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子供に米国籍を取らせたくない海外在住の米国人
By CHANTAL PANOZZO
2015 年 2 月 20 日 14:00 JST
オーストラリア在住のジェシカさんは、同国で生まれた息子が米国に徴兵されたり、課税されたりする可能性があるため、米国籍を当面申請しないことを決断した Brian Opyd
2011年、米国とオーストラリアの二重国籍をもつジェシカさんは、オーストラリア人の夫とともに住むオーストラリアのパースで初めて出産した。
ジェシカさんが姓を公表しないことを条件に話したところでは、出産当初、彼女は生まれてきた自分の息子に米国のパスポート(旅券)を持たせたいと考えた。しかし、米国籍を持つということは、息子が徴兵されたり、一度も生活していないかもしれない米国に課税されたりするという意味だ。これを考慮した後、彼女と夫は当面申請しないことを決断した。
彼女は「最終的に、米国籍に明快かつ長期的な恩恵がないならば息子に米国籍を取らせることはいいことではないと思った」と語った。
米国籍を持つ片親ないし両親のもとで海外で生まれた人は米国籍を取得する。移民・国籍法の諸要件を満たしていることが条件で、その人が米国市民として何らかの記録があるかどうかは関係ない。しかし実際のところ、一般的に「それは、米国市民として記録される過程であり、結果的にその子供の米国市民権のステータスの政府公認につながる」(米国務省の海外市民サービス担当のカレン・クリステンセン次官補)という。
とは言うものの、海外で生まれた米国市民の子弟は、親たちが米当局に誕生を届け出なくても課税対象になる、とスクワイヤ・パットン・ボグズ法律事務所のグレゴリー・ウォルド氏は指摘する。しかし同氏によれば、米当局がこうした人々を課税しようとする公算はほとんどないという。同氏は「この種の個人の支払うべき納税額はわずかである場合が多い。米財務省にとって、こうした個人を監視するためのコストは、彼らから受け取れる可能性のある税収入を上回るからだろうと想像される」と語った。
そして、ここに海外に住む米国人の多くの親たちが直面するジレンマがある。とりわけ別の国籍を持つ誰かと結婚した人たちだ。親たちは子供の誕生を米当局に登録すべきか、すべきでないか?
一部の米国人の親は登録しない選択をしている。彼らが指摘する理由はさまざまだ。納税に対する不満はその一つだ。米国は居住しているかどうかではなく国籍を持つ者に課税する世界でも数少ない国の一つだ(中国は、海外で働く市民のために新たな税法を施行しようとしており、それが施行されればこの部類に入る)。多くの在外米国人、とりわけ米国に帰国する計画のない人々は、子供が米国籍を獲得したら、決して米国に居住しない場合でも、内国歳入庁(IRS)に全所得を申告することが義務付けられ、米国の税金を生涯支払わねばならなくなると心配する。
ピアスさん(姓は公表しないよう要請した)は、1992年に米国を離れ、現在は英国に住んでいる。彼の子供たちは英国で生まれ、彼と妻(スウェーデン、スイス、イタリアの三重国籍を持つ)は子供たちが英国、スウェーデン、スイスの市民権を得るよう申請した。だが、米国の市民権はない。
ピアスさんは電子メールのやりとりで「結局のところ、米国に住んで働かない限り、米国籍は負担なだけで恩恵ではない」と述べた。そして「海外に住む米国人は、毎年膨大な量の申告を求められるようになってきており、ますます悪化している」と話した。
米国籍を正式に放棄しようとすると高くつく。現在かかる金額は2350ドル(約28万円)で、国務省領事部に支払わねばならない。ただし、18歳から18歳半までの間ならば負担なしで放棄できる(放棄前に課税対象年度ベースで10年間にわたって米国に居住していないことも条件となる)。なぜなら、彼らは「追跡しなければならない在外米国人」とみなされていないからだ。
