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飯塚教授は、「イスラム国は、無数にある原理主義組織のなかで、共通する2つの目標を追求し、トップランナーと言える」と言う 
http://www.asyura2.com/15/kokusai10/msg/169.html
投稿者 仁王像 日時 2015 年 2 月 23 日 20:20:35: jdZgmZ21Prm8E
 

「拡散する”イスラム国”の脅威」飯塚正人(東京外大教授)2015.2.11/nhk解説員室
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/208175.html

 (前略)

 彼らの残忍さばかりに目を奪われていると、なぜこの組織がここまで大きく成長し、他のいわゆる「イスラム原理主義者」の支持まで獲得しているのか、理解することはできないでしょう。われわれから見れば「イスラム国」は残虐非道の犯罪者でしかありませんが、彼ら自身は自らをイスラム原理主義者の理想かつ、欧米による軍事攻撃の被害者だと主張することで、支持者を増やそうとしています。したがって、これからいよいよ本格的に拡散していくに違いない「イスラム国」の脅威を考えるうえでは、石油の密売や人質ビジネスによる巨額の収入といった資金面よりもむしろ、他のイスラム原理主義者との関係、また有志連合による軍事攻撃がもたらしかねない反欧米感情という2つの要素に注目しなければなりません。
 
 スンニー派のイスラム原理主義組織はイスラム世界に無数に存在しており、お互いに連携・協力する一方、ライバルとして成果を競い合っています。「イスラム国」もその一つですが、彼ら原理主義者に共通する目標は2つあり、ひとつは聖典クルアーンの規定に忠実なイスラーム法を施工する「イスラム原理主義国家」の建設、もうひとつは、1924年に廃止されたカリフ制を復活させて、カリフをトップに据えたイスラム教徒の統一国家を作ることです。
 「イスラム国」はイスラム原理主義者に共通するこの2つの目標をともに追求してきただけでなく、カリフ制を復活させたことで最も大きな成果を挙げたトップランナーと言えるでしょう。もちろん多くのイスラム原理主義組織が「イスラム国」への支持を表明したり、「イスラム国」への支持・不支持をめぐって分裂したり、という状況が生まれています。

 もっとも、「イスラム国」がいくら自分たちを、イスラムの教えに忠実な理想国家だと主張したところで、彼らの行動がイスラムの教えに反していると見なされれば、他の原理主義者の支持を得ることはできません。スンニー派イスラム原理主義者の大多数は、刑罰以外の理由で同じスンニー派を殺害することを認めておらず、ふつうに考えれば、彼らの蛮行は教えに反していると、身内でも言うべき他の原理主義者から非難されて然るべきところです。
 しかし幸運なことに、これまで「イスラム国」が戦ってきたのは主としてシーア派を中心とする、スンニー派以外のイスラム教徒でした。昨年夏に米国が対決姿勢を鮮明にするまでは、「イスラム国」は欧米よりもはるかにシーア派を憎んでおり、だからこそシリア内戦で、同じシーア派の嫌いのサウジアラビア人の富豪などから巨額の資金援助を受けて急成長することができたのです。一方、昨年6月にカリフ制の復活を宣言して以来、「イスラム国」に敵対するスンニー派の人々はカリフへの反乱者と見なされ、その殺害もイスラム法の定める反乱罪への刑罰として正当化できるようになりました。

他方で、世界を震撼させている人質事件についても、「イスラム国」はイスラム法上の正当化を忘れていません。イスラムには、武装した異教徒がイスラム教徒の支配地に現れた場合、すべての成人男子は侵略者を撃退すべく、生命・財産・言論などを捧げて抵抗しなくてはならないというジハードの思想がありますが、彼らはそれを利用して、人質ビジネスを正当化しています。
 彼らの理屈では、そもそも「イスラム国」の領土に入国ビザも持たすに入って来た外国人の異教徒は密入国者に他ならず、犯罪者として拘束されて当然で、そうした犯罪者の安全を「イスラム国」が保証する義務はありません。無事に釈放して欲しければ身代金を支払うなり、こちらの要求に応ずるなりすべきだろうというのが彼らの発想です。ところが、そうした要求に応じないどころか、「イスラム国」に宣戦布告するとは何事か。「イスラム国」を侵略すると言うなら、人質は単なる密入国者ではなく敵国人となり、相手国が態度を改めない限り、ジハードの教えに従って殺害されても仕方がない、といった理屈になるわけです。

 結果として、「イスラム国」は米国人ジャーナリストの殺害を、米国が「イスラム国」を空爆したせいだと主張し、日本人人質殺害も、「イスラム国」に宣戦布告した日本が悪い、異教徒の攻撃を撃退するのはムスリムの義務である。敵国の国民を殺して何が悪い、という理屈で正当化しました。
 その帰結が「お前の国民はどこにいても殺されることになる」という脅迫あるいは原理主義シンパに対するテロ扇動なのです。「イスラム国」が日本人人質の殺害をイスラム法的に正当化するためには、日本を敵と決めつけて非難する必要があり、敵国であるからには今後も日本人を襲うと宣言しなくてはならなかったと理解すべきでしょう。

 このように、自らを異教徒による侵略に抵抗する英雄かつ、有志連合の空爆の被害者に見せようとする「イスラム国」の戦略は、ヨルダン人パイロット殺害映像の多くが空爆被害の宣伝に割かれていたことにも表れていました。イスラム教徒が欧米による軍事攻撃にさらされれば、世界中のイスラム教徒が抗議デモを行い、反欧米感情が高まるという、これまでしばしば見られた構図を利用して、イスラム教徒一般の支持も得て行きたいという願望の表れでしょう。
 実際、原理主義者でないイスラム教徒の中には、欧米による軍事攻撃に敏感に反応する人たちがいます。したがって今後は、「イスラム国」から帰国する戦闘員はや「イスラム国」のシンパに加えて、有志連合による攻撃に憤る人々が各地で「イスラム国」の扇動に応える危険を警戒しなくてはなりません。

 (後略)
   

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コメント
 
01. 2015年2月24日 00:58:47 : 6RvWO7E8Us
一般の「イスラム国」の戦闘員はどれくらいコーランやイスラム法に通じているんだろうね。コーランに照らした正当性よりも、ただ上の命令に従ってるだけって者も多いんじゃないかな。

(ピ)


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