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「大地震が来ることを前提に暮らすべき」と平田直氏(C)日刊ゲンダイ
注目の人 直撃インタビュー 東大地震研究所・平田直氏 「首都直下型の予知は不可能」
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/178923
2016年4月11日 日刊ゲンダイ
東日本大震災から5年が経過し、日本列島は平穏を取り戻したかのように見えるが、本当にそうか。地震予知の“権威”である東大地震研究所地震予知研究センター長の平田直氏は近著「首都直下地震」(岩波新書)で改めて警鐘を鳴らしている。仮に首都直下地震が起きた場合、1都3県で最悪約2万3000人の死者が出るといわれている。最新の発生可能性と対策は――。
■今も続く地殻変動
――東日本大震災から5年が過ぎ、地震は減っているように感じますが。
ゆっくりとした地殻変動は今も続いています。自然現象としては、まだ終わっていません。あの時は首都圏でも街の電気が消え、エレベーターも止まって、暖房も止まった。5年経って、当たり前のように日常が戻りましたが、忘れてはダメです。
――近著では「東日本大震災発生後、『ひとつ間違えれば、首都直下地震が起きていたかもしれない』と思った」と書いています。
関東では関東大震災というマグニチュード(M)8程度の地震が起きて以来、それほど大きな地震は起きていない。みな、油断しているというか、忘れてしまっている可能性がある。大きな地震が来ることを前提に暮らすことが大切です。
――「首都直下地震」とはどのようなものですか。
首都圏に大きな被害を及ぼす可能性のある地震です。そもそも、理学のどの教科書にも書いていない言葉で、防災のために行政が使っている。防災、減災の観点から、どういう地震か一般の方にも広く知ってもらうために「首都直下地震」と呼んでます。
――最も気になることですが、そもそも予知は可能なのでしょうか。
残念ながら、今の科学技術では予知できません。ただし、将来、予知できる可能性のある地震もあります。
――予知できる地震はどのようなものですか。
東海地震の予知はできる場合もあるが、できない場合もある。プレートにどういう力が加わっているかある程度予測できて、どういうメカニズムか分かっているものについては、正しくモニターして前兆を察知すれば予知できる可能性はある。ですが、まだ現状では「地震の起きる可能性が高くなった」とは言えても、ぴったり「何日に起きる」と言うことはできません。
――政府の地震調査委員会は今後、M7クラスの首都直下地震が「30年以内に70%」の確率で起きると指摘しています。
これは「統計的な理解」に基づいて発生を確率的に予測しているものです。南関東の広い範囲でM7クラスの地震は、明治から100年の間に5回起きています。過去100年に5回起きたということは、将来の100年でも5回くらい起きる可能性はあるということです。
――この数字の根拠は。
100年に5回ですから、100を5で割れば20です。しかし、地震は20年ごとに起きているのではなくて、発生は不規則。単純に100年に5回を、30年に換算すると、0.7回、70%となるわけです。
――30年となっているのは、どうしてですか。
人が生きているうちに1回くらいは――という意味です。決して30年後に起きるかもしれないというわけではなく、今日かもしれないし、明日かもしれない。
――2012年には「4年以内にM7地震70%」と予測して物議を醸しました。
当時、東北地方太平洋沖地震の影響を受けて、関東で地震が起きやすくなっていたのは、今でも事実だったと思っています。M7の地震は起きていませんが、現にM6を超える地震は起きているし、M5やM4の地震は非常にたくさん起きています。今はだんだん元の状態に戻っていますが、決して安心できるわけではありません。
耐震基準のチェックと生き延びるための水確保
東日本大震災後の帰宅混雑時の様子(C)日刊ゲンダイ
――これまで、たくさんの専門家が地震の予測をしてきました。
文化としてはいいと思っています。科学として正しくないことはいっぱいありますが、いろんな人が予測することによって、みんなが地震に備えてくれればいいと思います。
――ただ、不安をあおることによって、ミスリードされてしまう可能性もあります。
お医者さんは“エビデンス”に基づいて治療を行います。地震の“エビデンス”は、過去100年に5回、M7の地震が首都圏で起きている、ということ。これは堅い。ですが、「X日にM7の地震が来る」なんていうのは、科学ではありません。そこははっきりさせておく必要があります。
■日本海溝の海域に150カ所の観測点
――東日本大震災後、対策として何か進んだ点はありますか。
東北地方太平洋沖地震は海で起きましたから、海域に観測点を増やしました。日本海溝の海域に海底ケーブルで150カ所の観測点を作っています。
――それでどう変わったのでしょう。
東日本大震災は津波の被害が大きかった。海底ケーブルには津波計がついているので、津波がどういうふうに伝わって、あと何分後にどこに何メートルの津波が来るか、観測することができます。沿岸の人にリアルタイムで伝えることが可能になった。避難行動には役に立つと思います。
――「緊急地震速報」の精度も上がっているといいます。
これは地震が起きることを予知していないが、揺れることを予測しています。原理的に10分前に教えることはできませんが、10秒前くらいなら可能で、非常に役に立つ。速報が鳴ったら、まずやるべきことは身の安全を確保することです。
――首都直下地震でも「緊急地震速報」は有効ですか。
首都直下地震の場合、猶予時間は2、3秒しかない。カタカタと感じるのと、スマホが鳴るのはほぼ同時です。大切なことはカタカタと揺れ始めた時に、どうするかをあらかじめ考えておくこと。小学生は月に1度、防災訓練をやっていて、机の下にもぐったり、ヘルメットをかぶったり、クッションで頭を防いだりしています。その点、大人はやっていないから、危ないですよね。
――現実に地震が起きた時、どう対処すべきですか。
発生から最初の3分でいったん揺れは収まる。その次にどうするかが重要です。もし、自分の住んでいるのが、1981年の耐震基準の前につくられた古い家で、耐震補強していなかったら、すぐに倒れてくるかもしれません。その場合は一刻も早く屋外に避難しなければいけない。
――現在の耐震基準で建てた家ならどうでしょうか。
その場合、震度7でもすぐに倒壊することはほとんどないと思います。だから、慌てて外に出て、上からガラスが落ちてきて、けがをするほうが危ない。むしろ、屋内にとどまったほうがいいでしょう。自宅でも職場でも、今、自分のいるところがどういう場所なのか、あらかじめ知っておく必要があります。
――中央防災会議が先月まとめた応急対策では、仮に首都直下地震が起こった場合、救助が必要な人7万2000人、帰宅困難者800万人が発生すると想定しています。
東日本大震災時に起こった大渋滞を見れば分かりますが、首都圏でいったん大きな地震が起きると、救助が必要なところに行くのに時間がかかる。たとえ、14万人の救助部隊が投入されても、3日間は誰も助けてくれないと考えて、自ら準備をしておかないといけない。生き延びるために一番必要なのは水で、3日間分を確保しておくべきです。企業は一斉帰宅を抑制する必要がある。そのためには、社員がむやみに家に帰ることがないよう、社内に備蓄をしておかないといけません。
▽ひらた・なおし 1954年、東京都生まれ。東大理学部地球物理学科卒。東大地震研究所教授。文科省首都直下地震防災・減災特別プロジェクトリーダーなどを歴任。今年4月からは東海地震判定会会長を務める。専門は観測地震学。
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