また、少数の「偶発的米国人(例えば、海外で生まれ、たまたま米国市民になった子供たち)」に朗報がもたらされる可能性がある。オバマ大統領は2日に公表した新年度の予算教書の中で、一部の二重国籍を持つ市民を国籍放棄税の対象からの除外することを提案した。
米国人のジェレミー・ジェーコブソンさんは4月に長男が生まれる予定だが、生まれたらすぐに米国の旅券を申請する計画だ。ジェーコブソンさんは台湾国籍の妻と結婚している。夫妻は世界中を旅しているが、現在は台北を拠点としている。ジェーコブソンさんは「米国の旅券は渡航の柔軟性という面で最も優れた旅券の一つだ」と話す。
日本人と結婚し、日本に住む米国人のケビン・スミスさんは、自分の子たちにちゅうちょすることなく米国と日本の二重国籍を与えた。夫妻は子供たちが移動、生活、そして渡航の面で最大限の自由を持てることを望んでいたからだ。それは東日本大震災が発生した11年3月に役に立った。一家は震災後、福島にある自宅からの避難を余儀なくされ、3年間を米国で過ごした。
スミスさんは「われわれは日本に戻ってきたが、安心なのは、われわれ(夫妻)が日本に永住するか米国に戻ると決めても子供たちが自由に動けることだ」と話した。
姓を明かさないことを条件に取材に応じたフランス在住の米国人キャスリーンさんによると、「自分の米国籍を子供に引き継がせないと考えたことは一度もない」という。ただし、彼女は電子メールで「息子が米国には絶対に住まないと決めたら、住んだことのない国から課税されるより国籍放棄を選ぶべきではないか、という疑問が浮上するかもしれない」と述べている。
(注)筆者のChantal Panozzo氏(海外で出産してもいる)は「スイス生活−わたしが知りたかった30のこと(Swiss Life: 30 Things I Wish I’d Known)」の著者。ほぼ10年間スイスで生活したあと、米国に最近戻った。娘は100%米国人だ。
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米国は今でも「世界で最も優れた国」?―ちょっと薄れる自信
By MICHELLE HACKMAN
2014 年 7 月 4 日 14:50 JST
独立記念日を祝う星条旗が並んだ道(3日、ミシガン州) Associated Press
米国民は今でも自分の国が優れていると思っているが、最も優れていると言う人は減っている――。米独立記念日を前に世論調査機関ピュー・リサーチ・センター(PRC)が発表した調査報告書で、こんな結果が明らかになった。
この調査は1万人以上の米国民を対象に行われた。それによると、「米国は世界の他のすべての国より優れている」と考えている人の割合は28%で、2011年と比べ10ポイント下がった。この割合は2010年以降、低下が続いている。
米国は「他の数カ国と並んで世界で最も優れた国の1つ」と答えた人は全体の58%と、11年の約53%から上昇。「他の国々の方が米国より優れている」と答えたのはわずか12%だったものの、11年の8%から上昇した。
米国が優れていると考える傾向は、民主党員や無党派層よりも共和党員の方が今も強い。だが、過去3年間でこうした認識の後退が最も目立ったのも共和党員だった。
米国は世界で最も優れていると答えた共和党員は、11年は全体の53%に達したが、今回は37%にとどまった。30歳未満の若い世代ではさらに低く、11年の27%から15%に低下した。
2極化進む米国社会―「都会」と「田舎」が対立軸
By LAURA MECKLER AND DANTE CHINNI
原文(英語)
2014 年 3 月 25 日 14:52 JST
【エルドラドスプリングス(米ミズーリ州)】この町一番のレストランはオーナーの方針でアルコールを出さない。出せば牧師をがっかりさせてしまうのではないかと心配なのだ。公立の学校は、教会で聖書の勉強会がある水曜日の夕方には行事を入れないようにしている。民主党支持者はめったにおらず、いたとしても仲間は見つからない。
