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次の大地震はどこで発生? 2017年「危険度ワースト3」の要警戒エリアはここだ
2017年3月23日ニュース
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去る2月28日、福島沖を震源とする震度5弱の揺れが再び東北や関東を襲った。気象庁は、今回の地震は先の東日本大震災の余震であるとの見解を発表。「3.11」から丸6年が経過した今、日本列島は再び巨大地震の脅威にさらされている。今こそ、風化しつつある震災の記憶を改めて思い起こし、防災意識を見直してみる時期に来ているのかもしれない。そんな状況の中、メールマガジン『週刊MEGA地震予測』で独自の手法による地震予測を配信し続けているのが、東京大学名誉教授の村井俊治氏率いるJESEA(地震科学探査機構)。村井教授は、2017年の日本の地震活動をどの様に予測しているのだろうか。
3.11の後悔をバネに進化を続ける『MEGA地震予測』の最新分析
後悔から始まった地震予測
関西地方を襲った1995年の阪神・淡路大震災に、東北地方に未曽有の被害を与えた2011年の東日本大震災、そして最近では2016年の熊本地震など、大規模な地震が絶えなく発生する日本列島。次なる大地震がいつ、どこで発生するのか……。日本という国に住む者なら誰もが大いに気になることではないだろうか。
そのような多くの要望に応えるように、近年では地震の予測を試みる民間の研究機関が増えている。それらのなかでも、ひと際高い予測的中率で注目を集めているのが、メールマガジン『週刊MEGA地震予測』を配信するJESEAだ。
このJESEAを率いる東京大学名誉教授の村井俊治氏は、もともと測量工学を専門とする研究者だ。測量工学の国際的な学会の会長職などを歴任し、2017年1月にはこの分野において顕著な功績を残した世界の10人に選ばれるなど、数々の輝かしい実績を残してきた村井教授が、全くの畑違いとも言える地震予測の研究を始めたのは、長らく勤めた東京大学を定年で退官した後の2002年のことだった。
「地震予測は、これまで誰も成功していない最も難しい科学技術。なにより地震が多い日本という国にとって、とても有益な研究になるのではと思い、“じゃぁ死ぬまでの間、この研究に打ち込もう”と決めました」(村井教授・以下同)
村井教授が着目したのは、地震発生と地殻変動との相関関係。そこで、過去に起きた162件のM6以上の大きな地震について改めて検証を行ってみたところ、すべての地震発生時において、事前に何らかの異常が現れていることが確認できた。
やはりこれは地震の予測に使えそうだ……そう確信し、その後も地道な研究を続けていた村井教授だったが、ある時、東北地方の各地に大規模な地震の前兆とみられる、地表の異常な動きが現れているのを発見する。
「これは間違いなく大地震の前兆だと思いました。しかし当時の私には、その危険を伝える媒体も手段もなかったですし、たとえ情報発信ができたとしても、地震予測の分野において実績も知名度もなかった私の話など、誰も信じてはくれないのは明らかでした」
為すすべなく悶々とした心境のまま、迎えてしまった東日本大震災。大地震の前兆を捉えながらも、それを減災に活かせなかったことは、後々まで忘れられない痛恨事となった。しかしそのいっぽうで、「自らが研究を重ねた地震予測で、今後また起こるであろう大地震の被害を少しでも抑えることができれば……」という想いも新たにした村井教授。その後の2013年1月にJESEAを立ち上げ、メルマガ『週刊MEGA地震予測』の配信をスタートさせた。
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MEGA地震が変えた「予測」の常識
列島各地の地表の変動から大地震発生の前兆を捉える、村井教授の地震予測。各地点がどれだけ動いたかは、国土地理院が全国約1300か所に設置している電子基準点から得られるデータを参考にしている。
電子基準点からは、地球上で最も動かない点である地球の重心を原点とした各地の地心座標系の座標値(X,Y,Z)が送られて来る。そのデータを積み重ねることで、各地点の地表が水平・垂直方向にどれだけ動いたのかが分かるのだ。
「地球の表面は絶えず動いています。それが1〜2p程度なら問題はないのですが、場所によっては短期間で4〜5pと異常に動くところもある。また日々の動きは小さいものの、実は徐々に同じ方向へと大きく動いている地点もあります。そういった短期的・長期的変動を、様々なパラメーターを用いて分析することで、地震の前兆を捉えようとしているのです」
電子基準点から得られる座標値(X,Y,Z)の意味
従来の地震学による予知と自らが行う地震予測との違いについて、村井教授は医者と患者の関係になぞらえて、こう説明する。
「従来の地震予知は、患者の過去の病歴を調べて、それだけを材料に今後どうなるかを言っているようなものです。でも私の地震予測は、電子基準点のデータから現在の地球の“健康診断”をし、その結果に基づいて予測をしているわけです」
このようにして、測量工学的アプローチによる地震予測を確立した村井教授だが、予測を公開し始めた頃は「地震学の素人がこんなことをやっていいのか」という負い目も、少なからずあったという。
そんな村井教授を後押ししたのが、プレートテクトニクス研究の第一人者と知られ、東京大学地震研究所で長年教授を務めた上田誠也東京大学名誉教授の言葉だった。
「上田さんは“従来の地震学は地震のメカニズムこそ研究してきたが、地震の前兆を捉える研究はしていないので、地震予知ができないのは当たり前だ”と。そのうえで“村井さん、期待しています”とおっしゃってくださったんです。この言葉には、大いに勇気づけられました」
