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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43004
ギリシャとの合意では修復できないユーロの欠陥
2015年02月25日(Wed) Financial Times
(2015年2月24日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ユーロ圏GDP、前期比0.3%減 10〜12月期
ギリシャとユーロ圏の債権者による先日の合意で、差し迫った政治・経済危機の脅威は先送りされた〔AFPBB News〕
筆者はギリシャ危機の展開を観察しているうちに、同じくらい強力な正反対の考えに引き裂かれる感覚にとらわれた。
1つは、通貨ユーロはもう存続し得ないということ。もう1つは、ユーロを救うためにあらゆる手を尽くさねばならないということだ。
ギリシャとユーロ圏の債権者による先日の合意は良い展開だと言える。目前に迫っていた政治・経済危機の脅威が先送りされたからだ。
しかし、過去の経験を踏まえれば、ギリシャとの合意の耐久性は、ウクライナでの停戦合意のそれを若干上回る程度でしかないかもしれない。どちらの合意においても、その根底にある緊張と問題は、巧みに作成された文書で解決できるものではない。
単一通貨ユーロが存続し得ないと思う理由
欧州単一通貨のアイデアが最初に提示された時からずっと、この構想は結局失敗に終わるだろうと筆者は考えていた。この見方は3つのシンプルな命題に基づいている。
第1に、政治同盟という後ろ盾がなければ通貨同盟はいずれ存続できなくなる。第2に、欧州には政治同盟を下から支える共通の政治的アイデンティティーが存在しないため、政治同盟は実現しない。従ってユーロはいずれ破綻するだろう、というわけだ。
この数年間、何人もの人々が筆者の考え方を変えようとし、3つの命題はいずれも浅はかで間違っていると説いてきた。しかし筆者は、いろいろな出来事を観察するたびに、通貨ユーロにはその存続に必要な政治的・経済的な土台が欠けているとの見方に舞い戻ってしまうのだ。
ギリシャ危機はそうした出来事の好例だ。欧州統合に最も熱心な人々は、経済が脆弱なユーロ加盟国の問題を長期的に緩和するには正真正銘の財政移転同盟を立ち上げるしかないと主張している。ドイツのように裕福なところからギリシャのように貧しいところに税収が自動的に流れていく仕組みを作るということだ。
この主張は確かに正しい。しかし、そんな仕組みは決して作られないだろう。なぜならドイツもギリシャも、本物の政治同盟で運命をともにできるほどには相手を信頼しておらず、好意も持っていないからだ。
欧州北部の国々は、南部の国々に条件付きの融資を行うことには渋々同意する。しかし、1つの国の中で行われる類いの自動的な財政移転には同意しない。なぜなら、ギリシャやイタリアといった国々の政治風土はスウェーデンやドイツのそれとは著しく異なるのではないかと北部の国々は思っており、実際その通りだからだ。
通貨同盟で発生すると予想できる問題は、経済にも影響を及ぼす。欧州統合に懐疑的な人々はずっと、イタリアなどの国々はユーロ圏のようなところでは苦労するだろうと予想していた。自国通貨を切り下げたりインフレを利用したりして債務負担を軽減することができなくなるからだ。
かくして現実はその通りとなり、その結果、ギリシャやイタリア、ポルトガルといった国々は失業と債務という重荷にゆっくりと押しつぶされてしまいかねない状況になっている。
ユーロ破綻の恐ろしさ
だが、ユーロ危機には、筆者の当初の確信が疑念に変わった部分もある。筆者は当初、ユーロはまずい構想だからその失敗は朗報にしかなり得ないと思っていた。しかし、今ではそう言い切れなくなっている。
単一通貨ユーロの破綻がもたらす経済面の影響は、その恐ろしさを増しているように見える。もしギリシャがユーロ圏からいわゆる「ダーティー・エグジット」を実行していたら、どんなに控えめに見積もっても、ギリシャ自体の金融危機を引き起こす事態になっていただろう。
ユーロ圏全体も脆弱になっていたはずだ。ドイツなどの国々は、ユーロは強いからグリグジット(ギリシャの離脱)にも耐えられると繰り返し述べている。
しかし、もしギリシャが離脱したら、ギリシャの次に脱落しそうな弱い国に投機筋が視線を送り始めることは確実だ。そしてポルトガルやイタリアの運命に対する疑念が強まれば、金融市場の慢心が一気にパニックに変わりかねない。
ユーロ圏が無秩序に分裂する事態になれば、欧州連合(EU)そのものの存続など、深刻な政治問題も持ち上がるだろう。
ギリシャなど巨額の債務を抱える国々がユーロ圏から離脱することになったら、その時はまず間違いなく、債務の返済を拒否しなければならなくなる。そうしなければ、急激に下落していく新通貨で返済を試みることになり、その負担は離脱前よりもさらに重いものになるからだ。
だが、欧州北部の国々が法の支配するEUの中で、自分たちに対する債務をデフォルトしたばかりの国々とともに穏やかに対応し続けられるという展開は考えにくい。
今こそ必要なEUの結束
欧州はユーロ崩壊によって引き起こされる政治的混乱に対処する余裕はない。実際、欧州諸国が協力することが今以上に急務だった時期はめったにない。ウクライナでの戦争は、欧州諸国が再び、ロシアからの正真正銘の安全保障上の脅威に直面していることを意味している。
確かに、安保上の対応を直接講じるのは、北大西洋条約機構(NATO)の仕事だ。だが、制裁を通じ、ロシアの侵略行為に対する結束した欧州の対応を組織、維持するうえでEUは極めて重要だ。ロシア政府があれほど熱心にEUの結束を崩そうとしているのは、そのためだ。
ロシアによる挑戦は、現時点でEUの連帯を特に重要なものにしている唯一の問題ではない。近い将来、さらに多くの難民が北アフリカと中東から欧州に向かうだろう。EUは共同の対応策を講じる必要に迫られている。
何にもまして、過激な政治思想を持つ右派、左派が欧州で勢力を伸ばしている時に、EUは基本的な自由主義の価値観を徹底させる役割を果たす。
時として、ブリュッセルの政治的な正しさは耳障りで独りよがりなものになる。だが、フランスの国民戦線やスウェーデン民主党といった人種差別主義者や国家主義者の政治的な不適切さよりは、比べものにならないほど好ましい。
だから、ギリシャとユーロ圏が嫌々ながら合意に達したというニュースは、安堵をもたらした。だが、ユーロはしばらく猶予を与えられたものの、筆者はまだ、ユーロは究極的に直すことができないと懸念している。
By Gideon Rachman
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