エルドラドスプリングスは高齢者が多く、住民はほぼ全員が白人で、共和党支持者が圧倒的に多い典型的な米国の田舎町だ。食堂のコーヒーは1杯90セント(約92円)で、2杯目からはただで飲める。だが、ここから北に2時間のカンザスシティーはまるで別世界だ。スターバックスでコーヒーを飲むにはエルドラドスプリングスの2倍の金がかかる。有権者が議会に送り込むのは決まって民主党の議員だ。
米国の都会と田舎はこれまでもさまざまな点で異なっていた。今、その差は広がり続けている。都会と田舎の格差は政治システムを分断しているにもかかわらず、過小評価されていると政治家や学者はみている。
世論調査や消費者データ、人口動態データを分析すると、2つの異なる米国の姿が見えてくる。2つの違いは傾向だけではない。日常生活で体験すること自体が異なっている。都会の住人はスマートフォンを手放せず、外国製の自動車を買い、ファッション誌を愛読している。田舎の住人は教会に通い、銃を所有し、軍を支持している。地域の絆を大切にすることも田舎の特徴だ。
多くの点から見て、共和党支持者が多い「赤い」地域と民主党支持者が多い「青い」地域――政府の役割についての見方も――は、田舎と都会の文化を分ける境界線に沿って線引きできる。
民主党が米国の都市部で優位に立つ一方、共和党は地方の根強い支持に支えられて、下院で多数派を占め、大統領選で民主党と互角に戦うことができる。
セント・アンセルム・カレッジのニューハンプシャー政治研究所のニール・レベスク所長は「米国を分けているのは『赤』か『青』か、ではない」と話す。「都会か田舎か、だ」
エルドラドスプリングスはシダー郡最大の町で、共和党支持者が多い地域にある。2012年の大統領選では、共和党のミット・ロムニー候補がシダー郡の投票総数の72%を獲得した。
エルドラドスプリングスを含むミズーリ州第4選挙区が連邦下院に送り込んだのは共和党のビッキー・ハーツラー議員だ。農場経営者のハーツラー氏はミズーリ州時代に同性婚に反対したことでその名を知られるようになった。 「Running God's Way(神の示す道を行く)」というタイトルの選挙攻略本も出版している。
民主党の牙城カンザスシティーを含む隣の第5選挙区からはエマニュエル・クリーバー氏が選出された。クリーバー議員は黒人で現在5期目を務めている。この選挙区の有権者は10人に3人がマイノリティーで、カンザスシティーがあるジャクソン郡でのロムニー氏の得票率は39%にとどまった。
カンザスシティーでは黒人との結婚に対するネガティブな反応はほとんどないと話すサラ・スターンズさん(中央)と夫、息子 Catalin Abagiu for The Wall Street Journal
米国は必ずしもここまではっきりと二分されていたわけではない。田舎は何十年間も民主党の支持基盤の一部だったし、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の分析では、1993年の時点でも、下院では民主党議員が田舎の有権者の半数以上を代表していた。保守派の民主党議員が田舎の選挙区から当選することも多かった。ハーツラー氏の前任のアイク・スケルトン氏もその1人だ。スケルトン氏は2010年の選挙でハーツラー氏に敗れるまで34年間、議席を守り続けた。
この均衡が崩れ、そのうち、共和党が地方で優位に立った。2013年には下院で共和党議員が田舎の有権者の77%を代表するようになった。しかし、都市部――政府の定義では都市と郊外の両方を含む――では共和党議員は有権者の半数弱を代表するにとどまった。下院で共和党が30議席リードしたにもかかわらず、である。
都市と田舎の分裂は大統領選でも顕著に現れた。WSJが国勢調査と選挙データを分析したところ、1992年の選挙では、民主党のビル・クリントン候補が最も人口が多い50の郡――米国で最も発展している地域――で共和党のジョージ・ブッシュ候補に25ポイントの差をつけて勝利した。2012年には、民主党のバラク・オバマ候補が同じ50の郡で勝利。共和党候補との差は38ポイントに開いた。