Next: 村井教授が予測する「2017年ここが危ない」
南関東、東北、日向灘…村井教授が予測する「2017年ここが危ない」
さて、地球の表面は絶えず動いていると話す村井教授だが、殊に東日本大震災の発生後は、その動きが活発になっており、日本列島のあらゆる場所で、いつ大きな地震が起きてもおかしくない状況であるという。
「そんな日本列島のなかでも、水平方向における変動が最も大きいのが東北地方。注意すべきなのは、動きが激しい箇所よりも、動きの強弱の境目となっている箇所で、そういう地点は地殻が断裂し地震となりやすいんです」
また東北地方は、垂直方向の動きで見ても、日本海側が沈降するいっぽうで太平洋側は隆起するという、異常な動きが続いているという。
「こういった場合、沈降する地点と隆起する地点の中間となる箇所が、歪みがたまりやすい。東北地方の背骨ともいえる奥羽山脈一帯は、地表の変動こそ目立ちませんが、そういった周辺の状況から判断すると、大きな地震の揺れを起こす可能性が大いにあります」
いっぽうで、メルマガ『週刊MEGA地震予測』において、最も警戒度の高い“レベル5”に現時点(2017年3月)で唯一指定されているのが、南関東周辺のエリアだ。
「このエリアでは2016年の6月から9月にかけて、多くの地点で一度に5p以上の大きな動きが観測されるという“一斉異常変動”と呼ばれる現象が、5回も発生しました。この一斉異常変動は、東日本大震災が起こる前の東北地方でも発生しており、そのことを考えると非常に危ない状況です。また、昨年9月以降は静謐状態が続いているのも、大いに気になるところ。この静謐期間が長くなればなるほど、地震の規模が大きくなりかねないからです」
2016年に南関東周辺で発生した“一斉異常変動”
東日本大震災の前に宮城県で発生した一斉異常変動
さらに、村井教授がその動きを特に注視していると語るのが、2017年3月上旬にもマグニチュード5.2の地震が起きた日向灘周辺だ。
「海上保安庁が海底に設置した海底基準点による観測で、南海トラフの広範囲で大きな地盤変動が発生していることが明らかになりました。南海トラフでは将来的に、南海地震・東南海地震・東海地震という3つの地震が連動して起きるとされていますが、過去の事例を紐解くと、それらの3連動地震の前には必ず日向灘で地震が発生しています。よって、このエリアの動きも要警戒と言えるでしょう」
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予測のためなら自費で電子観測点を設置
このように列島各地で大地震発生の危機が迫るなか、さらなる予測精度の向上を図るべくJESEAが進めているのが、プライベート電子観測点の設置・拡充だ。
実は国土地理院が設置した従来の電子基準点からは、丸一日分の動きを平均化したデータしか得ることができない。この場合、もし数時間単位で大きく地表が動いたとしても、その後すぐに揺り戻しの動きがあれば、一日分のデータとしてはあまり変動のないものに丸められてしまい、その地点で実際に起きた異常を捉えることが難しくなってしまう。
その点、自前で建てるプライベート電子観測点は、その地点がどのように動いているのかを、1時間や3時間といった短いタームでの平均値で出すことができる。さらに、国土地理院が建てた電子基準点からのデータが通常2週間後に公表されるのに対し、プライベート電子観測点からのデータはタイムラグなしで得ることができ、すぐ分析にまわすことができる。
「大地震の直前にはプレスリップ(前兆すべり)という、異常な地殻変動が必ず発生します。プライベート電子基準点によって、この動きをリアルタイムでキャッチすることができれば、“数日後に地震が起きる”といった短期的な地震予測も可能となり、より多くの命を救うことができるのではないかと期待しています」
2015年には小田原・大井松田の2地点に、このプライベート電子観測点をJESEAが自費で建てたことに加え、4月までに全国16か所のNTTドコモの携帯電話基地局内にも、地殻変動を捉えるプライベート電子観測点が順次設置される予定だ。
「それらにくわえて、近日中には都内にも新たなプライベート電子観測点を自費で建てる予定です。それが完成すれば、大地震の発生が懸念される日向灘・南海・東南・東海・首都圏といったエリアを、リアルタイムで監視できる体制が整います」
また、これまで研究を重ねてきた地殻変動による地震予測以外にも、今後は大地震発生の直前に発生するとされるインフラサウンド(非可聴音)を利用した予測も併せて展開できればと、目下のところ研究を重ねているとのこと。予想精度のさらなる向上を目指して、新たな試みにも貪欲に挑戦し続ける村井教授は、自らの今後の活動について意気込みをこう語る。
「地震予測の世界はまだ発展途上ですから、予測が外れてご迷惑をかけてしまうこともあるかもしれません。しかし“異常を公表するも外れる”のと、“異常を公表せずに被害者が出てしまう”のとでは、後者のほうが罪深い行為だと思うのです。ですから私は、予測が当たる、当たらないといった声に惑わされることなく、もし異常を見つけたら恐れずに“異常である”と発信する姿勢を貫いていきたいと思っています」
地震予測は総じて眉唾物という既成概念も幅を利かすなか、それでも村井教授は東日本大震災で味わった後悔をバネに、そして「多くの命を救うことに繋がれば」という想いを胸に、日々情報を発信し続ける。誰もが未だ成功していない“完全なる地震予測”。それを成し遂げる日が訪れるまで、村井教授の“震災後”は終わらないのかもしれない。
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