクリミア編入を認めない」として制裁はしていますが、アメリカを含めて欧米にもクリミアをウクライナに戻す意志も力もなく、またロシアもどのような制裁を受けようとも手放すつもりはないからです。
東部ウクライナで親ロシア派の支配地域はどうでしょうか。停戦は守られるのでしょうか。今月12日に親ロシア派との間での停戦合意では、15日から停戦し、重火器を二週間以内に撤去させ、住民の被害を防ぐために緩衝地帯を置くとしています。しかしそのいずれもまだ守られていません。要衝デバリツェボをめぐる戦闘ではウクライナ軍は事実上敗北しました。軍事的手段で支配権を回復するのは不可能です。
ここも失われた領土となるのでしょうか。ここでは政治的な手段は残されています。
プーチン大統領、ポロシェンコ大統領、ドイツのメルケル首相、フランスのオーランド大統領も参加したミンスクの停戦合意です。東部ウクライナについては、ロシアもウクライナの領土一体性を認めています。そして重要なのは国連安保理が全会一致でミンスク合意を支持する決議を採択したことです。
つまりプーチン大統領も認めている通り、ミンスク停戦合意は事実上国際法的な義務となっているのです。24日パリで開かれたロシア、ウクライナ、ドイツ、フランスの4カ国外相会議でも改めて停戦合意の厳格な順守で一致しました。
ミンスクでの停戦合意の政治合意を双方が忠実に実行すれば、高度な自治を与えながらもウクライナの主権が維持される可能性はあるでしょう。
いずれにしても停戦の維持が大前提です。しかし停戦の行方は不透明です。
▼ロシアの支援を受け軍事的に優勢に立つ親ロシア派がさらなる支配地域の拡大に動くという危険性があります。
▼一方停戦合意の中で親ロシア派に高度な自治権を与える政治的合意を実行するのは、過激な民族主義が強まる中で、ポロシェンコ大統領にとっても困難です。議会内の強硬派を説得して憲法を改正する必要があります。政治合意が実行されないことをきっかけに停戦が破棄される危険もあります。
●平和維持部隊の導入を
ポロシェンコ大統領が欧州を中心とした平和維持部隊の派遣を提案しました。私は平和維持部隊には賛成です。国連安保理の決議に基づき、平和維持部隊による「停戦と政治プロセス実施」の監視と支援を同時に行うことが最良だと思うからです。
ロシアの同意が不可欠で、ロシアが現実的に建設的に対応することを望みます。
●瀕死のウクライナ経済
停戦が不可欠なのは、ウクライナ経済が崩壊に瀕しているからです。ウクライナの通貨グリブナはドルなどに対してまさに急降下。元々巨額の債務を抱え苦しかった中で、戦費を費やし、外貨準備が底をついてしまいました。
去年第4四半期のGDPはマイナス15%、物価は20%上昇、今年1月の工業生産も去年に比べて20%以上落ちました。
IMFは停戦合意と同時にウクライナに対して175億ドルの融資を決定しまた。事実上停戦が支援の条件となっています。ウクライナ経済の破たんはヨーロッパにも波及しかねないとの危機感もありました。
しかし融資には厳しい改革プログラム、ガス代金など公共料金の値上げ、公務員の人員削減などの実施が条件です。疲弊したウクライナがこの厳しい改革に耐えられるでしょうか。疑問です。
ヨーロッパは人口4500万人のウクライナをロシア抜きで支える覚悟はあるのでしょうか。はるかに小さいギリシャでさえも支えきれないヨーロッパに破たんに瀕したウクライナを独力で支える力も覚悟もありません。遠い将来のEU加盟は目指すとしても、EUも甘い夢を与えるのではなく、現実を見つめることが必要となるでしょう。
ロシアの協力なくしてはウクライナ経済の再建はあり得ません。またロシアも債務支払いの繰り延べなどウクライナ経済の再建に建設的な役割を果たすべきでしょう。
未だに憎悪がウクライナの内でも外でも力を増しています。
しかし平和以外にウクライナを救う道はありません。ミンスク停戦合意のあらゆる条項をすべての当事者が厳格に順守、実行することが必要です。
ロシア対欧米という地政学的な対立の炎をウクライナで燃やしてはなりません。
大国はウクライナの地に平和が戻ることに協力し、ウクライナ国民の希望が一刻も早く実現に向けて動き出すことを望みます。
(石川一洋 解説委員)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/210240.html
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