今では、ほぼ全ての大都市で民主党候補が大統領選を有利に進めている。これにはミズーリやインディアナ、テキサスなど共和党支持者が多い州の大都市も含まれる。
田舎ではさらに劇的な変化が起きた。1992年には、人口の最も少ない50の郡――米国で田舎とされる地域――でブッシュ氏が18ポイント差で勝利。2012年になると、共和党のロムニー候補が53ポイント差で勝利、民主党候補との差は1992年比で3倍近くに広がった。
選挙分析機関クック・ポリティカル・リポートの政治アナリスト、デービッド・ワッサーマン氏は有機食材を扱う高級スーパーマーケット「ホール・フーズ」がある郡と、チキン・アンド・ダンプリング(鶏肉と小麦粉の団子が入ったスープ)が名物の家庭料理レストラン「クラッカー・バレル」がある郡を調査、民主党大統領候補の勝率の変化を追った。
それによると、1992年にはクリントン候補が「ホール・フーズ」郡の60%、「クラッカー・バレル」郡の40%で勝利、その差は20ポイントだった。この隔たりは4年に1度の選挙のたびに開き、2012年にはオバマ候補が「ホール・フーズ」郡の77%、「クラッカー・バレル」郡の29%で勝利し、その差は48ポイントに拡大した。
ワッサーマン氏は「政治は政策よりも、文化やライフスタイルによって決まっている」と話している。
1960年代にも同様の分裂傾向が生じた。公民権運動が広がり、中絶や公立学校での礼拝などが社会問題化した結果、文化の点で保守的な田舎の有権者が民主党から離れた。
宗教も依然として国を二分する要因となっている。WSJとNBCが最近行った世論調査によると、宗教が「自分にとって重要ではない」と答えた都市部の住民は田舎の住民の3倍に上った。調査会社ピュー・リサーチ・センターが昨年実施した世論調査では、田舎の住民の60%近くが同性愛的な行動は罪だと回答、都市部住民の40%を大きく上回った。
経済も分裂を後押ししている。企業は大量のマーケティング情報を参考に、どこに新規店舗をオープンさせ、誰に向けて広告を打つかを慎重に選んでいる。その結果、田舎の住民は都市部の住民とは異なる消費者としての選択肢を手にすることになる。
例えば、調査会社エクスペリアン・マーケティング・サービシズの調査によると、田舎の住民は平均的な米国人と比較すると、ディスカウントチェーン大手「ダラー・ゼネラル」で買い物をする可能性が47%高いという。
都市の住民がアップルで買い物をする可能性は平均的な米国人と比較して41%高く、Jクルーでは74%、ウィリアムズ・ソノマでは69%高い。カンザスシティーにはこの3つのブランドが全て揃っているが、エルドラドスプリングスには1つもない。
家族経営の農場の多くが自動化された農業とベンチャー企業に組み込まれるにつれて、地方経済は低迷するようになった。製造業の合理化で雇用が失われ、若者のチャンスが減っていった。技術を持つ若者や教育を受けた若者は地元を離れた。
新たに地方にやってくる人はなく、地域の高齢化が進んだ。スマートフォンや同性婚といった文化の変化はさらに受け入れにくくなった。
娘と狩りに出かけるエルドラドスプリングス商工会議所会頭のジャクソン・タフ氏 Catalin Abagiu for The Wall Street Journal
「私たちは言われているとおり、銃を持ち、神を愛する人間だ」とジャクソン・タフ氏は言う。45歳にして、エルドラドスプリングスの商工会議所の会頭を務める。タフ氏が狩猟やターゲット射撃用に所有する銃は20丁を超える。
エルドラドスプリングスはオザーク高原と西部の平原の間の緑豊かな農地に囲まれた土地だ。1、2軒のファーストフード店とダラー・ゼネラルの店舗以外、チェーンストアの店はない。
町はマクドナルドとデイリーコンセプツの脇を通る4車線の高速道路によって二分されている。デイリーコンセプツはチーズ製品のメーカーで、エルドラドスプリングス最大の雇用企業だ。食堂「スクーターズ」は大都市の食堂と違って値段が安く、タバコの煙が充満している。都会では食堂での喫煙は禁止されている。
