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巨大滑り、なぜ浅い部分で
東日本大震災5年、プレート観測 固着域、ひずみ蓄積/水が膨張、潤滑油に
東日本大震災で東日本沿岸に未曽有の大津波をもたらした大きな要因は、巨大な岩板(プレート)が、海底直下の浅いところで大きく滑ったことだった。それまで海底の深いところで起きると考えられていたプレートの滑りが、予想外に浅いところで起きたのはどうしてか。震災5年の節目を控え、その要因を探る新たな観測が動き出した。
東北大学と海洋研究開発機構などの共同チームは昨年9月、宮城県沖約200キロメートル付近で、日本海溝を挟む2つのプレートにそれぞれ観測装置を設置した。プレートが地震を起こさずにゆっくり動く「スロースリップ」を観測するのが目的だ。
装置の間隔は約10キロメートル。海中に音波を出して通信し、互いの距離を精密に測定する。スロースリップによってプレートが動くと距離が変わり、滑り方を継続的に追跡できる。今年9月には、福島県沖にも設置する。
東北大学の日野亮太教授は「スロースリップの解明は、震災の起きた仕組みの理解につながる」と指摘する。震災は、スロースリップと地震が連続して起きた。まず長期間スロースリップが起き、3月9日にマグニチュード(M)7.3の地震が発生。その後「余効滑り」と呼ばれるスロースリップが続き、11日にM9の本震に襲われた。現在も続く本震の余効滑りを観測し、その特徴を探ろうとしている。
東日本の太平洋の海底では、海側の太平洋プレートが日本海溝のところで陸側の北米プレートの下に潜り込み、西に向かって進んでいる。海底深くに2つのプレートがくっついた固着域があり、プレートの移動によってそこにひずみがたまる。耐えきれなくなると一気に滑って地震が起きる。これが従来考えられていたメカニズムだ。
実際、宮城県沖では約30年ごとに深いところを震源とするM7級の地震が起きている。地震で解消しきれないひずみは、スロースリップで解消されると思われていた。
今回の震災は、こうした想定を覆した。日本海溝のほぼ直下、海底に近い浅い部分が約50メートルも滑ったことがわかっている。過去のM9級の地震では、浅い部分に大きな滑りはみられなかった。
本震の震源は約20キロメートルの深さにあった。なぜ、それよりも浅いところが大きく滑ったのか。複数の要因が浮上している。
一つは、この海域に周期的に巨大地震を起こす固着域があるという考えだ。400〜700年間隔で同規模の地震が起きていることが、津波による堆積物や文献などから推定されている。地震波の計測などから、プレートの破壊が始まった場所には幅数十キロメートルの固着域があったとみられる。
この固着域にピン留めされて浅い部分が長年スロースリップを起こせず、ひずみを蓄積。震災で固着域が壊れたとき一緒に動いたため、大きな滑りになったとの見方だ。
もう一つは、プレート間の摩擦が震災時に急減少した可能性だ。摩擦の特性は場所によって違い、プレートが動くと滑りやすくなることも逆にブレーキがかかることもある。同じ場所でも過去の地震の履歴によって特性が変わることが、最近の研究でわかってきた。
大きく滑った部分を海底掘削船で掘削すると、プレート境界近くに粘土層があった。プレートが動くと摩擦熱が生じ、水が加熱され膨張する。この水が粘土層にとじ込められ、プレートの潤滑油として働いたとみられる。掘削孔で地中の温度を測定したところ、わずかに上昇していた。地震のときはセ氏数百度に達していたもようだ。
東北大の松沢暢教授は「さまざまな仮説があるが対立するものではない。今はすべての可能性を排除せずに考えるべきだ」と話している。
[日経新聞3月7日朝刊P.13]
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