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プーチンのロシアに関する短い電報
2015年02月23日(Mon) Financial Times
(2015年2月20日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
アラスカは併合するには「寒すぎる」、プーチン大統領が冗談
西側がウラジーミル・プーチン大統領の野心と対抗するためには、その世界観を知ることから始めなければならない〔AFPBB News〕
戦争であれ停戦であれ、ウクライナでのロシアの侵略行為はついに西側諸国の慢心を覆しつつある。
米国政府は、これが個別の地域紛争以上のものであることに気づいた。
欧州諸国――いずれにせよ、その多く――は今、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、大陸の平和を維持してきたルールに基づく秩序に挑戦しようとしていることを理解している。
次に必要になるのは、プーチン氏の野心に対抗する広範な戦略だ。
プーチン大統領の世界観を理解する
それには、ロシア政府の思考、動機、意図の評価が求められる。つまり、かつて海外の大使館から本国に送られた外交公電に見られたような分析である。ウクライナでの軍事的機会主義やロシアのガス供給、ロシア政府が指導する転覆工作や腐敗、核の威嚇は、プーチン氏の世界観のどこに当てはまるのだろうか?
ウクライナ東部のドンバス地方で何が起きようと、西側諸国はまだ当面、ロシアの失地回復主義に対処し続けることになる。
良い出発点は、「包囲」に対するロシア政府の強迫観念だ。ロシアが脅威を感じることについては、目新しいことは何もないし、歴史の記録を見れば驚くこともない。この意識はソ連を結びつける糸の1つだった。このような神経症の中心にあるのは、ロシアの歴史を大きくさかのぼる直感的な不安だ。
好都合なことに、絶えず存在する危険は、支配層のエリートのために愛国的な基盤を提供してくれる。「邪悪で非友好的で脅威を与える」世界と向かい合うと、国の安全と体制の安全は同義になる。
微妙な違いはある。プーチン氏は、ロシアに屈辱を与えようとする西側社会の取り組みを激しく非難しながらも、西側社会は退廃的で、弱く、分裂していると見ている。そしてロシアには依然として西側に友人がいる。プーチン氏は、極右のポピュリストに称賛されている。ウィーンで歓迎されることも確約されている。
2月半ばには、プーチン氏はハンガリー首相を務めるプーチン氏の信奉者、ビクトル・オルバン氏と会うためにブダペストにいた。ロシア政府の目的は、西側の主要国間の対立関係を深め、利用することだ。
一枚岩ではないロシア
ロシアを一枚岩として扱うべきではない。それが実在するものであれ想像の産物であれ、政界および軍部のエリートたちが抱く不安は、ロシア人全体のものの見方を表しているわけではない。
ロシア人の多くは、西側に好感を抱き、その物質的豊かさや文化を分かち合いたいと思っている。ある外交官が表現するように、ロシア人は「外の世界に対して概して友好的」であり、個人的な思いの中では、外国人嫌いのプロパガンダに驚くほど抵抗力がある。
一方、指導部は大抵、自分自身の言葉を信じているように見える。クレムリンの世界には、客観的な真実なるものは存在しない――ドイツのアンゲラ・メルケル首相は身をもってそのことを悟った。現実とは、それが何であれ、ロシア政府にとって心地よく、好都合なものだなのだ。
プーチン氏の権力に対して真実を語ることによって、そうした神話や歪みに異議を唱える覚悟のある者など誰もいない。
ウクライナ、CIS脱退の方針 クリミア駐屯兵撤退へ
2014年3月、ウクライナ南部クリミア半島でウクライナ海軍基地を制圧した後、入り口を警備するロシア兵と見られる部隊。バッジの付いていない緑の軍服を着たこうした兵士は「リトルグリーンメン」と呼ばれた〔AFPBB News〕
プーチン体制は2つの次元で活動している。
1つ目は、中国政府と同盟を築こうとするなり、オルバン氏のような言いなりになる友人を甘やかしたりするなりして、ロシアの力と影響力を拡大しようとする大っぴらな試みだ。
2つ目は、敵対国を狼狽させるように計算された否認可能な介入だ。つまり、クリミアに「リトルグリーンメン」を送り込む、ガス供給を遮断する、バルト諸国で誘拐やサイバー攻撃を行うといったことだ。
前述の外交官の言葉を引用すれば、これら2通りの行動は、「目的、タイミング、効果の点で相互に符号している」。その過程で「西側の主要国を互いに対立させるために、できることは何でも実行される」という。大きな目標は常に、欧米の同盟関係からドイツを引き離すことだった。
ここに潜む大きなメッセージは、西側との恒久的な共存体制は不可能だということだ。ロシアは、それぞれが独自の勢力圏を持つ大国同士が競争する世界において永遠に一国一城の主でなければならないのだ。
だが、ロシアの野心の追求には限界がある。ロシアは不必要なリスクを避けており、力の論理には敏感だ。敵対国が十分な力を持ち、それを配備する用意があることをはっきり示せば、ロシアは後退する。西側と比較すれば、ロシアの方がはるかに弱い国だからだ。
ジョージ・ケナンの長文電報に学べ
読者はすでに、上述の事柄に何か見覚えのあるものを感じ取っているかもしれない。筆者はこれらの考え方や引用を、ほんの少し文体上の修正を加えただけで、ジョージ・ケナンが1946年2月に米国務省に送った有名な「長文電報」から拝借した。
モスクワ在勤の米国外交官だったケナンはソ連の動機と意図の分析を行い、それが冷戦の残りの期間を通じて米国の姿勢を決定づけることになった。
我々は冷戦の再演を目撃しているわけではない。プーチン氏は、他者に売れる地球規模のイデオロギーを持ち合わせていない。ロシア政府の最近の侵略行為は、長期的衰退に機会主義のマントをかぶせているだけだ。ただし、それでもプーチン氏が短中期的に危険であることに変わりはない。
その手法が「封じ込め」として一般に知られるケナンは、戦争には興味がなかった。彼は「威信をかけた頂上決戦」に警鐘を鳴らしていた。ケナンは封じ込めを何よりも政治的、経済的なものと見ていた。
彼は後年、旧共産国の北大西洋条約機構(NATO)加盟に反対したが、西側の未来がその「結束、堅固さ、力強さ」に依存することを理解していた。1946年当時の戦後ソ連の味方は、西側の運命論と無関心だった。物事というのは変われば変わるほど、実は何も変わらないものだ。
メルケル氏と米国のバラク・オバマ大統領は、戦略的忍耐について話している。時として、忍耐が戦略の代わりになるようにも見えた。西側がプーチン氏のロシアと共存する道を見つけ出さなければならないのは自明の理だ。重要なのは、共存の条件である。
ケナンは、戦争を始めることなくソ連に立ち向かうための青写真を描いた。それが今必要とされているものだ。それは戦略的な決意から始まる。
By Philip Stephens
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42989
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