由緒ある中心街にはサマーコンサート用の野外ステージ付きの公園や、初期の開拓者が利用した温泉水を飲める場所がある。しかし、大通りの向こうは空き店舗ばかりだ。
この数十年間、エルドラドスプリングスの人口は3600人前後で安定しているが、町は小さくなった。
この町にはかつて、食料品店が2軒あった。しかし、1軒がもう1軒を買収し、買収された店は閉店になった。出産数が減り、外科医を待機させておくことができなくなったため、2012年には郡の病院から産科が消えた。老朽化した学校設備を改修するための起債計画は有権者から2度もノーを突きつけられた。
オペラハウスシアターは町でただ1つの劇場だが、6万ドルの募金を集めてデジタル映写機を購入しなければ映画は上映できない。これまでに集まったのはわずか1万3000ドルだ。
大卒の若者が就ける仕事はほとんどないため、大人たちは大学卒業後に地元に戻って家庭を築く若者はほとんどいないとあきらめている。人口が流出し、高齢化と保守化はさらに進んだ。
自分が育った農場は大好きだが都会の生活にも憧れると話すベン・ビッカーズ君 Catalin Abagiu for The Wall Street Journal
17歳のベン・ビッカーズ君はバンドやコーラス、クイズボウル、演劇、スピーチ、討論に参加する、地元の高校の人気者だ。自分が育った農場は大好きだが、都会の生活に憧れている。都会に行けばもっと多くの考え方に触れることができるし、自分と同じようにオバマ大統領を支持する人とも出会える。ビッカーズ君はそう考えている。
「エルドラドスプリングスでは、先生になるか、ガソリンスタンドで働くか、マクドナルドやソニックのようなレストランで働くかしかない」という。
それでも、ビッカーズ君ら住民は地域の絆のありがたみを知っている。高校教師のトレイシー・バーガーさんは12年に当時16歳だった息子を交通事故でなくしたとき、4人の牧師がその日の夜に病院に来てくれた。その後、「町の銀行の1つが私たちのところにお昼を持ってきてくれた。その銀行に預金もしていないのに」と振り返る。
景気が落ち込んでいたこともあって、エルドラド・メキシカン・レストラン・アンド・カンティナが11年に開店することになったとき、住民たちは沸き立った。しかし、教会が30以上もあるのにバーは1軒しかない町である。レストランが酒類販売許可を申請すると、一部の住民から反対の声が上がった。
エルドラドスプリングス最大の教会で牧師をしているジョー・トラッセル氏 Catalin Abagiu for The Wall Street Journal
3人の牧師が市議会に対し、申請を却下するよう迫った。チャーチ・オブ・ゴッド(ホリネス)の牧師、ジョー・トラッセル氏(54)は「アルコールが役に立つことはほとんどない」と話す。市議会は投票の結果、賛成3票、反対2票で申請を承認した。
ラッツィー・ジャグは西部開拓時代の酒場風の装飾を施したバーベキューレストランだ。オーナーのトッド・レナードさん(45)はビールを売ればあるかないかの利益を底上げできると思っている。だが、油で揚げたリブ肉とフライドポテトのサラダを味わう客たちが注文できる一番強い樽入りの飲み物は相変わらず自家醸造のルートビアだ。
店でアルコールを出したら、客が飲酒運転をして死亡事故を起こすのではないかと心配しているのだという。自分が通う教会の牧師や近所の人も失望するかもしれないとも思う。
「私はトッド・レナードだ。生まれてからずっとここで暮らしている」とレナードさんは言う。「『トッドのやり方はいつも正しい』、そう思ってもらいたいんだ」
レナードさんが通う教会は昨夏、投票の結果、同性愛に反対する理由を会則に明記することを賛成多数で決定した。トラッセル牧師によると、同性愛の職員を解雇することになったとき、訴えられないようにするためだという。
トラッセル牧師は「私たちの教会は当然、人々がどんな状況にあっても愛情をこめて受け入れる」と話す。しかし、「こうした行為(同性愛)は聖書に反すると考えている」と続けた。
カンザスシティーのカントリー・クラブ会衆派キリスト連合教会では、掲示板に虹色の旗を掲げている。性的な指向はどうであれ、この教会が人々に「開かれていて、肯定している」ことを示すためだ。
チェース・ピープルズ牧師によると、教会員の約半数はゲイかレズビアンだそうだ。20年前に教会が同性愛者を歓迎すると表明することを決定したときも、同性愛者が礼拝に出席することが議論になることはなかった。
「この教会の古くからの教会員は公民権運動や女性運動に積極的に参加した人たちだ。彼らは(同性愛についても)正義の問題と考えた」とピープルズ牧師は言う。
教会があるブルックサイド地区にはブティックが立ち並ぶ。経済的には何の問題もなさそうだ。イタリア食料品店のベラ・ナポリでは、ノーズリングを着けた若いバリスタがイタリアから輸入したコーヒー豆やパスタを売っている。売れ行きは好調だ。角を曲がったところにあるおもちゃ屋は太陽電池実験セットなどの高級品を販売している。
カンザスシティーは多くの都市と比べて、経済の変化に比較的うまく適応できた。昔は精肉業と繊維製品に依存していたが、今では連邦政府の雇用もあるし、複数の病院や医療情報技術企業のサーナーなどもある。
11年には新しい美術センターがオープンした。ジャズクラブが集まるエイティーンス・アンド・バイン地区は再開発された。アートシアターのチボリ・シネマはデジタル映写機が必要になると、資金調達サイト「キックスターター」を通じて13万ドルを集めた。
カンザスシティーも都会ならではの問題を抱えている。公立学校の評判は最悪だ。市の中心部にある一部の地区では犯罪率も失業率も貧困率も高い。
クリーバー下院議員は09年、都市の衰退を阻止するため極めて民主党的なアイデアを思い付いた。連邦政府の景気対策予算を市の中心に集中的に投入し、エネルギー効率を改善するプロジェクトを実施するというものだ。そうすれば、貧困と気候変動の問題に同時に取り組むことができる。2億ドル近い資金が住宅の耐候化やバスの運行改善などのエネルギー効率化プロジェクトにつぎ込まれた。
エルドラドスプリングスのメインストリートとルート54の交差点 Catalin Abagiu for The Wall Street Journal
カンザスシティー警察は特定の犯罪多発地域で発砲があったときに警察官に自動的に通知するシステムを導入した。こうしたシステムは田舎では受けが悪いだろう。エルドラドスプリングスでは、銃販売店のオーナーは連邦当局の強制捜査を恐れて名前を明かさなかった。
黒人が人口の30%、ヒスパニック系が10%を占めるカンザスシティーも多くの大都市と同様、人種間の緊張という問題を抱えている。市は以前から、トルーストアベニューによって東西に二分されている。かつて、学校は人種分離の目的で、銀行は人種差別的な融資制限のために、この通りを線引きに使っていた。
サラ・L・スターンズさん Catalin Abagiu for The Wall Street Journal
しかし、サラ・L・スターンズさんはこの20年間、敵意を感じたことはほとんどないという。白人でソーシャルワーカーとして働くスターンズさんはアフリカ系米国人の夫と結婚し、2つの人種の血を引く子ども2人を育てている。21年前に夫と結婚したとき、自分の苗字をそのまま使いたいと考えたそうだ。夫の苗字を名乗ることは考えなかったという。
「昔からフェミニストだったと言えるかもしれないわね」
エルドラドスプリングスでは、ジャーミー・カーペンターさん(32)が同じ問題に直面しようとしている。共和党支持者が多いこの町で、ジャーミーさんは民主党を支持している。ボーイフレンドといつか結婚するつもりだが、結婚しても苗字は変えたくないそうだ。
そう思っただけで緊張する、とカーペンターさんは言う。「ここではそういうやり方はしないから」
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